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140字小説 すぐ読めるお話集

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2022年3月の記事一覧

空っぽ

「この箱にはお前宛のプレゼントが入ってるの?」
「そうそう。何入ってた?」
「……なあ、パンドラの箱に残っていた物ってなんだか知ってるか?」
「ああ。希望だろ?ってことはなにか良いの入ってるのか」
「古代ギリシャ語では予兆、期待という意味もあるそうだ」
「つまり?」
「見ない方がいい」

晴れているのになぜか降り注ぐ謎の物体から守るため、都市部をすっぽり覆う巨大な傘が建造された。太陽光を通すからちゃんと日差しが届いた。しかし傘であるから、その周辺には本来都市部に落ちるはずだった物体がぼろぼろと落ちた。そして傘を通すから、本当の太陽の日差しは二度と届かなくなった。

あれから10年

私は秘密裏に冷凍睡眠装置を開発した。まだ震災の傷は癒えていないが、これを教訓にして人類は更に発展するだろう。ハラリも言っている。人類は飢餓・疫病・戦争を克服したと。念のため10年ごとに起きるように設定した。私は人類の未来を見届ける。今日目覚めた。世界は疫病と戦争で様変わりしていた。

今日の色

目を覚ますとまず壁に貼った色見本に目を向ける。今日は赤の位置がぼんやりとして見えなかった。最悪だ。ついに赤色の番か。身支度を整えて家を出る。道にぼんやりした色合いの人が立っていた。その横を通りすぎようとした時、不意に刺された。よく見るとその姿は全身が見えない色だらけだった。

選択

俺には人を見る目がない。大勢の中から選んだ俺の親友は、交通事故で死んだ。大勢の中から選んだ伴侶は、小さい娘を残して病気で死んだ。娘のためにと日々奔走した。年頃になった娘は男を連れてきた。俺が反対すると二人は出て行った。幸せそうな孫の写真を見て思う。やはり俺には人を見る目がない。

清潔感のある初デート服

「そういえば、この間オンラインで出会った人との初デートだったんだろ?俺に色々アドバイス求めてたけどさ。どうだった?」「駄目だったよ……。出会ってすぐ別れた」「マジか。どんな服着ていったんだ?ちゃんと清潔感のある服とか着ていったか?」「もちろん。ちゃんと清潔な化学防護服だったよ」