胃腸炎後の食事

胃腸炎後の食事の取り方 - 『養生大意抄』05

冬場に多い胃腸炎後の食事の取り方について、江戸後期の『養生大意抄』からご紹介。江戸の本草書に記載される、胃腸炎後におすすめのレシピもあり。

1.胃腸炎後の食事の取り方

【原文】
若(もし)食傷吐瀉(はきくだし)せし事ありし後、早く粒食(つぶのめし)を食すべからず。飢極りて米飯(おもゆ)をのみて少しく腸胃を潤すべし。其後消息(みはからい)て稀粥(うすきかゆ)を進め、又はるか程ありて少し輭(やわら)なる飯を白湯漬(さゆづけ)にして食し、漸々(だんだん)に食量を倍すべし。一時に粒食を食し、或は一概に多く食すれば、大いに害あり。

文献:多紀元悳『養生大意抄』(国立公文書館内閣文庫所蔵)

【意訳】
もし食あたりをして、嘔吐や下痢があった後は、早々に粒のご飯を食べてはいけない。先ずは空腹を感じてからおもゆを少しのみ、胃腸を潤すべきである。その後様子をみて薄めのお粥にし、又しばらくしてから、少し軟らかめのご飯を白湯漬けにして食べ、だんだん食事の量を倍にしていく。病後にすぐ粒のご飯食を食べたり、たくさん食べるたりすると、大いに害がある。


2.ひとこと - 普段通りがっつり食べてよいのか

寒い季節なると増えてくる胃腸炎。下痢や嘔吐などの症状が強い時は、経口補水液などで対処するとして、症状が治まったあとの飲食はどうすればよいのだろうか。

今回読んだ部分では、その手順について記載されているわけだが、『養生大意抄』は基本として小児科の本ではないので、大人の場合はどうするかということで参考にしたい。

(1)通常食への戻し方の手順

下痢や嘔吐が治まってきた後は、普段通りがっつり食べてよいのかどうかということになるが、ここでは急に「粒の飯」を食べたり、「多食」したりしない方がよいとしている。

特に胃腸炎の後に、胃腸の違和感が続きやすい方は、自分の症状に合わせて少しずつ慣らしていった方がよいだろう。

では、症状が落ち着いたあと、実際にどのように通常食へ戻すのか、その手順を原文の記載に基づいて図示してみる。嘔吐が止まり、下痢がほぼなくなり、空腹を感じるようになってからがスタートだ。

胃腸炎後の食事の取り方

まず重湯やお粥の段階では、普段のご飯の1/2までの量とし、朝昼晩という時間は気にせず、空腹を感じてから少量ずつ食べるようにする。

重湯やお粥で特に問題なさそうなら、白湯漬けにして、徐々に様子をみてご飯の量も健康時と同じくしていき、最終的に粒の飯に戻す。これが通常食への戻し方の手順だ。

(2)江戸の本草書にある、胃腸炎後におすすめのレシピ

さて、以上が胃腸炎回復後の食事だが、今回強く思ったのは、重湯や白湯漬けは何だか味気ないではないか、ということだ。

そこで思い出したのが味噌。確か『本朝食鑑』に「嘔吐や下痢の時によい」と書かれていたはずだと思い出し、読みかえしてみると、次のようなちょっとしたレシピが書いてあった。

旧(ふる)き味噌の味甘きものを用いて、水及び酒鰹汁を和して煮熟して温服すれば、則ち立ちどころに験あり。
(『本朝食鑑』巻二、穀部之二、醸造類)

味噌と水と酒と鰹汁をよく煮込むだけの簡単なレシピだ。鰹の出汁をとるのが面倒な場合は、鰹節をそのまま入れて煮込んで一緒に飲んでしまってもよいだろう。

病後に重湯を飲むよりも、この味噌汁の方が嬉しい気がする。また、お粥や白湯漬けではなく、酒と鰹節を入れて煮込んだ味噌おじやの方が、より美味しく食べられるだろう。

それに味噌の本草学的な効果を利用した方が、回復もきっと早いはずだ。

実際にこのレシピを試してみたが、味噌と酒と鰹節だけの味噌汁も意外とイケる。ちょっと胃の調子が悪いときに、ご飯を少なめにしてこれを飲むのもよいかもしれない。

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