スペイン巡礼2018回想記(32)ヴェガ〜フォンフリア
2018年6月6日。
この日はヴェガ・デ・ヴァルカルセからオ・セブレイロ峠を経てフォンフリアまでの22km程度の行程。
オ・セブレイロ峠は巡礼路最後の難所といわれる場所だ。
それで、たまには余裕をもって出発したかったのだが、朝起きたら、まず朝食をとる予定のバルがオープンすると言っていた時間に開いていない。
オープンまで1時間。
同時にバルに来たフランス人巡礼者たちは、文句をいいながら朝食抜きで出発していった。
しかし、私は朝食抜きでは意地でも動きださない(自慢じゃない)。朝食抜きではてこでも活動を始めない、それが私だ(くりかえすが自慢じゃない)。
その方針ゆえ、しばしばスペイン巡礼中には体重が3、4kg落ちるといわれるのに、私は安定した体重のまま帰国することになる。筋肉は増えたので、健康的な巡礼者と申せましょう。
(ヴェガのアルベルゲから、サラセンの城を望む)
さておき、朝食まで時間が余った。
そこで、私はこの空き時間のうちに、昨日チェックしておいた近くの城跡「サラセンの城」に行くことにした。アルベルゲのスタッフさんに訊いて、片道15分程度(※うろ覚えです)、足もとがよくないのでサンダルでは行けない場所、と教えてもらっていた。
朝食抜きで活動しないという方針と若干矛盾する気がするが、とにかく1時間あるので、私は城跡めざして歩きはじめた。
途中、道が分かれていて、少し嫌な予感がしたのだが、生来の方向音痴である私はまんまと引っかかった。
はっきり覚えていないが、入り口のところに「◯◯の道」という知らない道の名前が書いてあり、そちらに進むと足もとの悪い道が続く。20分近く進んで、城跡がむしろ遠ざかっていることを理解した。
ヴェガに戻ってバルで朝食をすませたが、どうもあきらめきれない。
カストロへリスで寄り道した城跡がとてもよかったので、ここも希望が捨てきれない。
後悔はしないように、というのが、今回の巡礼の旅の最大の方針だ。ということで、朝食後ふたたび城跡にむかう。
今度は分かれ道の反対側へ。やはりこちらが正解だった。道に入ると、すぐに「サラセンの城」の看板があったような記憶。
「目印」はそれだけではなかった。
城跡のある小さな山の入り口に民家があり、門前に犬が座っていた。
何の気なしに、犬に笑いかける私。
犬が立ちあがる。よく見たら、鎖がつながっていない。ちょっとまずったのでは? と思ったが、犬の態度はごくごく穏当である。しかし、ついてくる。
ちょいと困ったな? と思ったが、私は動物慣れしておらず、追い払うこともできない。
家帰らないの〜? と呼びかける私をよそに、犬は私についてきては追い抜かし、少し先で立ちどまって私を待つ、をくりかえす。
ほどなくして「サラセンの城」に到着。入り口は施錠されていて、内部の見学はできない。外観をひとしきり撮影して山を下りはじめると、やはり犬もついてきて、結局、犬のいる民家に戻るまでつかず離れずで一緒に来た。案内犬?として仕込まれているのだろうか。
(サービス?)
でも、巡礼仲間のいない私にとってはちょっとした出会いで、愉快だった。
ほかの巡礼者たちにかなり遅れて、ヴェガを出発した。旅の目的地サンティアゴ・デ・コンポステーラのあるガリシア州に入り、風景はずいぶん瑞々しくなった。天気も、うっすら曇っていることが多く、雨が増えた。
ちなみに洗濯物の乾きも悪くなり、今まではひと晩そのへんに干しておけばだいたい乾いたが、ガリシア州に入ってからは乾燥機がないとどうにもならなかった。
(朝の休憩、バルでミント入りオレンジジュース)
霧のなか、オ・セブレイロの街に到着。ランチにする。
バルでフランス人巡礼者にフランス語で話しかけられたのだが、「フランス語は話せるか?」「いいえ」が、この旅で理解できた唯一のフランス語だった。
フランス語は、オペラを歌うために3か月ほどかじっただけである。スペイン巡礼中、フランス語はほとんど公用語なので、次回はもう少し鍛えてから行きたい。
ランチ後はひたすら山道を下り、そのあと少し登ったような覚えがある。難所とはいえ、巡礼路が整備された現在はそんなに怯える必要はなかったらしく、登山に多少疲れたぐらいで宿泊地フォンフリアのアルベルゲ・ア・レボレイラに到着した。
あとから同じく宿泊していた日本人巡礼者に聞いたところによると、そのアルベルゲはかなり夕食がおいしかったらしいのだが、私には例によって昼に重いランチをとっていたので、夕食はスナックですませて就寝。
アルベルゲだが私は個室をとったので、コミュナル・ディナーの楽しげな雰囲気をよそに、ひとりぐっすり眠ったのだった。
(スペイン巡礼2018回想記(33)に続きます)
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