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「馬尾性間欠跛行に対する運動療法の効果」#書く習慣124

日々の診療お疲れ様です。TROT(トロット)です。

改めて狭窄症について学びたいなあと思い、気づくと林先生の論文に行き当たりました。簡単にまとめていきたいと思います。

参考文献はこちら


はじめに

・人口増加に伴い狭窄症患者も増加している

・特徴的な症状である間欠跛行は歩行能力を低下させるだけでなく、精神的にも問題が出現することがある

・今回保存療法の一つに股関節ならびに腰椎の拘縮改善を主体とする運動療法が有効か検討したので報告する


対象

・LSSと診断され、3ヶ月以上間欠跛行が継続する患者

・診断方法は…

 ① 腰殿部痛と下肢痛があり、歩行とともに症状の増悪を示すが、
   姿勢変化により改善すること

 ② 腰椎の伸展により症状の発現を認めること

 ③ 腰椎の画像所見上もLSSであること(XP、MRI)


・運動療法実施の症例選定

 ① 手術拒否例

 ② 高齢で手術のリスクが高い症例

 ③ 臥位と立位のレントゲンにて腰椎前弯が明らかに増強する症例


方法

⒈股関節拘縮の評価方法

・拘縮評価は腸腰筋と大腿筋膜張筋について行なった
・腸腰筋に対してはThomas test、大腿筋膜張筋に対してはOber  testを用いた

⒉腰椎後弯可動性の評価方法

・PLF(Posterior Lumbar Flexibility)testを用いた

⒊運動療法の効果判定

・効果は歩行距離の延長量に求めた

・トレッドミルで1km以上の歩行が可能か3ヶ月の治療期間まで確認

⒋実施した運動療法

・腸腰筋と大腿筋膜張筋にリラクゼーションとストレッチを行う

・各テストの陰性化を目指す

・合わせて骨盤の後傾を妨げる多裂筋にもリラクゼーションとストレッチを行ない、椎間関節に対する運動療法を実施

・運動療法は週2回、自宅でのセルフストレッチングも指導


結果

・Thomas or Ober testの陽性率は約95.7%
・初診時の歩行距離と股関節の伸展や内転の角度に相関はない

・PLFは1例を除き陽性
・平均屈曲角度は122.1±9.4°(最小107°、最大138°)
・初診時の歩行距離と股関節の屈曲角度は中等度の相関がある

・23例中21例は歩行距離の増大を認めた
・1例はドロップアウト、もう1例は無効のため中止
・1ヶ月以内に1km以上の歩行が可能になったのは、8例(38%)

・2ヶ月以内に1km以上の歩行が可能になったのは、15例
・各種拘縮テストも陰性化した
・股関節拘縮よりもPLF字の股関節屈曲角度の拡大に同期する印象


考察

・(小西ら)保存療法の限界は300m以下の症例

・(増本、菊池ら)馬尾性間欠跛行が明らかなケースは早期より手術を進めるべき

・(赤峰ら)間欠跛行に対する硬膜外ブロックの効果は58%だが、
 神経根性に対するブロックよりも効果は鈍い

・PGE1製剤(オパルモン)に対して…
 ① 腰痛に対する効果は低いが、歩行機能の改善には有効(小野ら)
 ② 循環障害を基盤とする間欠はこうには有効性がある(村上ら)

・(白土ら)体幹筋,股関 節周囲筋に対する強化訓練について紹介しているが、
  歩行障害の改善に有効かは述べられていない

・今回の運動療法は股関節拘縮に伴う二次的な腰椎前弯の増強の軽減ならびに腰椎後弯域の改善を中心に実施

・70%以上が1km以上の連続歩行が可能となった

・馬尾性間欠跛行の96%に腸腰筋や大腿筋膜張筋の拘縮を認め、多くの症例で屈曲、外転拘縮を呈していることが分かった

・屈曲、外転位拘縮により、骨盤に対して前傾トルクが発生し、腰椎前弯の増強に関与することは容易に想像できる

・1km以上の連続歩行が可能例は拘縮テストが陰性化している

・PLF時の股関節屈曲可動域を初診時の歩行距離は相関を認める

・股関節の屈曲可動域は平均93.0 ± 3.6°であり、参考可動域における30〜40°は骨盤運動によるものと報告している

PLF testの陰性化は十分な骨盤の後傾を許容するだけの腰椎の後弯域が改善して初めてえられる現象

硬膜管面積と初診時歩行距離も中等度の相関を認めた



それでは今日はこの辺で。