発達障害(ASD傾向)の人間が「ふつう」に擬態するために意識してきた/していること
とある発達障害(ASD傾向)のサンプルとして、「ふつう」に擬態するために気を遣ってきたことを、思いつくまま書き記してみる。
「発達障害じゃなくたってそういうことは意識している」という意見もあるかもしれないが、そもそもどれが発達障害起因で、どれが人間一般のものなのか、自分には判別がつかないので、とりあえず気を遣うことについて思いつくままに列挙する。
なお、意識していたことであって、それが出来ていたかはわからない。
【幼い頃】
■誰かと一緒にいる
一人で居ると目立ち、いじめられるため。
■他の人をよく観察する
いじめられていない人はどういうことをしているのか知るため。
■他の人と同じことをする
変なことをすると目立ち、いじめられるため。
■状況に応じた行動パターンを覚える
一番変な反応をされなかった行動パターンを状況ごとにストックして、その後に活かすため。
■他の人達の会話のパターンを覚える
自分で失敗する前に、他の人達のやりとりを覚えて、それをまねすることでいじめられたりしないようにするため。
■他の人とコミュニケーションを取ったら、後でそのコミュニケーション内容を何度も反芻し、色々なパターンについてシミュレーションする
「あのときこう対応した場合、その後どういう展開になるか」ということを何パターンも頭の中で想像して、その後に活かすため。
■歩き方に気をつける
母親から、「お前は変な歩き方だから遠くからでもわかる」と言われ、歩き方が変なのもいじめられる原因と考え、できるだけ自然な歩き方になる様に気をつけた。中学時代に「動く歩道に乗ってるみたい」と言われたので、多少意識して上下左右のぶれを足すようにした。
■無闇に動かない
「落ちつきがない」「変な動きをするな」と何度も頭を叩かれたので、叩かれないように何処に行ってもなるだけ身動きを取らないでじっとするようにした。
■変な動きをしない
動き方が変だといじられていたので、他の人の動きを見て、手の上げ方、振り向き方、椅子の座り方、鉛筆の取り出し方など、他の人達の日常の動作をまねしてつぎはぎした。
■話すときに手を動かさない
男が話すときにいちいち手を動かすな、とよく頭を叩かれていたので、できるだけ不動で話すように心がけた。
■本ばかり読まない
幼稚園の頃、「おとなしく、いつも本を読んでいます」という報告(?)をみて、男が本なんか読んでるんじゃないと頭を叩かれたため、あまり読まないように気をつけた。読むにしても隠れて読むようにした。
■外で遊ぶ
男は外で遊べ、といわれ、一日中壁に向かってボールを投げたり、一日中ボールをついていた。
■女子と遊ばない
近所にいた同世代が皆女子だったのでおままごとなどで遊んでいたところ、それを理由に男子からいじめられたため。
■女子と話さない
女子と話していることを理由にいじめられたため。
■女子に近寄らない
女子に近寄るとからかわれたため。
■女子を視界に入れない
女子の存在を認識しないようにするため。
■笑う練習をする
小学校高学年の頃、クラスで流行っていた冗談を母親に言ってみたところ、「嘘をつくんじゃない!」と激しく怒られた。自分の家庭は異常だと感じ、他の同年代がしているように、笑うことを練習するようにした。高専になってバイトが出来るようになってからは、自分用のテレビを買い、バラエティ、落語、漫才などを見て、どのタイミングで笑えばいいのか、観客の笑い声に合わせて笑う練習をずっと繰り返した。
■怒る練習をする
ずっといじめられていたことに困り果て、ふと、やり返すのがいいのでは、と考えた。そこで、怒る練習をして、いやなことをされたら怒れるように練習した。ある程度成果はあったものの、「怒ってるのがなんか嘘くさい」と言われたこともあり、どうやら完璧ではなかった様子。
■無闇にしゃべらない
男がべらべらしゃべるんじゃ無い、と頭を叩かれたため。また、自分がしゃべると周りが変な顔をしたり、いじめてきたりすることもあり、できるかぎりしゃべらないようにした。
■勝手に行動しない
男がふらふらするんじゃない、と頭を叩かれたため。また、自分の考えで行動すると周りから変な扱いをされたため。
■命令されたことをやる
言われたことぐらいやれ、と頭を叩かれたため。また、他人に逆らうと怒られたりいじめられたりするため。
■他人の邪魔をしない
余計な事をするな、と頭を叩かれたため。また、楽しそうにしているところに自分が関わると、途端に静まりかえるため。
■他人に逆らわない
親に逆らうな、と頭を叩かれたため。また、いじめられているときに下手に逆らうと、いじめがエスカレートするため。
■他人に期待しない
男なら自分の面倒は自分で見ろ、と頭を叩かれたため。また、他人が何かしてくれることはなかったため。
■他人に尽くす
男なら人にやさしくしろ、と頭を叩かれたため。また、自分には敵意がないと示し、いじめられないようにするため。
■自分より他人の方が辛い思いをしているに違いないと考える
自分が辛いと感じているのは自分の気持ちが弱いからで、他人は自分より辛い経験をしているのに平気な顔をしていると思うことで、もっと強くなろうという気持ちを強めるため。
■話し方の勉強をする
他人の観察だけでは限界を感じていたため。中学生になって行動範囲が広くなり、古本屋に行けるようになった事で、様々な本を読むことが出来るようになった。ユーモア、冗談、相槌などを勉強した。
■心理テクニックの勉強をする
人間とコミュニケーションを取る際に、自分に不都合がふりかからないように、フットインザドアテクニックなどの手法が書かれた本で勉強した。
■人間の性質について勉強する
人間そのものの性質を知ることで、人間とのコミュニケーションが円滑になると考え、心理学、認知心理学、脳科学などを勉強した。
■武術、武道の稽古をする
自分の身を守るため。
【現在、対面でのコミュニケーションで意識すること】
■自分が擬態のために努力していることを人に言わない
引かれるため。
■できるかぎり間抜けだと思われるようにする
空気を読めなかった際も「まあ、そういうところあるよね」と笑って貰える様にするため。
■できるだけ隙を見せる
相手に油断してもらい、本当に突かれたらまずい隙をごまかすため。
■最初は自分から情報を開示して、無警戒であることを示す
相手に安心してもらうことで、相手の警戒心を下げて攻撃されないようにするため。
■話すときに相手の鼻を見る
目を見ていないと「聞いてもらえていない」と相手が感じるものの、目を見るのが苦手なため、適度に鼻をみることでごまかす。
■相手に話をさせる。自分の話はしない。
自分が話をすると止まらなくなるため。また、相手に気分良くなってもらうため。
■相手が話したことを自分の言葉で言い換えて返す
自分がちゃんと話を聞いて、理解しているということをアピールするため。
■露骨にならないように気をつけながら相手をたてる
相手に不快な思いをさせないことで、自分の身を守るため。
■相手の本能的な欲求に注意を払う
理性的であろうとする人間でも、根っこでは承認欲求や優位に立ちたいという動機があることから、そこと衝突して場が荒れないようにするため。
■相手の話を聞いている間に、次の話題を探しておく
会話が途切れないようにするため。
■どんな気持ちであっても笑顔を続ける
相手を不快にさせないようにするため。自分は楽しんでいるとアピールするため。
■できるだけ空気が読めている振りをする
空気が読めない人間は排斥されるため。
■勘違いすること、されることに注意する
文脈を読み違えることが多く、また言葉足らずな事が多いため。
■何回もやられたら、最後にはやり返す人間であると思ってもらう
相手に悪意がなくとも、されて嫌なことから自分の身を守るため。
■わかったつもりにならないように気をつける
自分が、かなり頻繁に文脈を読み違えて誤った理解をするため。
■合わない人とは関係を持たない
多大なストレスを受けるため。
■利用しようとしてくる相手とは関係を持たない
搾取されるため。
■それでも関係を持つ必要があるときは、余計な事は話さない
仲良くなるつもりはないということを態度で示すため。
■人と会わないようにする
疲れ果てるため。
【業務で意識していたこと】(なお結局、現在うつになっている)
■迷惑をかけないように仕事はこなしつつ、できるだけ能力が低く見られるようにする
出来る事と出来ないことの差が激しいため、出来る事で全力を出すと、出来ないことにぶつかったとき「やる気がない」「手を抜いている」などと思われるため。
■人と話す前に話すことを決めて、ある程度シミュレーションしてから話す
いきなり話し始めると、話が散らばって収拾がつかなくなるため。
■相手にとって必要な情報と不要な情報をしっかり選別して伝える
自分としては必要な補足だと考えていても、相手としては不要な事が多いという経験が多くあり、頭の中で何度も反芻して本当に必要かどうかを確かめる。
■こそあど言葉は全部聞く
文脈を読み違えることが多いことから、こそあど言葉の意味する内容を間違えることが多いため、基本的には全て、具体的に何を指しているのかを聞く。
■論理の飛躍を感じたらすぐ質問する
文脈上言わなくてもわかるだろうと相手は思っていることが多いので、わかっていない事を伝えてしっかりと理解するため。
■聞くときは分からない所を可能な限り明確に、シンプルにする
話がとっちらかるため。
【業務で出来ていなかったこと】
■報告、連絡、相談
頭ではしなければならないと思いつつ、メンタル的に強い抵抗感があり、なかなかうまく出来なかった。
■断る
同上
■頼む
同上
■任せる
同上
■手を抜く
同上
■時間管理
過集中を起こし、時間感覚が失われる。
■体調管理
暑い、寒い、痛い、辛い、苦しいといった感覚に鈍感で、体が動かなくなって初めておかしいと気付く。
■リラックス
常に極度の緊張状態にあった。
■休憩
罪悪感があって出来なかった。
■気晴らし
そんなことより仕事の事を考えたかった。
【おまけ:うつになって以降のメンタルケア】
■集中しすぎないようにタイマーを使う
過集中による時間感覚の喪失を防ぐため。
■ノイズキャンセリングヘッドフォンや耳栓を使う
声や音に対して強いストレスを感じ、メンタルが落ちこむため。
■運動する
うつになって運動習慣が失われたため。
■食事に気を遣う
気が付くと、何週間も同じものを食べていたり、食事を忘れていたり、逆に一度に大量に食べ過ぎるなど、食事に対する意識がかなり低いため。
■ちゃんと寝る
不眠症のため。
■朝日を浴びる
体内時計のリセットのため。良い睡眠のため。
■思ったことや感じたことをできるかぎり書き残す
過去の状態を振り返れるようにするため。その時にどういう精神状態だったか、などから、体調の波を把握出来るようにするため。
■過去に感じていた違和感を明文化することで解きほぐす
明確にしないと、ずっと腹の底で不快な気持ちが燻っているため。
■何事もやりすぎない
気が付くと拘り過ぎていたり過集中を起こしてしまうため。
おおよそこういう感じのことを意識することで、「君あんまり空気読めてないよね」「もっと気を遣いなよ」「無理して気を遣わなくていいから(≒出来てないから無理するな)」という評価をしてもらえるレベルにようやく達する。
やらないと人間社会に混じれない。
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