歴史のことばNo.20 佐藤彰一『禁欲のヨーロッパ』
心性史という歴史学のジャンルがある。20世紀初めのフランスで、政治的な事件ばかりあつかう従来の歴史学に対して、民俗学などの成果を取り入れ、人間の生活文化のすべてを視野に入れた総合的な歴史学を目指したアナール派の運動のなかで発達した、人々の心のあり方の変容をあつかう研究である。
たとえば、そこから見えてくるのは、「◯◯がしたい」あるいは「◯◯がしたいと思うのはいけないことだ」といった欲望にまつわる価値観が、医学的な知識や家族制度の長期的変化をともないながら、ゆっくりと編み直さ