スペイン巡礼2018回想記(9)サリキエギ〜プエンテ・ラ・レイナ
2018年5月14日。
快適そのもののサリキエギのアルベルゲとの別れを惜しみつつ、約13km先のプエンテ・ラ・レイナめざして歩きだした。
(泊まったアルベルゲの外観。バルと同じ建物内に併設されたアルベルゲとは別に離れのアルベルゲがあり、私が泊まったのは離れのほう。オススメです)
前日に限界を迎えた足腰は、激しく寝たにもかかわらず、たったひと晩では万全とはいえない状態だった。
そこで、この日は約13kmと短めの行程を設定。昨日のうちにBooking.comでプエンテ・ラ・レイナの公営アルベルゲを予約しておいたので、大きいザックは荷物運搬サービスで運んでおいてもらう。
やはり、12kgのザックを手放してしまえば、足腰はなんとか動いてくれた。あまり経験がないので知らなかったが、重量負荷って本当に「負荷」なんだなぁ……。
サリキエギを出てわりとすぐに、有名なモニュメントと風力発電にさしかかった。霧の中をまわる風力発電は大迫力で、つい動画を撮る(記事の下にあるインスタ記事で見られます)。
で、それ以外はこの区間、何も思いだせない。
リアルタイムで更新していたインスタ記事を見ても、すでに「あまり覚えていない」と書いてあるので、まずこれ以外の記憶は今後とも出てこないだろう。ヨロヨロの足腰を引きずって、ひたすら足を動かす生き物になっていたと思われる。
しかし、プエンテ・ラ・レイナに着くころ、急に足腰がピシッと「はまった」。
その感覚は、なんとなく覚えている。直前まではヨロヨロしていたのが、その瞬間が来たあとは、急速に足腰が楽になり、思うように動かせるようになったのだ。いま思いだしても不思議な感覚である。
サンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼路を歩きはじめて5日目。
たぶんこの日、歩くための身体ができあがったのだった。
きもち元気になって、私はその日の目的地プエンテ・ラ・レイナに到着した。
プエンテ・ラ・レイナは「王妃の橋」という意味で、街の名のとおり美しい橋がある。この橋の風景を見たいというのが、私がスペイン巡礼に行きたいと思った最初の動機だった。
しかし念願叶ったという感動もなく、私は橋を早足に渡った。昼食が遅れていたので、ひどい空腹だったのである。
橋を渡って高台に登ったところにあるのが、この日泊まる公営アルベルゲ「アルベルゲ・サンティアゴ・アポストル(Albergue Santiago Apostle)」。Booking.comで予約したので、名称がはっきりわかる。
なおサリキエギのアルベルゲは、飛び込みだったため名称がわからない。比較的街の入り口に近いバルに併設で離れのほう、というのが特徴なのでよろしく(?)。
プエンテ・ラ・レイナのアルベルゲ・サンティアゴ・アポストルは、広々として清潔、日本の保養地にある合宿所のような趣きがあった。
広い部屋に、壁と一体化したタイプの二段ベッドが並んでいたが、二段ベッドひとつに簡易的な壁で仕切られた個室様の部屋もあり、私はその部屋に割り当てられていた。大部屋二段ベッド生活が基本のスペイン巡礼においては、降って湧いた個室ほどうれしいものはない。
チェックインを終えて、運搬サービスに頼んでいたザックを引きとり、私は昼食のために再びプエンテ・ラ・レイナの街に下りた。
街の入り口にあったケバブ屋さんでいただく。さほどおいしくはないが、とにかく腹は満たされた(最近食べた大久保のケバブ屋さんのほうが圧倒的に美味でしたね)。
満たされた腹で、プエンテ・ラ・レイナの街と橋を堪能する。
かわいい街……。ここはおおむねメインストリートだけの街、まさに巡礼路上の街といった趣きで、迷わないですむのがとても助かる(方向音痴)。
街を一周してアルベルゲに戻ると、またしても私は個室で即気絶した。ありがたいことに、このアルベルゲは夕食をつけることができたので、夕食の時間までこんこんと眠った。
足腰ダウンからの爆睡、歩いては食べて爆睡、をくりかえしているうちに、歩く身体がつくられていき、また同時に知らず知らずのうちに自分が回復していった気がする。
スペイン巡礼が終わってから、つくづく、歩くことと睡眠は人間にとって重要なんだと思った次第だ。
けれど、巡礼5日目のこの日は、まだまだ旅の序盤だった。
でも、徐々に心を楽しさが占めていくのを、うすうす感じていたと思う。
(スペイン巡礼2018回想記(10)に続きます)
(リアルタイムで更新していたインスタ)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?