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"歴史" 系 note まとめ

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2023年6月の記事一覧

ハンバーグの歴史その1 戦前はハンバーグより普及していたイギリス料理「メンチボール」(東洋経済オンライン記事補足)

東洋経済オンラインにおいて、ハンバーグの歴史記事(前編、後編)を公開しました。 例によって字数の関係で情報量を圧縮した記事となっているので、説明が足りない部分をnoteで補足していきます。 記事にある通り、戦前の洋食におけるメジャーな挽肉料理といえば、ハンバーグではなく、ハンバーグによく似た球状の「メンチボール」でした。 夏目漱石の『吾輩は猫である』に登場する「メンチボー」ですね。 池波正太郎も、東京の下町洋食の代表例として、ハンバーグではなくメンチボールをあげていま

「石鹸の歴史」僕らの生まれる前の昭和の暮らし

「僕の昭和スケッチ」イラストエッセイ193枚目 この「僕の昭スケッチ」は第二次世界大戦後の昭和をモチーフにしている。 僕が一番よく知っている時代は僕の生きた時代だからだ。 けれど、言うまでもなく昭和元年は1926年、昭和天皇の御即位から始まっている。調べると、カレーが10銭だった時代だ。僕らの生まれるずっと前の時代だ。 今日はその僕らの生まれる前の昭和の暮らしについて少し調べてみた。 暮らしの必需品、「石鹸」のことを。 上は、昭和7年の花王の新聞広告を描いたもの(原広告

歴史の扉Vol.11 ポテトチップスの世界史

ライターの稲田豊史さんによる『ポテトチップスと日本人—人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新聞出版、2023年)を読んだ。ポテトチップス好きの私としては、カバーの装丁がポテトチップスのようであるのも良い。思わず手にとってしまうではないか。 世界史的な観点から、いくつか気になった点を紹介がてら整理してみよう。 ポテトチップスと有色人種 ポテトチップスの歴史はそんなに古くないようだ。一般には「アフリカ系アメリカ人の男性を父に、ネイティブアメリカンであるモホーク族の女性を母に持つ

歴史のことばNo.20 佐藤彰一『禁欲のヨーロッパ』

心性史という歴史学のジャンルがある。20世紀初めのフランスで、政治的な事件ばかりあつかう従来の歴史学に対して、民俗学などの成果を取り入れ、人間の生活文化のすべてを視野に入れた総合的な歴史学を目指したアナール派の運動のなかで発達した、人々の心のあり方の変容をあつかう研究である。 たとえば、そこから見えてくるのは、「◯◯がしたい」あるいは「◯◯がしたいと思うのはいけないことだ」といった欲望にまつわる価値観が、医学的な知識や家族制度の長期的変化をともないながら、ゆっくりと編み直さ