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【福島県】削減で対応分かれた県内首長・議会

会津美里町は町長・議員に加え課長級職員もカット


 本誌6月号に「許されない公務員ボーナス通常支給」という記事を掲載した。新型コロナウイルス感染拡大による景況悪化で、今夏の民間企業のボーナスが昨夏と比べて大幅減が避けられない見通しの中、公務員は何事もなかったかのように、ボーナス(期末・勤勉手当)が支給されるのは許されない――と論じた。一方で、首長や議員は期末手当をカットする動きが見られるものの、その対応にはバラツキがある。

 6月号記事では、日本総研の「2020夏季賞与の見通し」(4月10日発表)、みずほ総合研究所の「2020夏季ボーナス予測」(5月25日発表)の2つのリポートをもとに、民間企業の今夏ボーナス状況を伝えた。それによると、「民間企業の1人当たり支給額は前年比▲6・4%と、リーマン・ショック以来の大幅なマイナスとなる見込み(厚生労働省「毎月勤労統計」事業所規模5人以上ベース)」(日本総研リポート)、「2020年夏の民間企業の一人当たりボーナスは、前年比▲9・2%とリーマン・ショック後以来の大幅マイナスを見込む。新型コロナウイルス感染拡大による企業収益・雇用環境の急速な悪化が背景」(みずほ総合研究所リポート)と分析されていた。

 さらに、「大手企業では、3月以降の情勢悪化の影響が反映されるのは年末賞与となる見込み」(日本総研リポート)、「2020年冬はさらに落ち込むとみられ……」(みずほ総合研究所リポート)とあり、今冬のボーナスはさらに厳しいとの見方を示している。

 これは全国的な傾向だが、とうほう地域経済研究所(福島市)が6月1日に発表したリポートは県内の実態を分析している。

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 同リポートによると、「民間企業では、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした休業要請や外出自粛による業績悪化などの影響から、ボーナスの支給月数が減少するだけではなく、ボーナスの支給自体を見送る企業もあるとみられることから、前年比で総支給額が▲16・1%、1人当たり支給額が▲15・5%となり、いずれもリーマン・ショック後における2009年夏季ボーナス支給額の減少率を上回る大幅な減少が予想される。尚、経済情勢の急変によっては、さらに下振れする可能性もある」と指摘している。

 同リポートにあるように、新型コロナウイルス感染拡大の影響をモロに受けている業界や、中小・零細企業などでは、ボーナスの大幅カット、あるいは支給できないところもあるに違いない。いまの経済情勢は、そのくらい厳しい状況にあるのだ。

 そんな中、公務員には通常通りに支給された。本誌は前記事号で《公務員の給与は「民間準拠」が原則とされるが、県内経済がかなり深刻な影響を受けている中、平時と同じようにボーナスが支給されるというのは理解できないし、許されることではない》、《思えば、東日本大震災・原発事故のときもそうだった。首長判断で、あるいは職員団体などが呼びかけ、自主的にボーナスの一部を返上し、被災地・避難者に寄付する、復旧・復興に充てるといった動きがあってもよさそうなものだが、そうした動きは全く見られなかった》、《いま求められているのは、ボーナスに限らず、議員や公務員の人件費をカットして、予算を捻出し、コロナ問題に立ち向かうことだ》と指摘したが、ついぞそうした動きは見られなかった。加えて10万円の給付金も受け取ろうなんてふざけている。

県内各市の対応

 一方で、特別職や議員に関してはカットする動きが出ている。別表は県内13市の特別職・議員の期末手当の削減状況を整理したもの。

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 削減を実施したところ、そうでないところと各市で対応が分かれている。例えば、福島市は市長が50%カットで支給額が105・2万円、副市長が30%カットで121・8万円、教育長が20%カットで125・9万円、議員(平均)が20%カットで98・3万円となる。

 表に「注」を入れたが、須賀川市の対応は少し特殊だ。市長、その他の特別職の期末手当はカットしていないが、市長が期末手当の50%相当額、その他の特別職が30%相当額を7月の給与からカットする。

 同市によると、「期末手当の支給の基準日が6月1日となっているため、そうした対応になった」という。

 同市の6月議会は4日開会、25日閉会の日程で行われたが、同議会に関連の議案を提出すると、議決を得られるのは期末手当の支給基準日よりも後になる。そのため、期末手当は通常通り支給し、7月分の給与から期末手当の30%〜50%相当額をカットすることにしたということのようだ。

 会津若松市議会も、同様の理由で7月分の議員報酬から、期末手当の20%相当額をカットするという。

 そのほか、会津若松市長と同市のその他の特別職、白河市議会は期末手当のカットは実施していないが、7月、あるいは7月以降の給与・議員報酬をカットすることを決めた。

 表で一覧化したのは市のみだが、町村でも特別職・議員の期末手当をカットしたところもあり、その場合は首長が30%〜50%、その他の特別職が20%〜30%、議員が10%から20%というのが1つの相場になっている。

 一方で、会津美里町の対応はほかとは異なるものだった。町長が30%、副町長・教育長が20%、議員が10%のカットに加え、管理職も10%のカットを実施したのだ。対象は課長級職員で7〜8人。地元紙報道等の限りでは、管理職の期末手当をカットしたのは同町のみ。町の担当者も、特別職や議員だけでなく管理職のボーナスをカットした事例は「ほかでは聞いたことがない」という。

 気になるのは、町長が「申し訳ないが、課長級職員もカットしてほしい」と言ったのか、それとも課長級職員が自ら「自分たちもカットする」と申し出たのか、あるいは別の事情があったのか、ということだが、その詳細は明かされなかった。ただ、町担当者によると「町長や課長らによる庁内会議(課長会議)で決定した」という。

 こうして見ると、各自治体で対応が分かれていることがうかがえるが、特別職や議員の期末手当をカットしたところで、節約効果はさしたるものではない。例えば、福島市の場合、市長、その他の特別職、議員の期末手当カットによって浮く金額は約1000万円、郡山市は同約1200万円、管理職の期末手当にも手を付けた会津美里町でも159万円(議員のカット分は除く)という。

 それだけの費用を捻出したところで、コロナ禍で苦しむ住民を救える事業を実施できるだけのものでないのは明らか。そういった意味でも、本誌前号で指摘したように、公務員給与は民間準拠が原則というなら、それに倣い、時勢に見合った対応をすべきだし、ボーナスに限らず特別職や議員、公務員の人件費をカットして予算を捻出し、コロナ対策を打ち出すことが求められる。


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