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餌から自給率を高めたい 貴重な4%の純国産たまご【㈱生活クラブたまごインタビュー】

埼玉県深谷市で安心な飼料をあたえ、健康を第一に育てた純国産鶏種の卵を供給する㈱生活クラブたまご※の工藤一さん、金子利司夫さんにお話を伺いました。

右から代表取締役専務 工藤一さん、
専務付総務課長 金子利司夫さん

※生活クラブ連合会が生活クラブたまごの前身、鹿川養鶏場(2013年より鹿川グリーンファーム)と提携し鶏卵の取り組みを始めたのは1974年。
 当時から風通しの良い開放型鶏舎で鶏を飼育し、鶏自身の活力を高めることによって卵質を向上させ、手間ひまをかけて健康管理や防疫を実行していました。2013年には、生活クラブの出資により社名が「株式会社生活クラブたまご」となりました。

――改めてたまごの特長を教えていただけますか。
 卵を産む鶏種は外国産が96%の中、生活クラブたまごの鶏種はたった4%の貴重な「純国産」です。親鶏に、国内で原原種・原種及び種鶏の生産と育種改良ができる純国産鶏種の「もみじ」と「さくら」を採用し、日本の気候・風土にあわせた育種改良が重ねられています。
 たまごは、鶏が食べた餌でできています。飼料は、非遺伝子組み換え食品にこだわり、玄米(35%)、提携生産者である米澤製油(株)の「国産ブレンドなたね油」の搾りかす、地元埼玉県加須市の子実トウモロコシ、大豆かすなど、国産原料を50%配合し、さっぱりした味を評価していただいています。鶏を飼育する全期間にわたり、抗菌性物質は使っていません。

――鳥インフルエンザ※の影響を受け、無洗卵から洗卵に変わったことについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
 2022年8月からは、組合員のみなさんと話し合いを経て「無洗卵・常温・リユースパック」から「洗卵・冷蔵・リサイクルパック」に変更しました。サルモネラ菌による食中毒や鳥インフルエンザなど、菌やウイルスの脅威は時代とともに変化し、年々対応が難しくなっています。さらに、気候危機の影響で地球過熱化がすすみ、置き配などの常温保管のリスクも大きくなりました。鳥インフルエンザが発生した当時は、育成中だった鶏を4ロット分と、ひなになる前の1ロット分を何とか委託先から入れられることになり、殺菌をすることになりました。
 変化する環境の中でも安心して食べていただきたいので、鶏卵の洗浄や温度管理、パッキングなどができる施設を、生活クラブの物流拠点「飯能デリバリーセンター」に併設しました。

※2022年から2023年にかけて、国内で鳥インフルエンザの発生が確認され、養鶏を取り巻く社会状況は厳しさを増してきました。2023年1月19日には、過去最高の25道県にまたがり、鶏卵と鶏肉をあわせて1,153万羽が殺処分となり、各地で防疫措置が行なわれています。
 
――洗卵に変わってみて反応はいかがでしたか。
 きれいかきれいじゃないかだけを求めているわけではないと思いますが、無洗卵だとどうしてもふんが付いていたりすることもあるので、洗卵に対して好意的な意見をよくもらいました。
 
――鳥インフルエンザ発生からのご苦労についてはいかがでしょうか。
 岡部農場では19万羽、埋める場所がなく焼却処分することになりましたが、コロナ禍で焼却施設は医療用廃棄物が多く、ものすごく時間がかかりました。気持ちを込めて管理してきたにわとりの殺す手助けをしなければならないのは、とても心苦しかったです。

 みなさんにはご迷惑をおかけして、12個ではなく6個パックでの供給になりました。配送だと柔軟に供給数を調整するのは難しいかと思いますが、デポーにて柔軟に対応していただきました。入荷できる数で受け入れてもらえて、少ない生産の中で出来るだけ食べてもらえたので、余剰も発生せずにありがたかったです。
 
――励みになったことなどありましたか。
 ㈱
オルタフーズ(生活クラブの菓子類・パン類の生産者)から手紙をいただきました。また生活クラブ埼玉からカンパを集めていただき、その際にメッセージをもらいました。小さな手紙でしたが、手提げの紙袋ぱんぱんになるくらいの量が届き、個人の皆さんにもメッセージをもらったりと励みになりました。

――組合員に伝えたいポイントはありますか。
 
本来は1回鳥インフルエンザなると消費まで戻すのが難しくなります。スーパーだと棚がなくなってしまうこともありますが、組合員の皆さんが生産に合わせて食べてくれるので戻すことができています。生産が戻っても需要が戻らないと大変なことになるので、ものすごくありがたいです。

 またデポーや交流会などで、組合員や職員の方への発信の機会があることをありがたく思っています。普通、生産者として食べてくれる人と会話できる機会は、なかなか持てません。
 みなさんがどんなことを考えて、何を気にして選んでいるのかを聞けたり、やってみると疑問を抱えながら食べていたりと、いろんな人たちがいます。卵ってどんな食べ物なのか、何が違うのか、どこを割るといいのかなどを話しています。
 私たちが飼料の国産化を高めようとしていることを知ってもらい、例えば「飼料用米を利用することで、東京ドーム37個分の田んぼに水が入るんだよ」ということも伝えられる。そんな風に何に気を使っていて、何が気になっているかをすり合わせられる機会はなかなかないと思います。
 何を食べたくて、食べることで社会にどう繋がっていくのかをイメージしてもらいながらすすめられることがいいなと思います。「おいしいんだよ」だけでなく、「食べ続けることで、田んぼに水が入るんだよ」「へーー!」みたいな会話ができるわけじゃないですか。

 そうして行動が変わって社会が変わっていくことにつなげられる、そんなやりがいのあることはないんじゃないかと思いますね。土日でも夜でも呼んでいただければ、できる限り話をしていきたいなと思います。 

生活クラブ神奈川HP:https://kanagawa.seikatsuclub.coop/

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