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「学校説明会では『何をチェックすべきか』教えてください」『中学受験 親のお悩み相談室』(#3)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:学校説明会でどんなところをチェックすれば、子どもと学校との相性がわかるのか教えてください。どの学校もよく見えて、比較が難しいです。

回答:最も参考になるのは、在校生の姿です。そこをチェックしたうえで、教育理念や教育方針を見てみましょう。


まずは、「そこにいる子どもの姿」をイメージしてみよう

学校説明会で見るべきポイントですね。いきなりですが、お子さんとの相性という観点でいくと、一番参考になるのは、在校生の姿を見ることです。これは数値化できないことなのですが、そこにお子さんがいそうだなと感じられるかどうかを、イメージしてみてください。

いろいろな学校を見ていくと、在校生の雰囲気が違うことに気づくと思います。たとえば、来校者に対して、在校生が立ち止まって大きな声で礼儀正しく挨拶をする学校もあれば、そうでもないところもあります。

素朴な感じの子が多いところもあれば、華やか・元気のよい子が多いところも。

私学は特にそれぞれのスクールカラーがあり、人は環境の動物なので、所属する環境の影響を受けますから、多かれ少なかれ似てくるんですよね。なので、そこにいる人を見てほしいなと思います。

最近は学校説明会に生徒が出てくる学校もありますし、映像を流して学校生活の様子を伝えるところも増えてきました。それも生徒の雰囲気を伺うチャンスではあるのですが、できたら、校庭で部活をしている様子や、登下校の様子なんかを見れるといいですね。

学校によっては、生徒がいる校舎も含めて校内見学をさせてくれるところもありますし、案内を生徒に任せているところもあります。ここ数年はコロナで学校に入れなかったのですが、これからは現地で、できるだけ普段の様子が見られるといいですね。

「生徒になんでも聞いてください」とオープンな学校は、生徒こそがその学校の教育の証であると、自信を持っているのでしょう。そんな機会があったら、ぜひいろいろ率直な質問をしてみるといいですよ。

そういう姿勢も学校を見極めるポイントになったりします。公の場だと、どこもよいところを見せようとするので、確かにどこもよく見えてわからなくなりますね。でも、人って素が出るのでお話の内容はもちろんですが、雰囲気をみてください。

また、先生に関しても話の内容も大事ですが、雰囲気はどうかも見てくださいね。こちらも、パリッとしている先生が多いとか、素朴だけどあったかい雰囲気の先生が多いとか、違いを感じられると思います。

個別相談では、できるだけ「同じ質問」を

次に私が学校選びで大事だと思うのは、その学校の教育理念に賛同できるかどうか。そして、教育方針との相性です。

教育理念や教育方針は、校長先生が話されることが多いので、そこでどんなことが語られるのかに注目してください。

その上で、各学校が重要視している教育内容をチェックしていきましょう。以下は、私が考えた学校選びの7つのポイントです。

  1. 校風:管理型⇔自主性を尊重型

  2. カリキュラム:受験科目重視型⇔リベラルアーツ

  3. 探究型学習

  4. キャリア教育

  5. 体験学習、部活、行事に対する考え方と内容

  6. グローバル教育への取り組み

  7. 特徴ある取り組み ICT化など

出典『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)

1と2は、学校の教育理念や教育方針から学校の傾向を分類するマトリクス。学校の校風や教育方針からタイプ分けすることで、学校の特徴を大まかに可視化できます。

服装既定などの校則が細かく決められているところもあれば、細かい校則はなく、生徒自身に考えさせていく学校もあります。また、日々の学習習慣をつけるために、細かく小テストを行ったり、手帳で管理する学校もあれば、何をどう学ぶかまで、生徒が決めていく学校もあります。

3〜7は、学校の特徴を測る指標です。3~6は変化の激しい時代を生き抜く力を身につけるために中高時代に重視したい取り組み。7はたとえばICTの活用や宗教教育など、学校独自の特徴を知るためのポイントです。

私学というのは専門店のようなものなので、それぞれの看板商品が何なのか、どういう方針で人を育てようとしているのかをチェックしてみましょう。

お子さん自身の好みや気質によって、どのタイプの学校が過ごしやすいかは変わると思います。相性のいい学校を選べるとよいですね。

同じ指標を使ってチェクしてくことで、学校が何に力を入れているのかが見えてきます。これを元に、できるだけ個別相談を利用して、気になるポイントを質問してみるといいですよ。

そのときに、たとえば「勉強についていけなかったらどうなりますか」とか「部活の活動状況はどうですか」とか「いじめはありますか? もし見つかったときにはどう対応されますか」「探究的な学習としてはどんなことをしていますか?」など、同じ質問をそれぞれの学校に聞いてみると違いがわかりやすいと思います。

こういう答えにくい質問にどう対応されるかでも、学校の素顔が見えてくるはずです。

そして、お子さんが、どういう環境なら生き生きしそうか、感じてみるといいと思います。何度もお伝えしていますが、結構これって大事です。7つのポイントの具体例は、『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)に詳しく書いたので、参考にしてみてください。

最後に、学校選びで忘れてはいけないのは、あくまでも通うのはお子さんだということ。親の考えや好みももちろんあっていいですが、お子さんとは違う場合もあります。なので、お子さんの考えを尊重しましょう。


中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。