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Y Combinator発スタートアップ①_「Therapeutics」

Y Combinator Winter 2024 Batchで採択され、第38回Demo Dayで発表を行ったスタートアップを紹介していく

トップ画像はY Combinatorのウェブサイトより
※本記事は、添付URLの記事および各社のウェブサイトを参考に作成しました

本記事の概要

  • 本記事では、Y Combinator Winter 2024 Batchで採択されたスタートアップのうち「Therapeutics」で分類されている、がん治療薬を開発する4社、生成AIを活用した情報収集ツールを提供する1社、mRNAの送達技術を開発する1社、AI創薬プラットフォームを開発する1社について紹介する
    *但し、これらのスタートアップは設立されたばかりで、公開されている情報が限られていることにご注意ください

所感(個人の見解となります)

  • 治療薬を開発している4社全てががん治療に焦点を置いていた。Velorum Therapeuticsは来年ヒトへの臨床試験を計画しているとのことなので、アップデートを注視していきたい

  • プラットフォームを開発するスタートアップについては、まずは構築されたコンセプトがin vitro/in vivoでどのようなデータが出てくるか、確認していきたい。例えば、mRNAの送達技術の改善により従来の医薬品や治療法と比較して安全性だけでなく薬効もどの程度変わってくるのか、データが気になるところである

  • ChatGPTの普及に伴い、専門性が高く、情報量も多い製薬・バイオ業界でも、精度高く自然言語で情報収集ができるようなツールが出てきている。情報収集の効率化により、創薬のスピードがどこまで加速するのか、創薬アイデアがどの程度増えるのか、弊社ポートフォリオ企業「Nextnet」含めて期待したい

Y Combinatorについては下の記事を参照ください


Y Combinator Winter 2024 Batch採択スタートアップ

Granza Bio:がん治療薬

スタートアップ概要
共同創業者

  • Ashwin Menon Nandakumar:University of OxfordでOncologyのPhDを取得。Cancer Research UKでポスドクの経験やAIを活用した個別化医療のスタートアップOncoAssignの共同創業者の経験を持つ

  • Ashwin Jainarayanan: University of OxfordでInterdisciplinary BioscienceのPhDを取得。合成生物学業界のコミュニティであるiGEMのアドバイザーとして参画していた経験を持つ

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:がん治療薬の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 体内の免疫システムである「Attack Particles」(GranzymesやPerforinsを含む)を活用してがん細胞を選択的に死滅させる医薬品の開発

  • 血液脳関門を超える能力も保有しているため、脳のがんに対する医薬品としても期待される

Attack Particlesによるがん細胞を死滅させるイメージ動画(Granza Bio社の公開動画より)

Eris Biotech:がん治療薬

スタートアップ概要
共同創業者

  • Rachel Garlick:Geisel School of Medicine at DartmouthでMicrobiologyおよびImmunologyのPhDを取得。Thunder BiotechでSenior Scientistとして、CAR-マクロファージ等の製造プロセス経験を持つ

  • Evita Weagel:Brigham Young UniversityでMicrobiologyおよびMolecular BiologyのPhDを取得。住友ファーマでScientistとして勤務した経験を持つ

所在地:American Fork, UT
事業・サービス内容:固形がん向けの治療薬の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 低酸素環境でのみ活性化する低酸素活性化プロドラッグ(Hypoxia-Activated Prodrugs、HAP)を開発

  • 低酸素状態でありやすい固形がんの環境状態を利用して、健康な組織に影響を与えることなく、がん内でのみ薬効を発揮する医薬品の開発を目指している

SynsoryBio:がん治療薬

スタートアップ概要
共同創業者

  • Elliot Tague:Boston UniversityでBiomedical EngineeringのPhDを取得。Sana BiotechnologyでProtein Engineeringとして遺伝子治療プラットフォームの開発に係わる

  • Nathan Tague:Boston UniversityでPhDを取得。卒業後、Elliot Tagueと一緒にSynsoryBioを設立

所在地:Cambridge, MA
事業・サービス内容:がん向けのタンパク質治療薬の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 特定の生体分子を感知して条件付きで活性化するタンパク質治療薬の開発

  • 臨床試験結果で毒性が高いとされていた医薬品(特にがん免疫療法)に応用することで、安全性の問題と用量の制限を克服することを目指している

Velorum Therapeutics:がん治療薬

スタートアップ概要
共同創業者(創業者の二人は双子)

  • Pouya Modareszadeh:The University of Texas at DallasでBiologyの学位を取得

  • Parsa Modareszadeh:The University of Texas at DallasでBiologyの学位を取得

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:がん治療薬の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • がん細胞がエネルギーを作るために依存しているヘム(酸素を運ぶ赤血球に含まれる重要な成分)をターゲットにし取り除くことで、がんを飢餓状態にして死滅させる医薬品の開発

  • がん細胞は必要としているが、正常細胞は必要としないヘムをターゲットにしているため、毒性が低いことが期待される

  • すでに動物実験で薬効を示しており、来年にはヒトで臨床試験を開始する予定とのこと

ParcelBio:mRNA送達技術開発

スタートアップ概要
共同創業者

  • David Weinberg (CEO):Massachusetts Institute of Technology (MIT)でPhDを取得し、University of California San Francisco (UCSF)でFaculty Fellowを務めた。Orbital Therapeutics / Circ BioでRNAプラットフォームのVice presidentとして、circular RNA therapeutics platformの開発を主導。Freenomeでは、分子研究のシニアディレクターとして務め、多重オミクス診断プラットフォームを構築した経験を持つ

  • Chris Carlson (CSO):UCSFでPhDを取得。以前の働いていたOrbital TherapeuticsではScietistとして勤務。また、治療用RNAの安定化に関する複数の特許の主要貢献者

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:mRNA医薬を送達する方法「STAmP」(Stabilization and Targeting by Annealing mRNA to ParcelOligos)の技術開発及び医療用医薬品の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • mRNAに結合し、安定化させるParcelOligosを開発。通常はmRNAに結合しているが、特定の細胞でのみParcelOligosの結合が外れてmRNAからタンパク質が翻訳される技術を開発

  • 腎臓疾患、慢性肝疾患、免疫系疾患に対する創薬を行う予定

  • 製薬会社やバイオテクノロジー企業と提携し、改良型mRNAワクチンや、CRISPR遺伝子編集ツールとして多様な細胞タイプへの送達も目指したいとのこと

Junction Bioscience:AI創薬プラットフォーム

スタートアップ概要
創業者

  • Brian Petkov:Duke universityで数学と化学の学位を取得し、New York Universityで博士課程でトレーニングを受けている。計算ドラッグデザインのスタートアップであるRedesign Scienceで初期メンバーとして会社に貢献。

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:AIシュミレーションによるタンパク質の創薬標的部位の探索および低分子化合物の開発

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • AIシミュレーションにより、創薬標的となるタンパク質の標的部位を解析・選定することで副作用を最小限に抑える低分子医薬品の開発を行う

  • 自己免疫疾患や炎症性疾患を対象に創薬を行う予定

Argon AI:生成AI×創薬

スタートアップ概要
共同創業者

  • Samy Danesh:ワシントン大学で法学博士(JD)の学位を取得。Flatiron Health(Rocheの子会社)でアナリティクス・サービスの試験運用のリード経験を持つ。

  • Cyrus: University of Southern California (USC)でComputer ScienceとElectrical Engineeringの2つの学位を取得。GopuffやBandit(Gopuffに買収)でエンジニアリングチームの立ち上げをリードした経験、Bridgewaterでトレード生成システムを構築の経験やIBM ResearchでAIエンジニアリングと自然言語処理(NLP)のパイプラインに取り組んでいた経験を持つ

所在地:San Francisco, CA
事業・サービス内容:臨床試験、競合他社、疾患領域、適応症等に関するインサイトを提供するAIプラットフォーム
想定顧客:製薬企業、バイオテック、コンサルティングファーム

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 臨床試験の情報や競合他社の動向等の情報を1つのプラットフォームに集約して、効率的に情報収集を行うことができるサービスを提供

  • 自然言語処理を活用した検索を行うことができ、ユーザーはGoogleの検索エンジンやChatGPTのように直感的に情報を検索することができる

  • 製薬に特化した情報提供を行っており、一般的な生成AIツールよりも正確かつ詳細な情報を提供することが可能

Hike Ventures ポートフォリオ企業

Nextnet:生成AI×創薬

創業者:Steven Banerjee
所在地:San Francisco, CA
創業年:2020年
累計調達金額:$1.3M

事業・サービス・テクノロジー詳細

  • 製薬・バイオテック・アカデミア向けに、論文、遺伝子情報、遺伝子・タンパク質の発現量、臨床試験、上市医薬品等のオープンデータを集約、まとめて確認することが可能なツールを開発

  • Scientistが気になる遺伝子や、遺伝子発現プロファイル等をまとめて検索したい場合、効率的に情報収集が可能(関連論文を検索して1つ1つ探確認したり、関連情報を別ブラウザ等で調査をする時間を大幅に短縮できる)。

  • 自然言語による検索も可能

Aragon AIとの差別化要素

  • Nextnetは研究者の情報収集やアイデアの仮説検証の効率化をサポートする点に重きを置いている。特に創薬研究において新しいアイデアの発見・検証ができるツールとして活用が期待できる

Nextnetツールの体験版

  • 弊社ポートフォリオ企業の「Nextnet」はすでにテスト版をリリースしており、サインアップすることで無料で体験することが可能である。バイオ・製薬研究に特化した自然言語検索ツールとしてぜひ使用してもらいたい
    無料ベータ版のサインアップは下記のURLから(https://app.getnextnet.com/signup

NexNet社HP(https://getnextnet.com/)より。Nextnetツールの自然言語による検索画面例
自然言語を活用した検索も可能であり、関連する遺伝子の情報、論文、上市品等のデータを一元化して確認することができる


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