正しい壊死

わたし傷付き方すら知らないの、正しい壊死だけ望んでる。
ものすごい雨。雨音は体の存在領域ぜんぶを飲み込んで、私をnullにしてくれる。こんな日の朝の制服、重たい紺のスカートみたいな、地下鉄駅の出口みたいな、そんな匂いがずっと鼻腔に残ってて、始まってもないこの夏のこと、はやくもこの手で殺したい。なるたけ真面目に生きようとしてスイカになれないメロンを産んだ。ただの雨水を涙とか呼んで、知らないふたりの逢瀬を祝って、知らない大人が騒いでる。使われなかった私の液はまだ白いままの腿をつたってぬらりぬらりと排水溝に流れてく。愛の名がつくあの子はそうして愛のないまま死んでった。
すきの二文字がほしいだけなのに私はそれにも足りないみたいで、ここにいるのにミュートされるたびお腹の羽が透けてく気がして、ああやっぱり生まれてこなければよかったんだ、って思うの、まだ生きられてるのに、思ってしまうの、これってすごく我儘でしょうか。いいないいなと思ってた、ずっとなりたいあの子からいいねくるたび惨めで泣いちゃう。汚いとこだけぶくぶく肥えてく。あんたはいいよね、持ってる側にはずっとなれないし、テーマパークに行けない顔で生きていたって意味がない。全員死ねの気持ちでいるから友達ひとりもつくれない。一生懸命くちびる当てて吹いた青のバルーンはチワワじゃなくて避妊具に変わる。ネモフィラみたいにギリ水色にもなれない青で、まだふわふわとしてる、してるね、うれしいね。これだけでいいじゃん、とかって思ったりして、裸のまんま抱き合いたくて、手を伸ばしたらインターホンで目が覚める。言葉も歌もなにも私を救えなかった、だから風呂場で膿になる。刺す。刺す、刺す刺す刺す刺すお前を刺す、バラでなくアザミ、小さな毒で、いちにのさんで破裂する。
刺された時にいちごみるくが溢れるような女だったら満足でしたか。

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