『ま夏。八月二十八日。ノンアルで乾杯』
一応、アルコールは断っている。とりたてて、アルコールは控えるような指示も頂戴していない。と思う。ノンアルも悪くない。喉の「しゅわしゅわ」があれば十分だ。
午前一時にふと目覚めて、ノンアルでキメている。なにが、どのようにキマっているのかわからないが。キマっている。確実に、私の喉はキマっている。じめっとした空気に「しゅわしゅわ」がキマッた。その実感はある。
手と足の指先が若干しびれてきている。いままでは、このしびれの症状は化学療法センターで色々点滴した当日の終わりごろから発症していた。その、帰りがけに、口もしびれていることを忘れて、プロレスラーのカブキ選手くらいお茶のしぶきを夕空に飛ばしたこともある。道端で四つん這いになるくらいむせた。いまのところ口と喉にしびれはない。そのしびれは数日つづく。
時間差でのしびれの副作用は、はじめてだ。これがずっと続くと金属製のドアノブや冷水に触るにも支障をきたす。身体に電撃がはしる。残念ながら私にはアース線がついてない。二、三日でしびれが沈静化してくれればいいのだが。ま冬が心配だ。
ヒマラヤほどの消しゴムが欲しい。千の発疹が私を襲う。
今回の副作用は発疹で間違いないだろう。今のところ、耐えられないほどのかゆみはない。ステロイドを塗りたくってギトギトに脂ぎるのもまた不快だ
。私は梅雨時期と秋雨時期に体調不良になりやすい。じめじめした空気と低気圧で肌がべっとりする。私の不快指数が爆上がりする。そうすると、蕁麻疹がでやすくなる。もう、抗がん剤治療の副作用なのか、アレルギー性の蕁麻疹なのかわからなくなる。そんな朝だ。
首筋から下の上半身は赤いぽつぽつでいっぱいだ。
涼しくなれば、消え失せるかも知れない。私は、この天候では何をしても駄目なことを五十年の経験から知っている。ヒマラヤほどの消しゴムがないかぎり。
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