1.1.2 シュメール人の都市国家 史料でよむ世界史
「シュメール人が都市国家を建設した」ってどういうこと?
シュメール人により建設された都市国家が、どのような王によって支配されていたのか、前2900〜前2335年頃の初期王朝時代の史料「シュメール王朝表」をもとに考えてみましょう。
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「シュメール王朝表」
「王権が天から下された時に、エリドゥ市に王権が置かれた。エリドゥ市でアルリムが王となり、治世は2万8800年であり、アラルガルは治世3万6000年である。
〔合計〕2王でその年数は6万4800年である。エリドゥ市は捨てられ、その王権はバドティビラ市に運ばれた。
(中略)〔総計〕5都市、8王で、その年数は24万1200年である。
洪水が襲った。洪水が襲った後で王権が天から下された時、キシュ市に王権があった。(中略)…
ウルク市の王、ウルク市を作った者エンメルカルが王となり、その治世は420年である。牧者ルガルバンダ神は、その治世は1200年である。(中略)
ギルガメシュ神、彼の父は風魔であり、クルラブのエンは、その治世は126年である。
ギルガメシュ
アッシリアの初期の都の宮殿遺跡にのこるレリーフより。 Public Domain via wikicommons File:Hero lion Dur-Sharrukin Louvre AO19862.jpg
(中略)ウルク神は武器で打たれ、王権はウル市に運び去られた。ウル市でウルナンムが王であり、その治世は18年である。(後略)」
(小林登志子・訳、『世界史史料1 古代のオリエントと地中海世界』岩波書店、2012年)
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いつの史料?
前2112〜前2004年の間に成立しました。
何のために記された?
王の正統性を、都市の住民に知らしめるためです。
シュメール人たちにとっての「王」は、神から与えるものと考えられていました。在位年が異常に長いものがあるのは、実在していた王が後に伝説化されたり、実在しない王が後代になって創作された可能性もあります。
史料の中で「武器で打たれ」とあるのは、都市間の戦争です。
「シュメール王名表」を読んでみると、
「エリドゥ」→「バドティビラ」→・・・→大洪水→「キシュ」→「ウルク」→「ウル」のように王権がうつっていくことがわかります。
「王」の権力は、戦争によって都市から都市へと移り変わると考えられていたのです。
どのように記された?
現存するシュメール王名表にはいくつかの版があります。 Public Domain via wikicommons File:Lista Reale Sumerica.jpg by fine del III millennio a.C.
粘土版にシュメール語(言語系統はいまだに不明)の楔形文字で記されました。洪水以前は後世の加筆と考えられています。
なお、教科書にも出てくる都市「ラガシュ」は、「シュメール王名表」には含まれていませんが、前26世紀〜前24世紀の間に強い勢力を誇っていました。
最終的には都市「ウル」のウルナンム(現存する最古の法典であるウル・ナンム法典で有名)によって滅ぼされています。
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊