マガジンのカバー画像

小編集

4
拙い文ではございますが、懸命に紡いでます。孵るのを優しく温かくお見守りくださると幸いです。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

小編 『泡。』③

小編 『泡。』③

 「わ!……あ」前を見ると半袖の黒いシャツについた赤い粒が目に入る。
 「ごめんなさい」拭くものを探そうとするが、何も持ってないことに気づく。
 もたもたしていると、すっと長い手が背中側に伸びてきて指先で赤を拭うと、
 「あ。これくらい平気ですよ」と声が聴こえる。
 水の中の空気だ、と思った。水の中の空気のように、しとやかに包む柔らかな声。
 「いや、でもあの、Tシャ」
 ツ。その声の主が振り返る

もっとみる