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親子二人三脚で守ってきたこの店はこれからも家族で 〜大衆食堂女将の語り〜

私たちにとっての日常は誰かにとって
特別な非日常である。
このまちにはどんな日常が流れているのだろうか。
SEKAI HOTEL Fuseがある東大阪・布施は
商人が集うまち。このまちでは義理と人情に
厚いという商人文化が長年にわたって紡がれている。
"義理と人情"が、ここ布施のまちの商人たちが紡いで
きた文化だ。歴史や伝統を受け継いだ布施の人々は、
日々何を感じ、過ごしているのだろうか。

布施二条通りには、昼時になると店前にたくさんの自転車が止まっている食堂があります。中を覗くと、昼休憩中のサラリーマンやご近所のお父さんたちの賑わいが伺えます。こちらが今回紹介する「日進食堂」さんです。お店の前の小さな立て看板が開店を知らせてくれています。
今回お話を伺ったのは、息のあった手際の良さでお店を切り盛りする、3代目店主の硲久仁美(はざまくにみ)さん・4代目店主の佳代子(かよこ)さん親子です。今回は、お二人の親子を超えた深い信頼関係に迫ります。

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今年で創業80年、日進食堂

日進食堂は、布施の変化を80年間見守ってきた歴史あるお店。
創業当時は珍しいテレビを置いていたことから、テレビ目当てに多くのお客さんがいらっしゃったと言います。力道山の試合は怖いくらい人が集まったのだそうです。

食べたら必ず笑顔になる、とっておきのお昼の定食!

日進食堂さんの定食はまず、その品数の多さに驚いてしまいます。
手が込んだ前菜の小鉢が5品に、メインは煮魚やだし巻き卵、チキンカツ、生姜焼きなど、多くのラインナップから選ぶことができます。
そして、外せないのがからっと揚げられた季節のお野菜の天ぷら!
盛り沢山なランチはまるで和懐石のようです。

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佳代子: 天ぷらもたまたまサービスでやってたんですが、お客さんに「天ぷらいいわ」と言われることが多くて、いつの間にか定着していったんです。

久仁美:初めて来てくださったサラリーマンの方なんて、「まだあるん!」ってびっくりされてね!

ー 日進食堂さんのランチはボリュームだけではありません。味ももちろん絶品。大阪ならではの出汁の効いた繊細で優しい味付けに、来る人誰もがついつい顔を綻ばせます。

久仁美
:この人難しい人やなって思った人も食べてたら顔がものすごく優しくなっていかれるんです。帰り際に「ごちそうさん。おいしかったわ」ってニコニコしてね。

佳代子
:でも、”食”ってそういうものじゃないかなって思います。みんな美味しいもの食べたら幸せな気持ちになるものよね。

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お母さんにまた会いに。味だけではない”魅力”

どうやら日進食堂に通うお客さんはお味だけではなく、また違った楽しみを持っているようです。

佳代子:母がおらんと、あれお母さん今日はどうしたのって聞かれるんです。母に会いに来てくれる人がおるんやろうなと思います。

久仁美:忙しいと構っていられないときもあって、そういう時はやっぱり寂しそうな顔をされますね。昔来たことがあるお客さんを覚えていて話しかけると、「覚えていてくれたん!」って嬉しそうにしてくれるんですよ。

佳代子:ホールはもうお母さんやないとあかんな。

久仁美:でも実は私、小さい頃はとっても引っ込み思案だったんです。
嫁いできてから、ホール担当がいなくなってしまい、いよいよ私がしなくちゃって。でもやってみたら意外とうまくできてね。

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インタビュー中も表情豊かにお話しされるお茶目な久仁美さん。たまに冗談も交えながら、昔の思い出話を楽しく伝えてくださいました。また丁寧にうんうんと話を聞いてくださる様子に、ついついいろんなお話を聞いていただきたくなってしまいました。そんな久仁美さんにまた会いに行きたくなることも納得です。

久仁美:私、人と喋ることが好きなんです。お客さんが言っていることに共感すると、すごく喜んで、どんどん話してくれてね。私ってお節介やから、この仕事が天職なんだと思います。

佳代子:母は、他人のことを放っておけないタイプなんです。自分のことは後回しで、いつも人のために動いています。

ー 営業時には、客席の横を通るたびに足を止めて、お客さんを気遣い話しかける久仁美さん。久仁美さんとの何気ない会話や優しいお節介のような気遣いが、お客さんの心まで満たしているようでした。

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親子ではあるけど、長年の”連れ”のような存在。

現在、久仁美さんと佳代子さんは完全分業制。ホールは前述の通り久仁美さんが、厨房は佳代子さんが担当されています。

久仁美:娘の料理はすごく上手だし、丁寧。何事にも手を抜かないのはすごいなと思いますよ。私はもう座って、料理が出てくるのを待ってるだけですから。

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ー 80年という長い歴史を持つ”日進食堂”を守り続けてきたお二人には、ただの”親子”ではない、強い信頼関係を感じます。

佳代子:母とは、どこに行くにしてもほとんど一緒。旅行も一緒にいくし、なんだか腐れ縁みたい。親子ではあるけど、対等で、長年の”連れ”です。
だから、お客さんの前でも仕事のことで喧嘩しますよ。笑

久仁美:仕事のことやからうちに帰ってまで長引くことはないけど、お店のことになるとついつい…ね。

ー 最終的には分かり合い、一歩ずつ進んでこられたのだとお話を聞く中で感じました。そんなお二人だから対等な立場で、正しく”二人三脚”でお店を守ってこられたのだと思います。

久仁美:こういうのこっぱずかしいけど、お互い好きなんでしょうね。本当に好きなんだと思います。でもうちは割と家族・姉弟全員仲良いので、佳代子がやってる限りは彼女の妹・弟に手伝ってもらいながら、続けていってもらえるかなと安心しています。

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終わりに

硲さん親子とのインタビューは、1時間ずっと笑いが絶えませんでした。お店の秘話やお客さんとの思い出話を、向かい合いながらお話しされる様子から、”連れ”という言葉がぴったりなほど、信頼しあった仲の良さを感じました。お二人の”親子”という関係性や年齢の差を越え、肩を並べてお互いを支え合っている様子はとても魅力的で、素敵でした。

そんなお二人が営むお腹も心も満たされる美味しい定食をぜひ召し上がりに行きませんか?

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店舗案内

日進食堂
住所:大阪府東大阪市足代1丁目14−7
tel:06-6721-0635
営業時間:11:00~14:00(定休日:木曜日)

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取材 / 執筆:北川 茉莉

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