#13 お坊さんが”うさぎ年”を読み解くと…
●前誠 今年はうさぎ年だね。
○前叶 兄貴は十二支全部言える?
●前誠 言えるわ!
○前叶 ごめん、ごめん。そういえば「今年の干支」などというけれども、なんであの字で「えと」と読むの?って思わない?
●前誠 どうやったって、「え」とも読めないし、「と」とも読めない。
○前叶 そうなのよ。あの字はとても大切で、まず、干支(かんし)とは、十干十二支(じっかんじゅうにし)と言って、十の干、十二の支、でこの干と支をとって「干支(かんし)」と言います。
十干(じっかん)っていうのは聞きなじみがないかもしれないんだけど、音読みでは上から甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)といいます。
古くから日本では使われていて、最近では『鬼滅の刃』の鬼殺隊で隊士の階級に使用されていました。
●前誠 主人公の竈門炭治郎が「癸(みずのと)です」って言っていたあれですね。(ちなみに今年は癸卯年です)
○前叶 そう。訓読みでは、甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)と、それぞれ読み方があるんです。
そして十二支はみなさんご存じ、子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)。
これらを「天干地支」といって、天の力は十干、地の力は十二支。
●前誠 自然の力ってことかな。
○前叶 そうそう。天の十干、地の十二支の力をそれぞれ受けて、我々人間は生きているというわけ。
ちなみに十干の甲(きのえ)乙(きのと)…で、「~え」というのは「お兄さん」、「~と」というのは「弟」っていう意味で、兄弟を表しているんだよね。
ひいてはそれが「陰陽」を表していて、たとえば「甲(きのえ)の「き」は木(もく)という属性のお兄さんであり陽」、「乙(きのと)は木の弟で陰」。
この「え」と「と」から干支(かんし)は「えと」と読むようになりました。
「干支」と「還暦」の深い関係
●前誠 なるほど。では、十や十二っていうのはどこに行っちゃったわけ?
○前叶 ちょっと算数っぽい言葉になるけれど、最小公倍数って覚えてる?
●前誠 なんとなく…。
○前叶 10と12は?
●前誠 …60?
○前叶 そう60。つまり十干十二支は60種類あるということ。
十干は1から10まで進んでいって、10が終わると1に戻る。でも十二支は10のあと11があるからちょっとずつずれちゃう。それが元通り十干の一番初めと十二支の一番初めに戻ってくるために60パターン必要ということ。
●前誠 1周が60パターンってことだね。
○前叶 だから、今年はうさぎ年って言ったけれど、今年の十干十二支がもとに戻ってくるのは60年後。つまり、生まれた人に同じ十干十二支が戻ってくるのが60年後になるから、暦が還ると書いて「還暦」と呼ぶんだね。
●前誠 赤いちゃんちゃんこを着るあれね。
○前叶 もう一回暦が戻って生まれ変わる、赤ちゃんに戻るという意味もあって「赤い」ちゃんちゃんこを着るんだよね。
●前誠 赤っていうのは一番生命エネルギーのある色とされているよね。一番エネルギーに満ち溢れている存在を「赤ちゃん」っていうしね。それをもう一度身にまとって、今一度、長生きしてくださいじゃないけれど、おめでたい意味合いもあって赤を着ると。
○前叶 それに暦60通り見てるってことは、何でも知ってる長老みたいな。今は平均寿命が長いからそんなに珍しいことじゃないかもしれないけど、昔からするとやっぱりすごいことだからさ。
2023年はどんな年になりそう?
●前誠 話が還暦のほうに行っちゃったけど、干支っていうのは本来、十干と十二支があって、それが60パターンあるということは、「今年の干支は?」って聞かれて「うさぎ」って答える人は十二支を答えていて、干支ではないんだね。
○前叶 それってすごく大事なことで、2023年は癸卯(みずのとう)でみずの弟の年。
でね、「卯」はもともと「茂」という字が由来といわれ「春の訪れを感じる」という意味、また、「卯」という字の形が「門が開いている様子」を連想させることから「冬の門が開き、飛び出る」という意味があると言われています。飛躍や向上することができるよう、充分準備しておきたいよね。
●前誠 明日は明るい日と書きます。皆さまの明日がより良い1日となりますように。本年もよろしくお願いします~!
○前叶 合掌。