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共学か別学かで迷っています。やはり、違うのでしょうか?『中学受験 親のお悩み相談室』(#20)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:共学か別学かで迷っています。やはり、違うのでしょうか?

回答:共学と別学(男子校・女子校)はもちろん違いがあります。それぞれの特徴を理解してベストの選択をできるといいですね。

共学と別学、それぞれのメリットとは?

男子校・女子校を選べるのは私立中学受験の特徴のひとつですが、親自身が経験していないと、その特徴は掴みづらいかもしれません。

これまで多くの学校を見てきた経験を踏まえて、それぞれの特徴を見ていきましょう。

男子校・女子校は戦前から続く伝統校が多く、共学は戦後にできた学校が多いのですが、最近は、共学化する別学の学校も増えています。

これは、多様性やジェンダーを重んじる社会の流れに合わせて共学を選ぶ保護者が増えているということもありますが、学校の本音は「生き残りをかけた少子化対策」です。

生徒募集に苦心していた別学校が、共学化して校名も変え、全く新しい学校として生まれ変わった結果、人気が集まり今では難関校になった学校もあります。

子どもたちにとっても、共学は小学校と同じなので、違和感もないでしょうし、学校を社会の縮図と捉えれば、ごく当たり前の環境です。それぞれの特性や違いを肌で感じながら、成長できるのは共学の魅力の一つでしょう。

一方、中高時代は、子どもから大人に変わる時期。精神的にも肉体的にも大きく変化する時期ですから、異性の存在が良い意味でも悪い意味でも影響を与えます。人にもよるでしょうが、異性の目が気になって、素の自分を出しづらいということもあるようです。

その点、別学は、多感な思春期に異性の目を気にせず素の自分をさらけ出せるということがよくいわれます。そこで男子校・女子校に分けてそれぞれの特徴を見ていきましょう。

女子校ではリーダーシップが育ち、男子校ではいろいろなタイプの子が共存できる

男子は、たとえば電車好きの”てっちゃん”のように、一つのことに熱中する傾向があります。その点、男子校では異性の目を気にせずに自分らしくいられる傾向があるようです。

ある男子校出身者は「興味は違ってもお互いに気にしないし、オタク系と体育会系がふつうに学校のなかで共存していた」と話してくれました。

6年間共に過ごすことで仲間意識が芽生え、男子校出身者は卒業後も長く付き合いが続くようです。社会に出ると競争が多くなるので、しがらみのない時代に育まれた友人は貴重ですね。

一方、女子校は一見おしとやかな印象を持つかもしれませんが、どの学校も外部からの印象とは裏腹に、元気で活発なタイプの生徒が多い印象です。

それは、共学校なら男子が担うような力仕事的な役割はもちろんのこと、学校生活のさまざまな場面でリーダーシップを発揮する機会も多く、自然に積極性や自立心が芽生えるからでしょう。

実際、社会に出たあとに、臆せず自分の意見を言えたり、役職につく人に女子校出身者が多いのも、思春期に異性の目を気にせずに自分の力を発揮する経験をしたことが大きいのではないかと思います。

また、キャリア教育の点では、出産や子育てなど女性のライフステージを意識したものに特化できるのも女子校ならでは。

また、女子校には授業の一環として、茶道や華道、礼法などを取り入れている学校も多く、家庭ではなかなか経験できない教養を身につける機会として人気があります。

リーダーシップという点は、実は、男子にとっても同じことが言えるようです。

元開成中高の柳沢校長先生は、男子校のメリットについて「主たる教育の担い手が母親だと、どうしても男の子に対して甘くなってしまう。今の男の子は、家庭では母親に甘やかされ、学校では女子生徒のリーダーシップのもとに置かれて脇役に置かれてしまいがち。男子校の場合は潜在能力を持った男の子が実力を発揮することができる」とおっしゃっていました。

母親にとって、男の子は異性。扱い方がわからず戸惑う一方で、かわいくてついつい甘やかしてしまうという声も聞きます。

少子化で一人っ子が多くなっているため、人との付き合いが苦手な子どもが増えているといわれていますが、男子校は、先生も男性の割合が高く、男子の指導に長けている人が多いので、扱いづらい思春期の男の子との向き合い方に悩んだ保護者からは「男子の指導に詳しい先生のアドバイスが心強かった」という声もありました。

また、同じ学校の中に男子部・女子部があり、一部の授業や課外活動だけは一緒に行う、別学というスタイルをとっている学校もあります。こちらはそれぞれのいいとこ取りをしているとも言えますね。

ただ、時勢的にも、ジェンダー教育は別学でも共学でも重要だと思います。ただ、残念ながらその辺りの取り組みはまだ始まったばかりという印象です。

共学・別学・男子校・女子校、いずれにしても、学校がどんな理念のもとでその教育を行っているのかを見極めるのはとても大事なことです。
その上で、お子さんがどちらの環境が合いそうかを見ていきましょう。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。