【要約】「いきなりの仮面」を外すには、「高速ラリー」で勝負:セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する
なぜお客様は「いきなり」要求してくるのか?
突然の見積もり依頼の背景
営業現場では「今週中に見積もりをください」という突然の依頼が頻繁に発生する。
このような依頼の背景には、競合他社が既に商談を進めている可能性が高い。
競合他社は早い段階から情報を収集しており、当社が遅れを取っている状況が推測される。
このような状況において、対応する戦略は以下の2つである:
早期に見切りをつける。
可能性がある場合、最善を尽くして受注を目指す。
遅れをとったコンペでの注意点
「いきなり提案内容で勝負」をするのは効果的ではない。
お客様は既に競合の提案内容に慣れており、新たな提案を理解する時間が限られている。
また、ヒアリングや打ち合わせを重ねる提案は、お客様にとって手間が増えるため敬遠されがちである。
「いきなりの仮面」をつけたお客様の本音は「話が早くて頼りになる営業」に依頼したいというもの。
突然の依頼をしてくる背景には、社内承認の締め切りなど、時間的な制約が存在している。
そのため、まずは「話が早い営業」というポジションを獲得することが重要である。
スピードを差別化ポイントとする戦略
スピードの重要性
お客様が求めているのは迅速な対応である。
競合の提案に満足していない場合、「話が早い営業」と認識されることで評価が上がる可能性がある。
この評価が得られた後で「提案内容の勝負」に持ち込むのが有効な流れである。
戦術:「高速ラリー」
「話が早い」と評価されるための足がかりとして「高速ラリー」が提案される。
次章で、この戦術の具体的な内容が解説される。
「いきなりの仮面」を外す鍵:「高速ラリー」
高速ラリーとは?
「高速ラリー」は、「クイックレスポンス」と「密なやりとり」の組み合わせである。
お客様は意思決定の期限が近づくにつれ、多忙を極める。
その中で、素早い反応をする営業はお客様に安心感を与える。
ただし、クイックレスポンスとは単に早くメールを返すことではなく、疑問や要望を迅速に解決することも含む。
具体例:レスポンスの速さが評価に与える影響
競合他社が75点の提案をしている場合、後から出す65点の提案では不利である。
しかし、65点の提案が「早いレスポンス」とセットなら状況は変わる。
お客様に「この営業は対応が速い」と思わせることで、評価が上がる可能性がある。
例えば、迅速な対応を見たお客様から「この点を修正してもらえますか?」と宿題が出た場合、さらにスピードを意識して修正案を提出する。
これにより、提案の評価が65点から70点に上がり、競合の75点を上回る期待をお客様に与える。
「密なやりとり」を重ねることで最終的に80点以上の提案に到達すれば、受注の可能性が高まる。
惨敗案件でも印象づけは重要
競合に大きくリードされている案件でも、「高速ラリー」を活用して印象づけを行うことは有効である。
「早いレスポンス+密なやりとり」を実践する営業として認識されれば、他の案件での提案機会が増える可能性がある。
特に予算規模が大きいお客様の場合、長期的な視点で感触を探る戦略が有効である。
高速ラリーの重要性
「いきなりの仮面」をつけたお客様の本音は「話が早くて頼れる営業に依頼したい」というものである。
高速ラリーを通じてこの仮面を外し、お客様との関係を深めることが可能である。
競合他社が存在する案件では、スピードを武器にする「高速ラリー」が非常に効果的である。
「レスポンスの基準」としての時間感覚
お客様の求める「レスポンス」のスピード
お客様が営業に期待する「レスポンス」の速さを調査した結果、以下の事実が明らかになった。
最初の返事を期待する時間
1時間未満:21.2%
1時間以上4時間未満:24.2%
4時間以上1日未満:25.7%
この3つを合計すると、7割以上のお客様が1日未満での返信を期待している。
疑問や課題の解決に求める時間
2日未満で解決を希望するお客様が全体の7割以上。
高いハードルが生む差別化のチャンス
お客様が求める水準(返信1日未満、解決2日未満)は高く、達成は容易ではない。
例えば、社内調整や上司承認が必要な場合、対応には時間がかかる。
しかし、この水準に応えられる営業は競合と大きな差別化が可能である。
特に、競合に先行されている案件では、「スピードによる差別化」が重要な突破口となる。
クイックレスポンスの重要性
お客様の疑問や課題が残っている間は、提案内容よりも迅速な対応が評価を高める要因となる。
「返信1日、解決2日」という基準を意識しつつ対応を進めることが、競合に対する優位性を築く鍵となる。
「返信1日、解決2日」の背景にあるお客様の事情
お客様の厳しい時間感覚の理由
お客様が「返信1日未満」「解決2日未満」を求める背景には、社内検討スケジュールのプレッシャーが存在する。
たとえば、お客様担当者が「早く送ってほしい」と求める場合、その背後には上司からの「今週中に●●の件を報告せよ」という指示がある可能性が高い。
営業は、目の前のお客様だけでなく、裏にいる社内関係者の業務の流れをスムーズにする視点を持つ必要がある。
チームでレスポンスを効率化する取り組み
個人の努力だけでは限界がある
「返信1日未満」「解決2日未満」を営業個人の努力で達成し続けるのは困難である。
特に若手営業や経験の浅いメンバーは対応が遅れることがある。
この課題を解決するには、チーム全体で対応スピードを向上させる仕組みが必要。
情報の集約と共有
チーム単位での取り組みとして「お役立ち情報集」を作成し、以下のような仕組みを整備する:
お客様からよく質問される内容や課題を解決する情報を集約。
情報を随時更新し、誰でも使いやすいツールとして活用。
これにより、どの営業も迅速かつ効果的なレスポンスが可能となる。
コミュニケーションルートの整備
営業が困ったときに同僚に気軽に助けを求められる環境を作ることも重要。
例:
「ヘルプ」専用チャットを設置。
営業チーム全体で知恵を共有し合える仕組みを構築。
組織全体で対応スピードを上げる
迅速な対応を可能にする営業組織の特徴:
定期的な勉強会を開催。
支援チームを設置し、営業をバックアップ。
情報共有と協力を促進する風土を醸成。
対応は「チーム戦」
「いきなりの仮面」をかぶったお客様は容赦なくスピード対応を求める。
営業個人にすべてを任せるのではなく、組織全体でチーム戦として取り組むことが重要。
これにより、営業の負担を軽減しつつ、お客様からの信頼を得ることが可能となる。
コンタクトの頻度:「週1回以上」を維持する重要性
お客様が望むやりとりの頻度
調査結果によれば、お客様との信頼関係を築くには、以下の頻度が必要である:
商談の頻度
「週に1回以上」の商談が50%以上。
「週に1回程度」が25.7%、「週に2~3回程度」が20.7%。
電話・メール・チャット・SNSなどを通したやりとりの頻度
「週に1回以上」のやりとりが60%以上。
「週に1回程度」が21.1%、「週に2~3回程度」が26.8%。
「週1回以上」のやりとりが必要な理由
お客様が「いきなりの仮面」をつける背景には、迅速で密なコミュニケーションを求める心理がある。
週1回以上のやりとりを保つことで、以下が期待できる:
お客様との接点を増やし、信頼関係を強化。
課題や要望を事前に把握し、迅速な対応を実現。
「週1回」を下回る危険性
やりとりが「週1回」を下回ると、以下のリスクが高まる:
お客様との関係が希薄化し、競合他社に流れる可能性がある。
トラブル発生時に迅速な対応が難しくなる。
実践のポイント
定期的な連絡をスケジュール化し、「週1回以上」をキープ。
メールやチャットを活用し、こまめに状況確認や情報提供を行う。
お客様とのやりとりは「頻度」が信頼関係構築の要である。
特に「週1回以上」の接触を維持することで、継続的な信頼と高評価を得られる可能性が高まる。
お客様の「密なやりとり」を求める背景
「ほぼ毎日」のやりとりを求める理由
調査結果では、信頼関係を築けた営業担当者とのやりとり頻度について「ほぼ毎日」と答えたお客様が14.0%存在する。
この結果は、お客様が特定の営業に対して高頻度のやりとりを求めるケースがあることを示している。
お客様社内の複雑なコミュニケーション構造
お客様の社内では、以下のような多層的なコミュニケーションが行われている:
経営陣からの指示
社長や役員が部門トップに検討指示を出す。部門トップから現場への指示
部門トップが現場に指示を出し、情報収集や他部署確認が始まる。現場での役割分担と報告責任
現場では役割分担がなされ、頻繁な報告義務が発生。
このような連携プレーにおいて、営業とのやりとりはお客様の業務全体の一部を担うものである。
やりとりが希薄になるリスク
営業からの連絡が少ない場合、以下のリスクが生じる:
お客様の不安感
営業からの情報提供が少ないと、お客様は対応の遅れを懸念する。信頼関係の希薄化
お客様が「この営業は迅速に対応できない」と感じる可能性がある。
「ハイパフォーマー営業のやりとり」を共有する重要性
営業のやりとり頻度に対する意識の差
多くの営業は「お客様から連絡が来たら返す」という受動的な姿勢にとどまっている。
その結果、状況の変化に対応できず、後手に回ることがある。
特に若手営業は、どれほどの頻度で連絡を取れば十分かを具体的に把握できていない。
ハイパフォーマーの事例を共有する
マネジャーに推奨される取り組みとして、以下が挙げられる:
ハイパフォーマーのやりとり頻度を明示
優秀な営業がどのくらいの頻度でお客様と連絡を取っているかを共有する。ツールを活用した事例の可視化
スレッド形式のツールを活用し、具体的なやりとりを事例として示す。若手営業の学習機会の提供
ハイパフォーマーの実践例を見せることで、適切な頻度や先手を打つコミュニケーションの重要性を学べる環境を整える。
密なやりとりの重要性
ハイパフォーマーの営業が実践していること:
単にお客様からの疑問や課題に対応するだけではなく、先手を打ったコミュニケーションを行っている。
これにより、お客様との信頼関係を構築し、競合との差別化を実現している。
会社全体での共有が鍵
お客様との密なやりとりの重要性を社内で共有することで、以下の効果が期待できる:
若手営業がやりとりの適切な頻度を理解。
チーム全体で一貫した高品質な対応を提供。
営業全体のスキル向上と結果の改善。
会社としてやりとりの基準を共有し、全員で実践することが、お客様対応力を高める鍵となる。
初回訪問から5営業日以内で「仮提案」を提出する重要性
お客様が望む提案スピード
調査結果によれば、お客様の80%以上が「5営業日以内」での最初の提案を希望している。
具体的な回答割合:
1営業日未満:7.7%
1~2営業日:36.1%
3~5営業日:40.0%
この結果から、5営業日を超える提案提出は「遅い」と評価される可能性が高いことが分かる。
「5営業日以内」の基準の具体例
例えば、火曜日に初回訪問を行った場合:
翌週水曜日に提案を提出すると6営業日となり、お客様の期待を下回る。
このような場合、お客様に「遅い」と判断され、他社に流れるリスクがある。
「仮提案」でスピード感をアピール
お客様は「早い対応」を重視しているため、以下の対応が効果的:
初回訪問から5営業日以内に仮提案を提出し、スピード感を示す。
仮提案には主要なポイントを簡潔にまとめ、詳細はその後の調整で対応する。
注意点:スピードと内容のバランス
提案を急ぐあまり、内容が不十分であれば評価を下げるリスクがある。
仮提案は「スピード感」を伝えつつ、後続の詳細提案でお客様の期待を満たす流れを意識する。
「いきなりの仮面」をかぶったお客様への対応
「話が早い営業にお願いしたい」というお客様の本音に応えるためには、以下を徹底する:
提案スピードを意識し、5営業日以内に仮提案を提出。
提出前に最低限の精度を担保し、信頼感を維持。
スピード感を重視した提案は、お客様との信頼構築に大きく貢献する。
仮提案を活用してスピード対応を実現する
仮提案が必要な背景
お客様の80%以上が「初回訪問から5営業日以内」の提案を望んでいる。
短期間で精度の高い提案を作るのは難しく、無理をすると営業側に過度な負担がかかる。
このため、正式な提案が難しい場合は「仮提案」を活用し、スピード感を重視する。
仮提案に含めるべき3つの要素
1. 課題への対応
お客様の悩みや課題をキーワードで整理し、自社の対応方針を示す。
お客様が自身の課題を完全に把握していない場合でも、ヒアリング内容を基に整理した資料を提示することで信頼を得られる。
具体例: 「お伺いした課題は以下の通りです:
商品在庫の効率的な管理
顧客満足度の向上 当社はこれに対し、以下の対応を検討しています。」
2. 費用感
お客様は早めに予算感を把握したいと考えている。
詳細な見積もりが難しい場合でも、概算で幅を持たせた金額を提示する。
例:「おおよそ300万円~500万円の範囲です。」
注意点:
金額に幅を持たせ、既成事実化を防ぐ。
費用対効果を説明し、他社との競争優位性を示す。
上限・下限での効果の違いを記載しておくと親切。
3. 今後の進め方
お客様が取り組むべき論点や次のステップを明確に提示する。
具体的な段取りやスケジュール感を示すことで「話の早さ」をアピール。
具体例: 「次のステップとして、以下をご提案いたします:
再ヒアリング(●月●日まで)
詳細な課題の整理と解決策の提案(●月●日まで)
最終提案書の提出(●月●日まで)」
仮提案を成功させるポイント
スピード重視:初回訪問から5営業日以内に提出する。
簡潔さと明確さ:詳細な提案は後回しにし、概要に集中する。
フォロー計画の提示:仮提案の後の進め方も明確にしておく。
仮提案を効果的に活用することで、お客様に「話が早くて頼りになる」という印象を与え、信頼を構築することができる。
「スピーディーな仮提案」を組織ぐるみで実現する
スピードの重要性
「いきなりの仮面」をつけたお客様にとって、提案の「内容」よりも「スピード」が重視される。
しかし、営業個人に任せていると、多忙な中で対応が後回しになりがちである。
組織的な取り組みの例
1. ルール化
初回訪問から2日以内に仮提案を提出するルールを設ける。
例:当社では「接戦商談」に限り、2日以内の仮提案提出を義務付けている。
2. 案件の優先順位付け
案件を以下の3つに分類し、リソース配分を最適化する:
楽勝商談:営業努力に関係なく受注が見込まれる案件。
惨敗商談:営業努力に関係なく失注が避けられない案件。
接戦商談:営業の工夫次第で結果が変わる案件(リソースを重点的に投入)。
3. 仕組み化とツールの活用
仮提案フォーマットの整備:迅速に作成できるテンプレートを用意。
簡易見積もりツール:概算費用を即座に提示できるツールを活用。
メリハリをつけた運用の効果
接戦商談に注力することで、結果を左右する案件への効果的なリソース配分が可能。
楽勝・惨敗商談には最小限の対応とし、稼働を適正化。
組織でスピード対応を進めるポイント
助け合いの文化の醸成
「スピード対応」を組織の目標とし、メンバー同士でサポートし合う風土を作る。
ルールと柔軟性のバランス
すべての案件でスピード対応を求めるのではなく、条件を明確化する(例:接戦商談は2日以内)。
仕組みとツールの導入
仮提案や見積もりのプロセスを標準化し、スピードアップを実現。
組織的アプローチのメリット
営業個人の負担を軽減し、全体の稼働を最適化。
「スピーディーな仮提案」を通じてお客様からの信頼を獲得し、競争優位性を高める。
営業対応のスピードは、組織全体での取り組みによって最大化される。
「10分電話商談」で高速ラリーを実現する
電話活用の重要性
「いきなりの仮面」をつけたお客様とのやりとりでは、スピードが重視される。
対面商談だけでやりとりを完結しようとすると限界があるため、電話の活用が選択肢として有効。
営業が抱える「電話NG」への誤解
営業が電話を敬遠する理由:
「お客様に嫌がられるのではないか」
「電話はつながらない」という思い込み
しかし、実際には次のようなケースで電話は歓迎される:
商談時間を10分の電話に短縮して要点を済ませる。
翌日に回答するなど、迅速な対応手段として活用する。
お客様の電話に対する意識
調査結果から分かった電話活用の実態:
電話を完全に拒絶するお客様:
発注確率が高くない営業との場合:約30%
発注を高い確率で検討している営業との場合:約5%
電話を前向きに活用したいお客様:
「電話で簡単なディスカッションをしたい」:
発注確率が高くない営業:10%程度
発注を高い確率で検討している営業:20%以上
このデータから、お客様は営業に対する信頼度が高いほど電話を有効手段として認識することが分かる。
電話を活用するメリット
短時間で要点を確認できる:お客様の時間を節約しつつ効率的に情報を共有。
関係構築が進む:信頼度が高い営業には、お客様が電話を好む傾向がある。
スピード対応をアピールできる:迅速なやりとりで「話が早い営業」という印象を強化。
「10分電話商談」を成功させる4つのステップ
概要
「10分電話商談」は、短時間で価値あるコミュニケーションを実現し、お客様に「話が早い営業」という印象を与える効果的な手法である。
以下の4ステップを活用することで、限られた時間を最大限に活用できる。
ステップ1:アポイントを取る
突然の電話ではなく、事前に時間を確保するアポイントを取る。
お客様が落ち着いて話せる時間を選び、できるだけパソコンや資料を見ながら話せる状態を整える。
例:「10分だけお時間をいただき、簡単なご提案内容をお話しさせていただけませんか?」
ステップ2:資料を共有し準備する
必要に応じて事前に資料を共有し、電話での会話をスムーズに進める。
ビデオ通話を活用し、画面共有機能を使うとさらに効果的。
ポイント:
お客様が資料を確認しながら話せる環境を整える。
資料はシンプルで、会話を補完する程度の内容にする。
ステップ3:悩みや課題を整理する
課題解決質問を用いてお客様の悩みや課題を明確化する。
例:「現在お困りの点を具体的に教えていただけますか?」
例:「この中で最も優先度が高い項目はどれでしょうか?」
お客様が挙げたキーワードに対して、抜け漏れがないか確認しながら会話を進める。
ステップ4:優先順位を確認し次のアクションを決める
課題を整理した後、優先順位を確認し、次のステップを提案する。
例:
「次回は詳細なご提案を用意しますので、来週再度お時間をいただけますか?」
「本日いただいた内容を基に、具体的な解決案をまとめてご共有します。」
成功のポイント
時間は10分間に厳守し、簡潔で要点を押さえた会話を心がける。
資料や画面共有を活用し、視覚的にも分かりやすいコミュニケーションを目指す。
お客様の課題を深掘りし、次のステップに進むための基盤を整える。
「10分」という短時間を効果的に活用することで、お客様との信頼関係を構築しつつ、次のアクションへと繋げる強力なツールとなる。
「お役立ちメール」で高速ラリーを完成させる
商談後のフォローが鍵
「10分電話商談」で得たお客様の課題や要望に対し、商談後すぐに「お役立ちメール」を送ることで、迅速かつきめ細やかな対応を印象づける。
「お役立ちメール」に含めるべき内容
1. 議事録的な要点整理
電話で話した内容や宿題を簡潔にまとめ、箇条書きで示す。
例:
ご指摘いただいた課題Aに対する暫定案。
次回確認予定の論点。
本日ご説明した内容の補足資料。
2. お役立ち情報の提供
お客様の課題解決に役立つ情報や追加の資料を添付。
電話中の議論に基づいた具体的なアクションを提案。
3. 次のステップを明示
次回のやりとりや提案の予定を記載し、スムーズな進行を促す。
例:「次回は●月●日に改めて詳細案をご提示いたします。」
メール送付のタイミング
「10分電話商談」の直後に準備時間を確保し、即座にメールを送る。
これにより、レスポンスの速さをお客様に強く印象づけることができる。
成果事例:KPIとしての「10分電話商談」
ある企業では、「10分電話商談」をKPIに設定。
高パフォーマンスの営業は電話を商談と同等に活用し、お客様との接点を増やしていた。
商談後の「お役立ちメール」で迅速に宿題をフォローし、競合からの逆転受注を実現。
ハイブリッド営業で接点を最大化する
複数のチャネルを柔軟に活用
従来の「主流3チャネル」(対面商談、電話、Eメール)に加え、オンライン商談が顧客との接点を増やす新しい手段として定着している。
営業は、目的や状況に応じて適切なチャネルを選択する柔軟性が求められる。
コミュニケーション手段の利用状況
上位4つの主要手段
対面商談
メインとして最も重宝:42.5%
メインとして2~3番目:29.9%
サブとしてたまに利用:15.8%
**合計:88.2%**が何らかの形で利用。
Eメール
メインとして最も重宝:20.3%
メインとして2~3番目:40.1%
サブとしてたまに利用:26.2%
**合計:86.6%**が利用。
電話
メインとして最も重宝:18.4%
メインとして2~3番目:39.2%
サブとしてたまに利用:29.9%
**合計:87.5%**が利用。
オンライン商談
メインとして最も重宝:13.2%
メインとして2~3番目:26.3%
サブとしてたまに利用:24.7%
**合計:64.2%**が利用。
中位~下位の手段
立ち話程度の会話
メイン利用は少ないが、サブ利用として38.4%が活用。
デジタルサービス
LINE、SMS、Facebookメッセンジャー、Slack、Chatworkなどは限定的だが、一定の浸透が見られる。
オンライン商談の成長
コロナ禍を経て、オンライン商談は顧客との接点を増やす有力手段として機能。
ZoomやTeamsなどを使った商談は、電話に次ぐ利用頻度を示している。
営業スタイルの進化:ハイブリッド営業
主流チャネルを基軸にオンラインを加える
対面、電話、Eメールを基本に、オンライン商談を組み合わせて接点を増やす。
状況に応じたチャネル選択
顧客の都合やコミュニケーションの目的に応じて最適な手段を活用。
例:短い確認事項は電話、詳細な説明はオンライン商談。
デジタルツールの導入
LINEやSNSなどの手段は、若い顧客層や特定の業界で有効。
場面・用途に合わせた接点の最適化
ハイブリッド営業の重要性
お客様の「いきなりの仮面」に応えるスピード感を実現するには、対面商談だけに頼らず、複数のチャネルを組み合わせる必要がある。
コロナ禍以降、「対面の代替」としてのオンライン商談ではなく、目的に応じた使い分けが主流になった。
ハイブリッド営業は、生産性を向上させつつ、お客様との接点を最大化する手法である。
チャネルごとの特徴と使い分け
対面商談
効果的な場面:
お客様との関係を深める場合。
微妙なニュアンスや空気感を伝えたい場面。
注意点:
移動や商談の時間が長くなりやすく、営業の活動時間に限界が生じる。
オンライン商談
効果的な場面:
遠隔地のお客様との接点を増やしたい場合。
短時間で要点を確認する打ち合わせ。
メリット:
移動時間を削減し、営業活動の効率を向上。
10分電話商談
効果的な場面:
短時間で課題や要望の確認を行いたい場合。
お客様のスケジュールに柔軟に対応できる手段として活用。
Eメール・デジタルツール
効果的な場面:
資料の送付や補足情報の提供。
議事録や要約を共有してフォローアップを行う。
ツール例:
チャットツール(Slack、Chatwork)
メッセンジャーアプリ(LINE、SMS、LinkedIn)
営業の生産性向上の実例
当社では、2015年からオンライン商談を積極的に活用し、対面商談と並行して営業活動を行う仕組みを構築。
2020年以降、チャットツールやデジタルサービスも加え、ハイブリッド営業をさらに強化。
この取り組みにより、コロナ禍でも業績を維持し、1人当たりの生産性を向上。
「ラリーの往復」でお客様の考えを整理する
お客様の再提案に対する期待
調査結果によると、お客様の約8割が最初の提案を基にした再提案を2~4回目で完結することを望んでいる。
具体的な回答割合:
最初の提案1回で完結:11.3%
2回目の再提案で完結:44.9%
3~4回目の再提案で完結:35.0%
これにより、多くのお客様は提案内容の修正を期待しつつも、過剰な回数の再提案を求めていないことが分かる。
高速ラリーの必要性
お客様は「話が早い営業」に価値を感じる一方で、1回で提案が完結するとは期待していない。
むしろ、高速ラリーを通じて以下を重視している:
お客様の考えの整理:
提案とフィードバックを繰り返すことで、お客様自身の課題や解決策を明確化。
適切な修正:
最初の提案を基に、具体的で現実的な解決策をブラッシュアップ。
効率的なプロセス:
再提案の回数を2~4回程度に抑え、迅速かつ的確に進める。
実践のポイント:ラリーを円滑に進める方法
1. 最初の提案を準備
お客様の課題をしっかり整理し、初回提案に反映。
例:「お伺いした内容を基に、このような方針をご提案しますが、いかがでしょうか?」
2. フィードバックを受け取り修正
提案に対するお客様の意見をヒアリングし、具体的な修正点を明確化。
例:「いただいたフィードバックに基づき、次回までに以下を改善いたします。」
3. 優先順位の確認
再提案時に、お客様の要望の優先度を再確認。
例:「最優先の課題はこちらで間違いありませんか?」
4. 再提案を繰り返し、着地点を目指す
2~4回の提案修正で完結できるよう、都度進捗を共有。
例:「本日いただいたご意見を反映し、次回が最終案となる見込みです。」
お客様の「頭の中」を整理する高速ラリーの重要性
再提案の心理
お客様が再提案を求める理由は以下の2つに分類できる:
提案の精度不足:営業の初期提案が不十分で、より具体的なブラッシュアップを期待。
お客様自身の考えが整理されていない:優れた提案を受けても、すぐにはニーズや課題を把握できない。
再提案の本質
再提案は単なる「練り直し」ではなく、お客様の頭の中を一緒に整理していくプロセスである。
仮提案の役割
仮提案は、お客様が自身のニーズや課題を言語化し、明確にするための出発点となる。
例:
仮提案:「お伺いした内容を基に以下の提案を作成しました。いかがでしょうか?」
お客様の反応:「この部分は良いが、こちらは少し違う。改めて要望を明確にします。」
高速ラリーを活用した整理のプロセス
1. 仮提案を通じてニーズを引き出す
初期提案を迅速に出すことで、「話が早い営業」というポジティブな印象を与える。
仮提案により、お客様は「何が欲しいか」「何に困っているか」を考え始める。
2. リアクションを受けて修正提案を行う
仮提案へのフィードバックを受け、内容をブラッシュアップ。
このプロセスを通じて、お客様のニーズがさらに具体化。
3. 繰り返しで課題と解決策を明確化
高速ラリーを通じて、提案とフィードバックを数回繰り返す。
再提案の過程で、お客様が抱える課題と解決策がクリアになる。
成功の鍵
スピードと柔軟性
仮提案を迅速に行い、リアクションを受けた修正提案もスピーディーに対応。
お客様の声に耳を傾ける
仮提案を基に、ニーズや要望をお客様自身が深掘りできるようサポート。
競合への逆転の可能性を引き出す
「話が早い営業」という印象を確立すれば、競合が先行している状況でも勝機が生まれる。
お客様の「期待値」を念頭に置いてラリーする
ラリーの目的:お客様の考えを整理し、期待値を管理する
お客様は、最初からニーズや課題が明確であるとは限らない。
仮提案とフィードバックを通じて、お客様の期待を明確化しながら共に提案を仕上げていくことが重要。
仮提案を出すタイミングと意義
初回訪問から5営業日以内に仮提案を提出する。
スピーディーな仮提案で「話が早い営業」という印象を与え、お客様との信頼関係を築く。
仮提案を「最終提案」と誤解されないように注意する。
遅い仮提案はお客様の期待値を必要以上に高め、「これで終わりなのか」と思われるリスクがある。
仮提案は「一緒に最終化していくための出発点」と伝える。
二人三脚の営業スタイルを実現する
1. 仮提案の段階で期待値を調整
提案を作り上げていくプロセスをお客様に伝える。
例:「こちらが最初の案です。お客様とご一緒に修正を重ね、最良の形に仕上げていきたいと考えています。」
2. ラリーの進行を共有
提案の進め方を事前に説明し、次のステップを明示する。
例:「次回はいただいたご意見を反映した案をお持ちします。その後さらに細部を詰めていきましょう。」
3. 共創マインドの醸成
お客様に「ジャッジする立場」ではなく「ともに作る関係」を意識してもらう。
例:「私たちはパートナーとして、一緒にベストな解決策を作り上げたいと考えています。」
第5章 まとめ
「いきなりの仮面」をつけたお客様は、突然「今週中に見積もりをください」といった短納期の依頼をしてくることがあります。これは競合他社が先行しているコンペの状況である可能性が高く、営業としてはその状況を想定して備える必要があります。
お客様の本音は、「話が早くて頼りになる営業にお願いしたい」というものです。本当に質の高い提案を求めている場合には、十分な時間を設けるはずです。したがって、お客様の優先順位は「話の早さ」にあり、その期待に応えることが信頼構築の第一歩です。
「いきなりの仮面」を外すためのポイント
1. 高速ラリーでポジションを獲得
クイックレスポンスと密なやりとりでスピードを差別化。
「話が早い営業」としての信頼を得てから、提案内容を高める。
2. 「いきなり提案内容で勝負」を避ける
情報不足の状態で質を重視するよりも、まずは迅速な対応で信頼を獲得。
競合が先行している場合でも、スピード感で逆転の可能性を広げる。
3. 電話NGの思い込みを捨てる
忙しいお客様でも、スピーディーな電話対応はむしろ歓迎される。
「10分電話商談」を活用し、効率よく疑問や要望を解決。
「いきなりの仮面」を外すためのキーワード
返信1日、解決2日:迅速なレスポンスでお客様を満足させる。
週1回以上のコンタクト:密なやりとりで信頼を維持。
初回訪問から5日以内の仮提案:スピード勝負でポジションを確保。
10分電話商談:電話を打ち合わせのように活用。
ハイブリッド営業:対面、オンライン、電話を状況に応じて使い分け。
ラリーの往復:提案をブラッシュアップしながらお客様の考えを整理。