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DAY 149 子どもと一緒にNZ 2024

(2024年の一年間、高校生の娘と小学生の息子、そして母である私の3人で「ニュージーランド暮らし」を決行します。このチャレンジの準備から現地での暮らし、帰国までの事実、そして気持ちをココに記録しておこうと思います。)

食べさせてもらえる

私、実は恵まれているのです。

日本に生まれていれば誰もがそうかもしれないけれど、私は特に「食べさせてもらえる」という星のもとに生まれたようです。

高校生の時、クラスで一番遠くから通学していたため、朝は5時50分に家を出ていました。だから母のお弁当はなし。いつも購買で買っていました。
それを不憫に思った友達のお母さんが、私に時々お弁当を作ってくれました!

社会人になると、会社帰りに奢ってくれる人の多いこと。

そしてお嫁に行くときは、料理センスのない私に友達が「セーコでも作れる簡単レシピ」を作って持たせてくれました。

夫はいつも夕飯を作ってくれたし、考えてみたら友達は料理上手な人ばかり。

いつも「セーコ、これ食べなよ」「セーコ、これあげるからおうちで食べなよ」と、食べ物を恵んでくれるという出来事が私の記憶の中にたっぷりと溢れています。

食べ物に興味がない反面、誰かが私のために作ってくれる、誰かが私に食べさせてくれる、という幸せな思い込みが心に根付いていて、相変わらず料理のセンスがない今の私、という人間が出来上がっているのだと思います。

一生食べ物には困らない、はず。

おごってくれた!

今日はコリアンセンターで開催されている週一回の英語レッスンの日。韓国人のおばさまと一緒にキウイ(ニュージーランド人)の先生から英語を習っています。

初級のクラスと中級のクラス、ぶっ通しで受けていて、かなり脳が疲れます。でも子供が病気にならない限り、絶対に欠席はしないと決めました。

まだまだ知らないことばかり。あーあ、いつになったら上達するんだろう。

と思いながらの帰り道。

ちょっと時間があったので、ショッピングセンター内のスーパーに立ち寄ることにしました。(ブラブラも兼ねて)

そこで、カフェに寄るつもりはなかったのだけど、美味しそうなメニューが目に入ったので、じっくり覗いていました。

いくらくらいするの?
今度娘と来ようかな、いや、内緒で来ようかな・・・と考えていたら、

知らないオジサンが話しかけてきました。

どれが欲しいの?

え、いえいえ、ちょっと見ていただけで。

どれ食べたいの?

(オススメを聞いているのかなと思い)このチキンパスタが美味しそうですね。

と答えたら、
店員さんに「このチキンパスタ二つちょうだい!」

飲み物は?

い!いえいえ、私払いますから!
と言っても「いーの、いーの」と奢ってくれることに。

チキンパスタとフラットホワイトのシングルショット。
一緒に店内中央のテーブルに座る、オジサンと私。

すっかりおごってもらい一緒に座ってしまったけれど、何かの勧誘だろうか・・・・・・。と勝手に心配になっていたところに、

おしゃれなオバサマが登場。私よりも5歳または10歳くらい上かな。いやぁ、もしかしたら同じくらいかな。

あらあんた!久しぶりだね!
今日はちょっと時間があるから食べていこうかな。とオバサマが呟くと、早速オジサンがレジに行き、オバサマのランチまで注文していました。

(オジサンさんがいない間に)

あの・・・突然、あの方がランチを買ってくれたんですけど。これってどういう意味ですか?よくあることですか?私ここにいて良いのですか?

オバサマは、
いーの、いーの!よくある、よくある。
で、あなたどこから来たの?

あっけにとられながらも、しっかりチキンパスタを食べながら答える私。

日本人です。子どもたちがこちらの学校に留学していて、私はガーディアンビザで、働けないんです。子供たちをテイクケアするために来たのですよ。昼間は英語の勉強をしたり日本の仕事をオンラインでしたり、結構忙しくしていますよ。

言い慣れた英語なのでスラスラ出てきました。(いつもここまでだけど)

こうして知らない人に奢ったり、一緒に食べ物を前に会話をするのは普通のことだ、とオジサンは言っていました。

英語の中にマオリ語がたくさん出てきて、もしかしたら・・と思って聞いてみたら、

Yes

マオリの人々

彼らはマオリの人々でした。
自分たちが信じていること、このニュージーランドの政治について、ヒストリーについて、たくさんのことを話してくれました。

この数ヶ月で見たり聞いたりしてきたマオリの文化や言葉の断片が、おぼろげだけど薄っすらカタチになった感じ。

とても勉強になりました。
もちろんマオリ語まじりの英語なので、100%理解は難しかったけれど。

オバサマは近くのブティックの店員さんをしているらしい。
オジサンは市内の中学校で子供たちにマオリ語やハカを教えている先生。もう25年になるらしい。

このほんの1時間弱の間に、知らないもの同士が仲良くなる奇跡。
勧誘なんて思ってごめんなさい。

たくさんお互いの異文化について話し合って、楽しい時間を過ごしました。

以下が学んだこと。

よくKia Oraというけれど、(レストランでも、ニュースでもどこでもHelloの代わりに聞きます)本当は単に「こんにちは」という意味ではないんだ。
be of good health 健康でいてね、という意味だよ。

Hongi(ホンギ)を初体験。
これは、マオリ族の挨拶です。握手をして額をつけて鼻と鼻をくっつけます。私の鼻は低すぎて、やりにくかったに違いない。神聖な挨拶を体験できて、NZに来た甲斐がありました。


Marae(マラエ)というマオリの集会では神聖な歌をこうやって歌い、その後こうやって動いて、こういう手順で進めるんだ。またこんなふうに歌い(本当に歌ってくれました。カフェのど真ん中で・…・)、最後に自分の名前を言うんだ。名前は重要ではない。大切なのは気持ちを込めたメッセージだ。

そしてオバサマは席を立つ時、パワーストーンのブレスレットを自分の腕から外して、私にくれました。
びっくりして何かお返しがないかカバンをあさっていたら、

何もいらないよ!出会えてこうして一緒に食事Kai(カイ 食べ物、供食)できたことが嬉しいから。これをKoha(コハ 贈り物、供物)と言うんだよ。

その他にもたくさんの話をしてくれました。

見え方が変わった

もしかしたらマオリの文化を伝える活動みたいなものだったのかもしれない。彼らは毎週こうして異文化交流を試しているのかもしれない。運良くそこに引っかかったと言ったら語弊があるけど、もしそうだとしたら、とにかく私にとってはラッキーな出来事。

いや、違う。
そんな活動じゃなくて、やはり自然に突然、おごってくれたんだと思います。
だって、ここニュージーランドでは、見かけではその人がこの国の人か旅行者か留学生か地元の人か見分けるのは難しいから。

たくさんの文化的背景を持つ人々がいて、その多様性は想像以上でした。そして自然にお互いを尊重しています。

英語レッスンを受けていた午前中の3時間よりも、濃密な英語特訓+異文化交流となった1時間でした。

オジサンは学校以外でもあるチャーチで(無料で)マオリ語を教えているらしい。次のTermは7月後半に始まるから、よかったらおいでねと言ってくれました。

毎晩のように、学校で教わってきたハカを踊る息子。このオジサンに会わせたい。きっと全力で彼の教えを吸収するだろうな。

最初にこの留学の場所を選ぼうという段階で、どうしてニュージーランドの北島にしたのか。その理由の一つに「マオリの人々が多い」というものがありました。

せっかくニュージーランドに住むなら、そこに住む人々の文化や歴史、慣習なんかを見てみたい、と思ったからです。

さまざまな出身地の人々が多い上に、マオリの人々もその中に混ざり合って、うまくみんなが暮らしている平和な雰囲気を感じられます。

まだ5ヶ月しかいないけれど、差別的な感覚は一度も感じたことはありません。逆に見かけの違いがありすぎて、ひとりひとりの文化的背景を想像するのが楽しい。

英語を学ぶだけなら日本で十分できますが、やはり自分の視野を広げる、異なる価値観を知る、という体験はその場所で暮らしてみないと分からない。

マオリの人とたった1時間話をしただけだけど、自分たちのことを誇りに思う気持ちを強く感じました。そして最近私も日本人であることに誇りをすごく感じるようになったからこそ、彼らの気持ちが少しは理解できるのだと思います。

おなかいっぱい

こんな気持ちを子どもたちにも伝えたい。
と、今日の出来事をかなりの熱量で話したのですが・・・

「へー、楽しそうだね、お母さん」

確かに。私が一番留学経験を楽しんでいるのかも。

先住民と後からやってきた人々の間では、数えきれないほどの戦いがありました。アメリカやカナダ、オーストラリアなど、どの国もそれなりに文化の保護や尊重が現代ではみられると思いますが、ニュージーランドでは、マオリ語が公用語として認められ、公共の場でかなり浸透しているように感じます。

息子の小学校では教科の名前もマオリ語、クラス名もマオリ語、ハカもマオリ語の歌も全力で楽しんで学んでいます。

学校にマオリの子が占めている割合はほんの数%にもかかわらず、です。

どうしてこうなったのか。
他の国ではうまくいかないことをどうやってこの状態まで持ってこられたのか。
どんな背景があってこういう気風が出来上がったのか。
そうは言っても、やはりまだ実はお互いの理解し合えない部分があるのか。

そこまで聞くには時間が足りませんでした。
あと半年の滞在でもう少しこのあたりが見えてくるかな?

頭の中がおなかいっぱい。

ご馳走してもらえる幸せな星のもとに生まれた私。
ほんとにラッキーだ。






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