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ヤクルトに関する雑談

 今さらながら、このほど私はヤクルトっ子になった。

 ヤクルト。昔から、ふとした瞬間にそこにある乳酸菌飲料。
 ときどき温泉に行くと、ごはんと一緒に出てきたヤクルト(子どものころかな? よく覚えていない)。ヤクルトとりませんか? という訪問を受け、サンプルに1本おいていかれたときだけ飲めるヤクルト。
 最近でも、骨粗相症治療をしている母が、薬局でなぜか毎回1本もらってくるヤクルト。(わりと私が飲んでいるのだが)。それから、甥を連れて公園に行ったら「ヤクルトレディやりませんか?」と声をかけられたヤクルト。

 定期申込をした経験が人生で一度もない。おそらく自分で購入したことも一度もなかった。にもかかわらず、なぜか昔から生活のそばにある不思議な存在、ヤクルト。

 人生約40年にして、このほど唐突にヤクルト習慣のある人間になった。

 いうまでもなく、きっかけはあのヤクルト1000だ。
 以前から、しゃれたCM(主にダンサーの菅原小春さんのもの)がテレビで流れているのは見ていたのだが、なんとなくスルーしていた。私は健康オタクだが、健康オタクにも何がしかのプライドはあり(?)、ヤクルトは「甘くておいしい乳酸菌飲料」であって健康に役立つわけではない、という認識があった。

 今年ブレイクして、手に入らないという話が聞こえたころ、遅ればせながらヤクルト1000に興味をもった。
 まず、近所のスーパーやコンビニで様子をうかがい、ヤクルト1000のスペースすらない乳酸菌飲料コーナーや、スペースだけはあるものの品物は影もかたちもないコンビニなどを見た。
 そのころネットで「ヤクルト販売所に直接行けば手に入る」という話があったので、生まれて初めて近所にあるヤクルトの宅配センターに行ってみた。お店のようになっているのかと思ったら、ただのヤクルトレディの詰所という雰囲気。しかし、レディたちは闖入者をうろんな眼で見てくるでもなく、

「……こちらでヤクルトが買えるんですか?」
「買えますよ!」
「ヤクルト1000というやつは……」
「ありますよ!」

 という感じで、私は無事ヤクルト1000を入手した。

 飲むと、味は普通のヤクルトと変わらない。濃いような気がするのだが、シロタ株とやらが濃いという話に影響されてそう感じるだけかもしれない。

 そして、初めて話題のヤクルト1000を飲んだ翌日……

 痔が治った。尾籠な話で恐縮である。

 実はその前日、私はちょうど久しぶりに痔を発生させたところだった。我が痔は、痔といっても、押すと少し痛いぐらいの軽度のいぼ痔。座ると激痛が走ったりはせず、風呂場で尻を洗う際にちょっと気になる。
 この数年で何回か出ているのだが、特徴としては、

  • ちょっと消化不良気味で

  • 歩く量が多い

 ときに、たまに発生する。

 ちなみに痔デビューはスペイン巡礼のとき。スペイン料理はおいしいが、なんだかんだ油が多いので、胃腸が軟弱な私は巡礼歩き開始後しばらくすると消化不良になった。ある日、尻がピリピリするな? と思ったら、尻に虫刺されのようなものができているではないか。

 帰国後も、連続して登山に行っているとき、ふと尻がピリピリすると思うと痔ができていた。適当に腹を整えたりしているうちに、1、2週間ほどで引っ込むのが常だった。

 最近は、登山をサボり気味。近所の散歩も以前やりすぎて飽きてしまい、今年に入ってから一日の歩数は減少傾向だった。その結果、体重がまずいことになってきたため、春ごろから歩数を増やした、その矢先の痔だった。

 痔が発生した翌日、たまたまヤクルト1000を入手したのである。そしてなぜか、その直後、いったんできていた痔が引っ込んでしまった。いくら評判のヤクルト1000だからといっても、さすがにこれは無理があるやろ、と思ったが、実際に我が身に起きたことである。
 なお、噂の悪夢は一回も見ていない。

 ヤクルトの宅配センターで購入できるヤクルト1000は7本組。私は痔が治ったあとも、残りを飲みつづけた。
 とりあえず、腹の調子はすこぶるよくなった。

 体質的に胃腸が弱く、日ごろ漢方クリニックに通って整えている人間なのだが、このところ漢方をサボっているにもかかわらず、ヤクルト1000を飲んでいるあいだは調子がよかった。はぁすごいな??? よくわからんけど。

 1週間分を飲み終えたとき、腹の調子は絶好調になった。
 ヤクルト1000、無職の身にはちょっと高価なのだが、せっかくだから続けたい。私は再度、宅配センターに向かった。勝手知ったる気分でセンター前に自転車を止めて中に入ろうとしたとき、入り口付近にある手書きの貼り紙が目に入った。

「ヤクルト1000の販売は一時中止しています」

 ついでに、たまたま出てきたレディにも謝られてしまった。

 手に入らないなら仕方ない。近所のドラッグストアに行くと、あったのは普通のヤクルト「newヤクルト」。シロタ株の濃さが異なるとはいえ、こちらも同じ乳酸菌が含まれた、れっきとしたヤクルトだ。
 今まで飲んでいた濃度の高い1000で調子は整った。ここいらで薄いnewに切り替えても、いい調子を継続できるのではないか。

 ということで、ヤクルト1000を1週間飲んでのち、newヤクルト生活に切り替えた。
 そして、またその翌日のことである。

 1日で引っ込んだと思っていた痔が復活したのは。。

 嘘みたいだがマジである。あの虫刺されのような、かすかに痛みのある膨らみが、ヤクルト1000を離れてたった1日で我が尻穴に帰ってきたのだった。

 しかしもう当面ヤクルト1000を入手できるあてはない(7月から増産という話があったがどうなったのだろう)。仮に痔を治すほどに腹を整えてくれたのがヤクルト1000だったとしても、近所のスーパーなどで手に入るのはnewヤクルトのみ。

 そういうわけで、今度こそ私は通例どおり1、2週間かけて痔を治したのだった。なお、newヤクルトをせっせと飲んでいても、尻の穴の膨らみは時の経過で少しずつよくなる以外にめざましい変化はなかった。

 だが、newヤクルトをしばらく飲みつづけた結果、そこそこ腹のいい腹の調子を維持できるようになった私は、その後もなんとなくnewヤクルトを飲みつづけ、人生約40年にしてヤクルトっ子となったのである。

 余談だが、ヤクルト1000がJRの自販機にあるという噂を聞いて、外出のたびに自販機を注視するようになった。私がこれまでに遭遇できたのは、東京駅、本八幡駅、分倍河原駅の3駅。さすが東京駅はトレンドを気にする客が多いのか、すべての枠が売り切れ状態だった(あるいはタイミングか)。
 ともあれ、いずれ安定して近所で手に入るようになるとうれしいですね。もちろん痔に対する即効性はよくわからないのだが。
 こちら、わりとプラセボ効果が出やすい性格をした人間の個人的な体験であり、効果は個人差があります(完)。

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