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溺死.zip

セフレみたいになっちゃった人の家の夢、緑のカーテン、臍の裏から揺れるシンパシー、ぼんやり照らす丑三つの街灯、Windowsマークの中に棲んでる四神、私信、数年前の合唱コンのDVDでコスモス歌う幼い君は、その前髪の奥、画面の中から私のことを見つめてる。妄言ですらすっかりただの御伽噺になってしまった黒いエレキを撫でて、ここで、桜上水にて溺死。狭い浴室で二人の裸体に降った千夜一夜の酸性雨、シャワーヘッドの突起で自慰して、バスタブ擦るスポンジのジャブで生まれた波の音、マツキヨ特売七百円のシックハイドロシルク踊れる、刃先が滑れば剃刀色の夢を見る、鋳る、アンドゥトロワで韻を踏む。火花を散らして、宙までいくには乏しい射精、終わってしまったようでした。


リップマークだかニップルマークだか、そんな名前の波紋があったね、ちがう? 遠い異国で揺れてるあれはプールの水では追いつけないよな透明度なのに、職員室のカラーコピーでいとも容易く轢殺しちゃった松本先生、今も変わらず元気かなぁ。理科室の端、ビーカーの並ぶ棚側の席で秘密のメモを交換したこと、告解室の壁も撫でない、「告白」の語のほんとの意味も、知らないままの桃色盛りの夏のこと。今も生理の前日微熱がでるのも、十四才の私が飲んだ嵐の印で、盆の頃にはぜんぶ根っから踏みにじられた唇の赤。なんであの時酸をかけずに食んだのでしょう、7/15がやってくる度、蝉の鳴く路地、つまらん木漏れ日、塩素の匂いが漂う度に、六年経ってもその赤のこと、今でもずっと考えてるよ。


何となく終わった生活がしたいの、それは例えば十代の渚、往生際の悪い海岸。セックス・ドラッグ・飲酒・喫煙・ロックンロール!を投げ捨てて、ぷるぷる揺れてるKALDIの杏仁豆腐を二人ではんなり食べたいな、って、いいじゃん別に、そんなことでも。花束みたいな恋をするよりつまんねーって吐き捨ててったてめぇのピンクのつまらなさ、忘れない忘れないよ、誰に何を言われても、偽物だってそれでいいから、顔を手折って腿を抉って、私は私の私ひとりの痛み方して、孕む悲しみにこの中指を立てていくこと。


詩でない文を書くのが怖くてそれで詩の色にした羽を纏って、震えたまんまで飛べ飛べとべ!って、それじゃあ蒼には届かないよね、しってた。晒し者って言葉はあるけど、持たないままじゃ手を伸ばすことも許されない、傷つくことって傷付けることの代償なのに、今は傷の大きさひとつが傷付けるための馬券みたいなやり方されてて、世界はなんて気持ち悪いね、何より賎だ。
千の図星が流れる川に取り上げられてく魂があって、潔癖症のわたしはそれで水面に浮かぶ顔に刺されて、ズタボロのままうるさいうるさい黙れよブスが全員死ね死ね死ねしねしねしねしね、って蝉みたいにただ泣きながらした裏垢のツイを弔してく。ごめん。
こんなつもりじゃない人生で、ひょいとビリリと腕でも裂いて咲いてくように、なりたかったのはあの花ちゃんで、私が持つのはこの華ばかりで。リアルの人には伝わらないけど、それでもここで生きてしまうのは、後ろの草のがよっぽど私に鎖みたいなもんだったから、ここならやっと、その一文字を失えたから。
許せだなんていわないけれど、飛べないままでも、プールサイドでジリジリ焼けていくよりきっと、この底にいつかやさしい溺死がありますように。願った右手でかき消すように、ボチョン、と落ちれば、交尾盛りの蜻蛉、鳴いてる。

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