眠り猫

早起きはよい、ただし冬は除く - 養生大意抄15

今回は『養生大意抄』から、睡眠に関する記載をいくつか紹介する。

1.酒食後すぐに寝てはいけない

【原文】
○酒食の後いまだ消化(こなれ)ざるに臥しねむれば、酒食の気滞りて気血めぐらず病となる。若(もし)臥さば久しくねふるべからず。傍(かたわら)の人に言置てよびさまさしむべし。

【意訳】
酒を飲み、食事をした後、まだ消化しないうちに横になり眠ると、酒食の気が滞り、気血がめぐらずに病になる。もし横になるとしても長時間寝てはいけない。そばにいる人に言っておいて、起こしてもらうとよい。

2.昼寝をするとのぼせる

【原文】
○昼臥(ひるね)すべからず。昼臥は気を上逆せしむ故に眼さむるとき目の中必ず赤し。昼は陽気とともに開くべきに、かえって閉る故、元気を傷(やぶ)る。詩経にも夙(つとに)興(おき)夜(よ)に寐(いね)とあるは、天の令に随えばなりと、陳龍正が保生帖にいえり。

【意訳】
昼寝はしてはいけない。昼寝は気を上逆させるため、目が覚めたときに目が必ず赤くなる。昼は陽気の隆盛とともに目も開いているべきなのに、かえって閉じるため、元気を損傷する。『詩経』に「夙(つとに)興(おき)夜(よ)に寐(いね)」とあるのは、天の定めに従うからであると、陳龍正が『保生帖』において述べている[1]。
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[1]陳龍正は明代の人。『保生帖』という文献の詳細は不明だが、『幾亭全書』巻六十一、因述、保生述にここで引用されている文章が見られる。

3.12時までには寝ましょう

【原文】
○夜は早く臥すべし。若ねむらざれば、人の血を傷(やぶ)りて病を生す。已(やむ)ことを得ざるとも、子(ね)の時を過すべからず。

【意訳】
夜は早く寝るとよい。もし早寝しないと、血を損傷して病を生じる。やむを得ない場合でも、子の時は過ぎてはいけない[2]。
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[2]子の時は23時から1時頃。

4.早起きはよい、ただし冬は除く

【原文】
○朝は早く起るをよしとす。冬は日光を待て起ぬるをよしとす。寒気を防(ふせぐ)がためなり。

【意訳】
朝は早く起きるのがよい。冬は日が出てからおきるとよい。寒気を防ぐためである。

ひとこと

遅寝や食べてすぐの就寝の戒めは、小さいころ親に言われた記憶がある。また、うっかり昼寝しすぎた時のあの倦怠感は、気の逆上によるのぼせが原因だったのか。

冬は遅起きでもよいというのは、寒さを防ぐというだけでなく、天人相関説にも基づいているのだろう。天人相関説とは、天と人とがつながっていると考え方だ。

冬は夏よりたっぷり寝るために、出社時間を遅くし、終業時間も短めにするウィンタータイムなんていう制度は絶対にできないだろうなぁ。


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