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ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第19話:小説家、ふたたびバイト先に凸される】
最初のときは元バンドメンバーのSから予告があったので心の準備もできたが、2度目は完全に不意打ちだったので、卒倒しそうなほど驚いた。 ひょっこり入店してきたマユミは、まず雑誌コーナーに向かい、そこに僕の本が置いていないとみるや、レジカウンターにやってきた。しかしレジ前にも、僕の本は置いていなかった。 入荷した50冊を、その時点ですでに売り切っていたのだ。僕が勤めていたのはありえないほどフレンドリーな接客をするコンビニで、オーナー一家が常連さんに営業しまくってくれたおかげだった。
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第18話:小説家、バイト先に凸される】
バンドをやめて小説家を目指して投稿生活に突入した僕は、3年ほどで借金を完済し、2010年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞、翌2011年5月にデビュー作が刊行された。もちろんその間それなりに山あり谷あり(山はないか、谷ばかりだ)だったけど、この連載の主題はあくまで「ヤバ女話」なので、そのへんは機会があればまたあらためて。 デビュー作が発売された時点で、僕はまだコンビニの夜勤バイトを続けていた。オーナーは僕の小説家デビューをとても喜んでくれ、本部と交渉して僕の本を店
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第17話:ライブハウス凸未遂事件】
マユミと別れてすぐに解放感でいっぱいになったかというと、実はそうでもない。 それまで時間的にも行動も交友も極端に制限され、つねにマユミの顔色をうかがいながら生活していた。それなのに急に制限がなくなり、自由を持て余すような感覚に陥ったのだ。過度に抑圧される環境に慣れすぎてしまっていたらしい。自由を不自由に感じるようなあの奇妙な心境を体験できたのは、小説家としてある意味貴重だったかもしれない。 僕は熱い風呂に身体を沈めるように、久しぶりに手に入れた自由にゆっくり身体を慣らしていっ
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第13話:まやかしの希望と首吊り自殺未遂】
マユミが無職になってしばらく経ったころ、僕は彼女を婦人科に連れて行った。 きっかけがなんだったのか、はっきりと覚えていない。テレビ番組だったか、なにかの本で読んだか、あるいは誰かから話を聞いたか、マユミ自身が言い出したかもしれない。そのへんは曖昧だ。 僕はマユミが子宮内膜症かもしれないと疑っていた。 子宮内膜症が酷くなると、やる気が出ない、攻撃的になる、苛々するなどの気分障害が高頻度で表れるらしいのだ。パーソナリティ障害についての知識はなく、うつ病でこんなに激烈な症状が出るの
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第12話:ふたたび悪魔と暮らし始める】
アパートに居候することになったマユミに、僕は条件を出した。 家に金を入れてくれる必要はない。その代わり、ちゃんと働いてお金を貯め、引っ越し費用が出来たらすぐに出ていくこと。 当時の東京の城南エリアでのワンルームアパートは、7万円ぐらいが賃料の相場だった。もっと安い部屋もあるにはあるが(僕のアパートは家賃5万8,000円)、女性の一人暮らしであまり安すぎるのもよくない。7万円が現実的なところだろう。 敷金礼金仲介手数料に前家賃を加え、初期費用は家賃の6か月分が必要になる。という
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第11話:母親に腕の骨を折られる】
1年ぶりに自宅アパートに帰った僕は、急ピッチで生活を立て直し始めた。 以前に働いていたのとは別のコンビニ(今度はローソン)で夜勤のアルバイトを始め、バンドに新メンバーを加入させた。インターネットのメンバー募集掲示板で見つけたギタリストとドラマーは2人ともライブ経験豊富な猛者で、ギタリストにはメジャー経験が、ドラマーには某大物シンガーのバックバンドとしてツアー経験があった。人間的にも馬が合ったし、バンドの演奏レベルはキープできそうだった。 なにより、元ヤ○ザもマユミも介入してこ
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第10話:なお、動機は別れ話のもつれとみられ】
その日は、なんとしてもマユミと別れると固い決意を持って話し合いに臨んだ。 いつものように自死をほのめかすかもしれないし、包丁を持ち出すかもしれない。僕の家族を傷つけると脅すかもしれない。それでも、なにをされても退くつもりはなかった。マユミから離れ、自分の人生を取り戻すつもりだった。 予想通り、マユミは別れを拒否し、怒ったり喚いたり泣きじゃくったりと、さまざまな感情表現を駆使して僕を引き留めようとした。 いつもなら根負けするところだが、ぜったいに折れるつもりはない。 薬を大量
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第9話:オーバードーズ、やってみた♪】
親しい作家の仲間うちでは鉄板ネタの笑い話として消費している『ヤバ女話』だが、今回のエピソードはさすがに笑い話にするのが難しいので、これまで一人の友人にしか話したことがない。 ほぼ初出、ほぼ本邦初公開、だけど僕にとってはのちの人生観に影響を及ぼすほど重要な経験だ。文字にするのは僕にとっても少し勇気が必要だが、僕の経験談が救いになる人がいると信じて、書くことにする。 その日も僕は、マユミに同行してパチンコ店に入った。 前述した通り、僕はギャンブルが好きではない。 ギャンブル運も
ヤバい女にタゲられて人生をめちゃくちゃにされそうになった結果、なぜか小説家になった話【第7話:ヤバい女 vs 元ヤ◯ザ】
話が前後して恐縮だが、今回はバンドの話。 マユミに苦しめられながらも、活動は続けていた。 ギタリストMくんを追い出した後、加入したギタリストはほどなく脱退した。 そしてドラマーTも脱退し、僕とベーシストSのみとなったバンドだったが、後任はすぐに決まった。 折良くギタリストとドラマーの二人組がセットで加入できるバンドを探していると、友人のバンドマンが紹介してくれたのだ。 マユミの虚言に躍らされた結果の不本意なメンバーチェンジといえ、後任のギタリストとドラマーは非常に腕の良いプレ