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【福島県】婚活の理想と現実

プロが語る「成婚のポイント」

 晩婚化が進む中で「結婚相談所」「婚活アプリ」「婚活パーティー」などの婚活ビジネスは市場規模1兆円と盛況ぶりを見せる。しかし、実際はそうしたところに登録したからと言って、すぐに結婚できるわけではない。そこでもなお異性から〝品定め〟されるわけで、身の丈に合ったパートナー選びができていない人や自己研鑽が不十分な人は取り残されてしまう現実がある。30代独身男性記者が、婚活のプロたちに結婚成就のポイントを聞いた。

 

 国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(2015年)によると、福島県の男性未婚率(30~34歳)は47・5%、女性未婚率(25~29歳)は54・6%。福島県の結婚適齢期の男女は2人に1人が未婚ということになる。

 かく言う本誌記者も30代半ばにして未だ独身。長年東京に住んでいて、仕事や遊びに全力だったこともあり、正直結婚願望はなかったが、周りから言われて意識するようになった。最初の一歩が重要と考え、10万円かけて民間の結婚相談所に登録しようと思ったが、勇気が出なかった。

 そこで今回の取材をきっかけに、福島市で開かれる婚活パーティーに応募してみた。募集条件は25歳から35歳までで、ぎりぎり応募資格に合致した。緊張しながら会場に足を運ぶと、参加者は男性4人、女性4人のみだった。東京で参加した数十人規模の街コンを想定していたので拍子抜けしてしまった。詳細は割愛するが、結論的には、その場で結婚したいと思える人に出会うことはできなかった。早くも婚活の難しさを思い知った。

 後から思い返すと、相手に求める条件を高く設定し過ぎていたかもしれない。2018(平成30)年4月に放送された、ジャーナリスト・池上彰氏が女性の悩みに答えるトークバラエティー「池上彰と女子会」(TBSテレビ)。番組に登場した未婚女性の多くが「出会いがない」と嘆いていたのに対し、池上氏は「普通に生活していて理想の相手と出会える確率は統計学的に0・00006%だ」と指摘した。〝理想の相手〟にはそれだけ高い条件が設定されているということだが、自分もそのような考えに陥っていた。

 一昔前の〝理想の相手〟の歴史を振り返ってみると、バブル時代の女性が結婚相手に求めていた条件は「三高」(高学歴・高収入・高身長)だった。MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)以上の一流大学・大学院卒で、年収1000万円以上、身長180㌢以上の男性が求められていた。

 当時はまだまだ専業主婦世帯が多く、一家の大黒柱としての「男らしさ」を男性に求める風潮が残っていた。女性自身のキャリアや人格より〝主人〟となる人のスペックで女性の価値が推し量られていたであろうことが推測される。

 しかし、バブル崩壊とともに就職氷河期に直面したロストジェネレーション(失われた世代)が生まれ、「三高」が少数になっていくと、自ずと非現実的な条件として扱われるようになった。結婚相談所紹介サービス「ノッツェ」を運営する結婚情報センターが2012(平成24)年に「結婚相手に求める要素」を調査したところ、「三高」を求める人は全体の1割を切っていた。

 代わって台頭してきた価値観が「三平」(平均的な年収・平凡な見た目・平穏な生活)だ。優しい性格で見た目も高望みしない。女性たちは〝妥協〟してもいいと考えるようになった。同センターの調査では「三平」を求める層は男女合わせて78%に上った。

 20年で結婚観が一変したのは、女性の社会進出が進んだことが要因だろう。先導してくれる男性より、現実的な視点で共に歩んでくれる男性の需要が高まったのだ。

 一見、理想の相手のハードルが下がったようにも見えるが、ここにも落とし穴が潜んでいる。平均・平凡・平穏という言葉はあくまで主観的な価値観であり、男性と女性では捉え方が異なるのだ。

 例えば「平均的な年収」。厚生労働省発表によると、2018年の福島県の平均年収は男性467万円、女性332万円だった。一部の高収入者に引っ張られて高くなっているが、分布で一番多い層である中央値はもっと低く、この平均年収に到達する年齢も生産年齢の中間である40代だろう。

 つまり、結婚適齢期と言われる年代の大半は年収467万円には到達していないわけ。一流企業の社員、医師、公務員、中小企業経営者などの〝優良物件〟ほど早く売れていくので、希望の年収に出会える確率はさらに下がる。

 結局、パートナー選びの際には高い条件を設けてしまい、池上氏の言う通り、ほぼ出会うことのない〝理想の相手〟を追い求めているばかりでは、いつまで経っても結婚できないということだろう。

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「四低」時代へ突入 

 「三高」「三平」と来て、令和時代の理想の結婚相手は「四低」(低姿勢・低依存・低リスク・低燃費)が主流になりつつあるという。

 ①低姿勢=威張った態度をとらない、②低依存=子育てや家事を分担して妻に依存しない、③低リスク=堅実な仕事をしてリストラに遭うリスクが少ない、④低燃費=浪費せずに節約してくれる。

 「収入は共稼ぎでカバーできるけど、亭主関白は嫌! 家事を分担して対等な関係を構築したい」――男性にとってはより条件が厳しくなった気もするが、これが現代の女性の考え方ということだ。

 ここまで理想の結婚相手の変遷を辿ってきたが、婚活中の男女が会費を払って加入する結婚相談所などでは、こうした理想や相手への条件をどのようにすり合わせているのか。

 福島市で20年以上結婚相談所を営んでいるブライダルサロン・スプリングの丹治逸雄さんは次のように説明する。

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 「男性加入者で圧倒的に多いのが40代で、30代後半がこれに続きます。20代の加入者はほとんどいませんが、仮にいたとしてもこちらから加入をお断りすることもあります。年収が低すぎて(女性側の)ご期待に沿えない可能性が高いからです。一方、女性加入者のほとんどは30代です。求めるものは『三平』や『四低』ですが、やはり理想は高い傾向にあります。最近加入された開業医の娘さんは、年齢30代半ば、希望年収500万円以上、職業はできれば医師が希望という条件でした。これに完璧に合致する人を見つけるのはなかなか難しいです」

 婚活が上手くいく人の特徴について尋ねると、こう答えた。

 「一生懸命で、福島市在住でも宮城県などに足を延ばして出会いの機会を多くつくろうとする人です。いままで普通に生活していて出会いがなかったのだから、活発に動いて出会いを見つけた人は〝勝利〟します。逆に上手くいかない人はコミュニケーション能力に乏しい場合が多い。年収500万円の40代男性が何十回お見合いをしても成婚に至らないため、ある女性に理由を聞きました。すると、その男性は会話のキャッチボールができず〝上から目線〟で話すことが多かったようです」(同)

 結婚相談所への入会費用は一般的に10万円から30万円ほど。月会費のほか、お見合い費、成婚費などがその都度かかる。だが、それらはあくまで出会いの場をつくるきっかけに過ぎず、本人が努力しなければ相手に選んでもらえない、と。

 本誌昨年8月号で、若い男女が出会うためのツールとして「マッチングアプリ」が急速に広まっていることを紹介した。それに加え、結婚適齢期の人口が減少していることもあって、どの結婚相談所も入会者集めに苦労しているようだ。

 「いつの時代も男性は若い女性と結婚したいと考えている。でも、若い女性は振り向いてくれない。ではどうするか、ということで、私は日本人男性と結婚したいと考えている若い外国人女性を引き合わせています。以前は中国から嫁いでくることが多かったが、近年はベトナム人が多い。日本に滞在しているベトナム人だけでなく、現地に住んでいる女性も対象にしており、『スカイプ』(互いの顔を見ながら通話できるインターネット電話サービス)などで何度かやり取りして、お互いに気に入ったら男性がベトナムに会いに行くという流れです」(丹治さん)

県の世話やき人制度

県は「ふくしま結婚・子育て応援センター」という組織を運営しており、婚活支援のための「世話やき人制度」を2015(平成27)年からスタートしている。世話やき人は、結婚に関する相談受付、イベント開催、相手探し、お見合いなどの支援をするボランティアで、研修を受けた相談員が約100人在籍している。言わば「近所のおせっかいおじさん・おばさん」が身近なコミュニティーからお見合い相手を見つけて紹介したり、長年培った経験からアドバイスをするというものだ。

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 何と、結婚希望者の登録料、紹介料、成婚料はすべて無料だ。

 「昨年11月末時点で1174件のお見合いを行っており、71件の成婚実績があります。今後も婚活イベントなどを積極的に開催していきます」(同センター担当者)

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 婚活のポイントを尋ねたところ、厳しい口調でこのように話した。

 「結婚したくなった時期=適齢期ではない、ということを強く言いたいですね。男性であれば30代は責任ある仕事も増えて仕事に没頭してしまうこともあるし、女性であれば20代のころに周りからチヤホヤされ、決断できないこともあると思います。でも男性が40代、女性が30代になってから結婚したいと思うのは少し遅い。自分の事情ばかりでなく『世の中の適齢期』を知って動くことが重要だと思います」

 独身者には耳の痛い話だが、そういうことを意識せずに訪ねてくる相談者が多いということだろう。

 同制度発足時から在籍している菅野達幸さんは、世話やき人として熱心に活動する一人だ。

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 菅野さんが長年勤めた会社を定年退職して感じたのは、これまで無事に仕事ができたのは周りのサポートのおかげだということだった。お世話になったコミュニティーに少しでも恩返ししたいと思っていたとき、目に入ったのが新聞に掲載されていた世話やき人募集の広告だった。

 「応募したのは、真面目に婚活している人に何らかの手を差し伸べたいと思ったからです。活動から5年経ちますが、私が担当した相談者のうち約10人が成婚しました。長く相談を受けているうちに、だんだん自分の息子・娘みたいな感覚になってきて『こんないい子がなんで結婚できないだ』という思いでサポートしています。縁談がまとまったときは本当にやりがいを感じます」

 そんな菅野さんに最新の婚活事情を尋ねたところ、次のように教えてくれた。

 「独身男性の6割は親と同居しているというデータがあり、実際、私が担当した男性相談者の多くも親と同居していました。長男が多いですね。男性は自分の親との〝同居〟、女性は〝別居〟を望む傾向があるので、そのギャップを埋めるのが大変です。私はまず、お互いを知る方が先とアドバイスするとともに、食事や育児のサポートなど同居のメリットも強調しています。人はいつか自分も介護される立場になる。だから自分も親に対してやってあげるんだよ、と。ある女性にこんな話をしたところ、『親との同居を求める男性は親に対して優しい気持ちがあるんですね』と言ってくれたので、うれしくなりました」

 一方、婚活が上手くいく人の特徴については、前出・丹治さんと同じくコミュニケーション能力を挙げた。

 「上手くいく人はやっぱりコミュニケーション能力があります。それと、明るくて元気で朗らか。これらが足りない人には気を付けるようにアドバイスしています。逆に婚活が上手くいかない人は、自分のことばかり話しがちで、相手の話を聞かない傾向があります。緊張するのは分かりますが『ところで、あなたはどうですか?』と相手に話を振る一言が出てこないのです」

 どんなに話下手でも、努力して話せるようになることが肝要なのだろう。

男性余りの福島県

この間、多数の相談を受けている菅野さんにあらためて婚活していくうえでのポイントを尋ねると、このようにアドバイスしてくれた。

 「男性に対して言いたいのは、まず世の中の動向を理解してくださいということです。福島県では、15歳以上の未婚者は男性24・4万人に対し、女性16・4万人で男性が余っている状況です。女性から会ってみたいという要望があったら、容姿などを気にする前にまず会ってみるべきです。我慢して結婚しろとまでは言わないが、いままで結婚できなかった自分を客観視してほしい。例えば応募段階で高い意識を持ち、身ぎれいな格好で写真を撮るべきです。年齢も自覚する必要があります。子どもが欲しい男性は多いが、50代の男性が子どもを産める年代の女性と付き合い、結婚にまで至るのは現実的には難しいと思います」

 一方、女性相談者に対してはこんなポイントを挙げる。

 「女性は男性に年収400万円とか500万円とか高望みしないでほしい。近年はキャリアを積んで年収が高い女性と、パート勤務で収入が安定しない女性の二極化の傾向にあるが、年収が高い女性は自分と同じくらいの年収の男性を求めるし、年収が低い女性は養ってもらえる高い年収の男性を求めがちです。つまりどちらにしても高年収を求める傾向にあるのです」

 婚活のプロから話を聞いて感じたのは、自分を客観的に見て行動することの大切さだ。30代も後半に差し掛かろうとしているのに仕事を理由に婚活を先送りしたり、高望みしていたのではいつまで経っても結婚できない。そうしている間に結婚適齢期を逃してしまう。

 そこで、さらなる一歩として、この機会に県の世話やき人制度の相談者として登録してみることにした。今回の取材で得たアドバイスを踏まえ、さまざまな人と出会いを重ね、コミュニケーションを取り続けるうちに、自分に合うパートナーが見つかることを期待したい。


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