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アメリカ往復日記 #12|タイムゾーンを考察する帰り道

48時間の旅路

丸一日の移動日であったため、この日の日記は一番短いものになると思う。

そういえば、最初に乗ったCalifornia Zephyrではカリフォルニアを午前10時くらいに出発してChicagoに2日後の午後3時に着いたから、53時間の旅だと思っていたんだけど、実際はそうじゃなくて、タイムゾーンの境目を西から東へ2回通過したから、-2時間で51時間の旅だったはずだ。つまり、一日が23時間になっていたので、夜なかなか眠くならずに遅くまで起きてしまう。というより自然に起きている状態になっていた。

それに比べて、帰りのSunset Limitedは、New Orleansを9時に出発してLos Angelesに朝の6時に到着予定だから、45時間の旅で行きに比べたらだいぶ楽じゃないか、と思っていたんだけど、これまた実際はそうじゃなくて、タイムゾーンの境目を今度は東から西へ3回通過したから、48時間の旅になるはずだ。

その1時間の延びが寝ている間に訪れるのならまだ良いのだけれど、特別にやることもない長距離列車の中で昼間のど真ん中に訪れるとなると、それはそれでやっかいなのである。それが一番顕著なのが、腹時計との誤差だ。限られた食糧をいかに分配して消費しようかと考えているのに、時間の物差しがずれるせいで計画が崩れてしまうのだから。

アメリカ本土の4つのタイムゾーン

タイムゾーンについてもそういえば触れていなかったな、ちょうどいい、この機会にまとめておくか。日本にいる限りでは体感することのないこの現象、アメリカ国土が東西に広いもんだから、本土の中でも4種類のタイムゾーンを持っている、すなわち、国内に時差が存在する。

こうやって書きながら、自分でも調べているのでいい勉強になる。その4つとは、西から順に、

・PT (Pacific Time)
・MT (Mountain Time)
・CT (Central Time)
・ET (Eastern Time)

である。

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タイムゾーンの境界を越えるたびに各種機器の時刻を修正していたのだけど、どうやって今何時か、というのを把握していたかというと、スマホの時計はきっと電波を受信しているのだろう、自動的に時間を修正して知らせてくれるものだから、それに合わせて腕時計やiPodをいじっていた。でも、出発地のカリフォルニアの時間も見失わないようにと、別で持っていた携帯電話の時計だけは常に触れずにおいた。

そんなわけで、テキサスのEl Pasoに着いたのが13時過ぎ、これはおそらくCT。日記に時刻を記入するときも、撮り溜めた写真と一緒に記録された時間をもとに書いているのだけれども、はたしてスマホが正しく時刻を記録してくれているのかが分からない。

Sunset Limitedでの2回目の日の入りはアリゾナで迎えた。あたりは低い草が生えた山々で特別なものは無いのだけれど、やはり沈みゆく夕日はゆっくりと大地へ潜っていくように感じられた。

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アムトラックの最後の晩餐

この日は、この旅で最後のアムトラック内で過ごす夜ということで、Diner Carでの夕食を予約した。最初と最後の晩餐をDiner Carで過ごすことになる。なんせお金も問題もあるものの、終わりよければ全てよし、という感じで締めくくりたい思いが勝り、7時30分の予約を昼間のうち、すなわち列車がCTにいた時に入れた。となると、果たしてその7時30分というのはCTでなのか、それともその時刻にはもう列車はPTに入っているから、CT時間でいう8時30分なのかがわからない。

なんだ、ちゃんと予約を入れさえすれば、なにも夕食を食べる事は問題ない。となると、初日に予約も何も知らずにふらっと立ち寄ったDiner Carで夕食にありつけたことが不思議ながらありがたく思えてくるのだった。

注文するメニューは、前回食べたチキンからは変更して、アムトラックステーキだったりシェフのおすすめだったりにしようと考えていた。けれども、実際にテーブルに着き、このとき、4人掛けの座席には私が進行方向に背を向けて右の窓際の席、左に眼鏡をかけた20代後半くらいの女性、そして向かいにはふくよかな黒人女性が座っていたのだけれど、カロリーとお値段とのにらめっこの結果、再びチキンを選んだのであった。

注文のすぐ後、サラダとパンとグラスに入ったアイスティーが運ばれてくる。バター、ドレッシングとともにそれらをいただくのだけれど、このテーブルには会話が生まれない。おそらく、注文の際に、ウェイターからコーチ席の乗客か寝台車の乗客かを聞かれたのだけれど、それを何回か私が聞き返したことで、あ、こいつ英語わかんねえんだ、みたいな理解が他の二人に生まれてしまった事も一因だと思うが、外から会話が聞こえる中で私たちは自分たちの食事のみに集中した。

掛けられた言葉といえば、左の女性、この人の性格がかなりさばさばしていることも大きな要因であったのだが、彼女から紅茶に入れる砂糖を2袋とってくれ、と言われて差し出すのが2回あるのみだった。食事が運ばれてくると、今回はポテトをマッシュポテトで注文したのだけれど、いんげんの代わりにコーンが載っているなど、この前食べたものとは多少の変更点があったものだから、まあ良かったと思う。

食事中には乗務員が様子を伺ってくるのだけれど、会話がないところに聞かれるものだから気まずい空気が流れ、ついに左の女性が丁寧さを繕った声で、”Yes, it is.”なんて答えるものだから、逆に可笑しく思えてしまう。魚のフライらしきものを頼んでいた左の女性が一番に食べ終わって会計を済ませて去っていくと、次に向かいの女性が、こちらは私と同じくチキンを注文していたのだけれど、デザートにチーズケーキ、クランベリーソースつきを注文する。その間に私もチキンを平らげ、向かいの女性の次に会計を済ませたのだけれど、乗務員の接客は非常に良かったのでチップを払いたいのはやまやま、先日のニューオーリンズでのジャンバラヤからのバスのような流れもあり得るので、申し訳ないながらおつりは全額いただいて客車に戻った。

Tucsonでの小休止

その後20時に(これはPT)、アリゾナ州のTucsonにて小休止。今日の朝にラウンジカーで会話したおっさんがTucsonで降りると言っていたから、何か観光地はあるのかと聞くと、特に何も無いんじゃないか、俺は人に会いに行くので今回初めて行くからな、と答えていたことを思い出す。駅舎内のレストランでWi-Fiに繋がせてもらい、列車の出発を待つ。

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こんな内容でも2,700字を越えた。ということで、この後はまた執筆活動に励んだ、そんな12日目のこと。

今日の一曲

タイムと言えば、このアルバムが思い浮かぶ。
KANA-BOON -  TIME


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