メガネ 朝帰り
朝が来た。
老人がベッドから頭を上げ、枕もとのメガネを探すが見当たらない。
「また朝帰りか」
バタバタ
「ごめんなさい」
メガネが駆け込んできた。
「慌てるでない、お前が壊れたら、わしは仕事ができなくなる」
そう言い、老人はメガネを手に取った。
「さあ、仕事じゃ」
バタバタ
翌朝、またメガネがあわてて老人の部屋に飛び込んできた。
「ごめんなさい、遅くなりました」
この日、老人は既に起きてメガネを待っていた。
「もうよい、私は引退することに決めた。老眼で地上がよく見えない」
ついにお払い箱かと、メガネは肩を落とす。
「わしの後継者は決めてある。メガネよ、今日からお前がわしの仕事を継ぐのじゃ。そして地球の人々を優しく見守るのだ。知っておるよ、毎晩ここを抜け出して、人生に迷った人や、道を踏み外した人の新しい方向性がしっかり見えるよう、手助けをしていたのじゃろう。私の後を継ぐのはメガネ、お前しかおらん」
そう微笑みながら、メガネを見る神様だった。
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文字数 409
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今週のお題 「メガネ」 X 「朝帰り」で描きました。
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