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瀬戸内のアートに触れる旅 #6|豊島の「鼓動」を感じる旅路

3日目、豊島美術館のほかに巡ったスポットを記載する。

心臓音のアーカイブ

クリスチャン・ボルタンスキーの「心臓音のアーカイブ」。唐櫃港の先、豊島美術館からは自転車を15分ほど走らせた先に存在する。

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古今東西様々な人の心臓の鼓動を録音して記録する。建物内部は研究室のような内観で、スタッフの方も白衣のようなユニフォームでその雰囲気を醸し出していたように思う。

コンピューターで氏名だったり録音場所だったりを検索すると、該当する心臓音とともに、収録者のメッセージを見ることができる。その中には、ちゃっかり、ボルタンスキー本人の心臓音も混ざっていた。

誰にも届かないかもしれない。けど確かにその人が生きていたことを証明する心臓音。鼓動はもしかしたら、モールス信号のような低次元・低解像度のデータなのかもしれないけれども、聴く側の脳内では、その音から無限の想像が広がる。

実際にここを訪れた人も、自身の心臓音を録音することができるのだけれど、変な照れからだろうか、自分の分は見送ることにしました。

2021年7月、クリスチャン・ボルタンスキーさんの訃報があったけれども、文字通り、彼の鼓動は今後も響き続けるだろう。

ささやきの森

これまたクリスチャン・ボルタンスキーの作品で、少し山道を登った先に存在するインスタレーションである。木々の中に無数の風鈴が吊るされていて、風が吹くと一斉にそれらが透明な音を奏でる。

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ただ、到着した頃には、どうも風がすっかり止んでしまっていたのだよね。天気次第では、むしろ風が強かったりすると公開を中止にしてしまうようなので、それよりは良かったとは思うものの、何なら自分から揺らしにいったろかな、と考えていた矢先、ちゃんと自然の風が吹いてその音色を聴くことができてよかったです。

勝者はいない─マルチ・バスケットボール

唐櫃港の近く、心臓音のアーカイブまでの道すがらに存在するのがこちらのインスタレーション。

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写真のように、バスケットゴールを模した作品なのだけれど、いくつものネットが設置されている。バックボードは、豊島の島の形をしている。(もともと、バックボードは、観客がボールに手を伸ばしたりして妨害することを防ぐ目的で付けられたものだったとか。)

脇に置いてあったボールを手にとり、無邪気にフリースローを打ちました。ただし、数本連続でむなしくもフレームに弾かれました。

しょうがなく、ゴール近くに移動して簡単なシュートを決めた後に、この場所を後にしました。

豊島横尾館

概要を、公式サイトから引用します。(楽してすみません。)

アーティスト・横尾忠則と、建築家・永山祐子による「豊島横尾館」は、豊島の玄関口となる港に面した家浦地区の、集落にある古い民家を改修してつくられました。展示空間は、既存の建物の配置を生かして「母屋」「倉」「納屋」で構成され、平面作品11点を展示しています。また、石庭と池、円筒状の塔にはインスタレーションが展開され、作品空間は敷地全域にシンボリックな拡がりをみせます。その空間は、生と死を同時に想起させる哲学的な場となり、さらに、建物には光や色をコントロールする色ガラスを用いて、豊島の光や風や色、作品の見え方をさまざまに変容させて、空間体験をコラージュのようにつなげます。

https://benesse-artsite.jp/art/teshima-yokoohouse.html
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横尾忠則というアーティストは、この美術館を通して初めて知りました。真っ赤に染まった石の置かれた庭園がとても印象に残る。(その後、東京都現代美術館で開催された「GENKYO 横尾忠則」展にて、恥ずかしながら彼の功績をようやく認識するようになるという。)

一通り鑑賞したものの、あまり理解できなかった気がしたので、美術館の方に訪ねてみたところ、作品を通して彼の死生観を強く表しているらしい。庭園の川は民家の下にまで流れているのだけれど、これは三途の川をイメージしているとのこと。そして、赤色は、彼が経験した空襲時の炎をイメージを表したものである。

たしかに、「生」を思わせる縁起物の鶴・亀・松や梅。「死」を思わせる骸骨。そんなモティーフが共存しながら作品の各所に散りばめられている。

岡本太郎に通じるような、力強い表現を感じた展示でした。(ただし、横尾忠則自身は、岡本太郎を認めていなかった、という逸話もあるのだっけ。)

豊島に別れを告げる

いよいよ、豊島に別れを告げる。帰りのフェリーを待つ間、お土産ショップにてレモンアイスクリームを購入し、最後は味覚で豊島を楽しみました。

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フェリーに乗り山口県の宇野港へ。離れていく島の景色を惜しみつつ、宇野に到着した後は、宇野駅から電車を経由して帰路につきました。

今日の一曲

少し無理やりだろうか、藤井風さんの故郷・岡山を経由して帰路に着いたので。
藤井風 - 帰ろう

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