きよしという男
清家淳。僕のじいちゃんだ。
うちの祖父母の家は愛媛の田舎にある。昔ながらの家で築100年以上だ。
山の中腹にあり祖父母の家より上は、誰も住んでない。
鶏100匹、猫3匹、犬3匹、ゴキブリ多数、ネズミいっぱい飼っている。
ゴキブリとネズミは、じいちゃんが鶏の餌と猫の餌を外にばらまくので、そのおかげで勝手に増えた。
ある日、ばあちゃんが半年ほど親戚の家に泊まることになった。
じいちゃんは家事なんてしたことない。ちゃんと生活できてるだろうかと思い、夏休みに五日間ほど遊びに行った。
行ってみて、予想通りだった。ゴミがそこれら中に捨ててあった。
ゴミが溜まったら、燃やすらしい。
変わってないなって思った。
昔からじいちゃんはテキトーにゴミを捨てていた。でもそれをばあちゃんが掃除していたから綺麗なんだなって思った。そして昔からよくゴミと木を燃やしていた。
一年ぶりくらいに話して、買い物行って、ご飯作って楽しかった。
そして寝た。
僕は一番綺麗な部屋で寝た。
朝起きると、足と手を中心に20箇所くらい刺されていた。ノミとダニだ。
猫が勝手に入るので増えたのだろう。犬も部屋の中で繋いだりしているのでそれも原因だ。
鶏もたまに上がってくる。
じいちゃんちに行って一番辛かったのが、ノミとダニだった。
きっとばあちゃんが帰ってきたらじいちゃんは怒られる。
ちなみにじいちゃんが寝てるとこはこんな感じ。
昔からこんな感じだ。犬を部屋に連れ込んで寝てるからこれも昔から変わってない。
僕が寝た1番綺麗な部屋でも、かなりノミとダニに刺された。じいちゃんもきっと困ってるだろうと思った。
「じいちゃん、こんなとこで眠って痒くないと?」
「痒くないぞ、たまにかゆいけどな。」
じいちゃんは昔からすごく大雑把だ。
トラクターで邪魔な墓石をぶっ倒すほど大雑把だ。
次の日にバチが当たって大熱を出したらしいが。
今までは、ただ大雑把だなとしか思っていなかった。
でも実際にじいちゃんと同じ環境で生きてみて、改めてじいちゃんのすごさを実感した。じいちゃんは大雑把でもあり、環境に強い。ノミとダニに刺されても平気だ。ゴキブリいっぱいでも気にしない。
環境適応力がハンパない。
じいちゃんには一生勝てないなって思った。
僕もいろんなとこに行き、日本、海外含め野宿したりしてきて、他の人たちよりかは環境適応力は高いと思っていた。自分の向いている職業はホームレスだって思ったこともあった。
だが、じいちゃんと比べると、僕はなんて慢心してたんだろうと気付かされた。
こんなに強い相手がこんな近くに居たなんて。
東南アジアの田舎のご飯屋さんに行ったら、蝿とご飯食べるのが当たり前だったりする。飲み水に虫が浮いてたりしたこともあった。
きっとじいちゃんもそっち系なんだろう。
人間って自分が思っている以上に強いなって思った。
僕のじいちゃんは元気だ。75歳。
今でも山仕事や草刈りをてきぱきとする。
じいちゃんより僕の方が力と体力はあるだろうが、山仕事では全然歯が立たない。
今まで、じいちゃんのことなんとなくすごいとしか思っていなかった。
今では、本当にすごいと思うようになった。
僕が帰る日。じいちゃんはクマバチに頭を刺された。
ナシの木にクマバチが居たから叩いたらしい。
やっぱり大雑把だ。
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