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1. 要件定義【短編官能小説の書き方】

◆目次
 1.初めに
 2.要件定義の各項目
 3.要件定義項目についての説明

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1.初めに

こんにちは。性感躰と申します。
男性向けの変態性癖を取り扱った短編を書くのが趣味で、同じくあまり人に理解されない性癖を持ってしまった同士のために、細々と活動を初めております。
第1回のnote記事では、私が作品を書き進める流れについて簡単にご紹介できればと思います。

一般的な小説の書き方はどうなのか分かりませんが、総じて物書きの一番の敵は「書き上がらないこと」そのものにあります。ほとんどの書き手はこの事象に作品を殺されます。せっかく良いアイデアが思いついて書いてみようと思い立った方でも、文章として形にならず誰にも見せることなく仕舞ったままになってしまうことは多くあると思います。なので私の書き方は、「早く書き上げること」に特化して科学しています(今も研究・更新中です)。スランプなどは方法論でぶっ飛ばしましょう。

また官能小説はその「実用目的」に特化した分野の小説です。
もちろん官能小説に物語性や感動を求められる方も多くおられるでしょうし、私もそういった作品は大好きです。ただ官能小説である以上、「実用目的」に耐えうるものを作るという路線が大きく存在します。簡単に言いましょう。オナニーできなければ官能小説である意味がありません。
であれば、まず筆者である自分自身が最大の顧客になることが非常に重要です。極論、自分のおかずのために、自分が読んでみたい作品を自作しているという形で良いかと思います。よって自分の興奮に輪郭を与え、まず自身を満足させられるものを作れるようになる方法として、私は
「興奮のアイデアづくり」→「興奮のシーン化」→「物語化」という3段階で書き進めています。これを小説を書き進める際の要件定義としており、その項目について以下で説明してまいります。

2.要件定義の各項目

①初期段階(興奮のアイデアづくり)
・【性癖明文化】どの性癖の刺すかを文言化する
・【抜きシーン作り】抜きシーンを想像するだけで"おかず"として機能することが重要

②中段階(興奮のシーン化)
・【あらすじ作り】全体の話のあらすじ、概要を流れに沿って箇条書き
・【抜きシーン補強】3〜4つある抜きシーンを膨らませて、それだけでおかずとして十分に機能させるレベルに仕上げる

③最終段階(物語化)
・【前戯・愛撫の追加】抜きシーンがより映える(股間にくる)ようにするために、興奮をその前段階の責めを入れることで補強
・【全体の文章化】箇条書きなどで補っていた足りない文章部分を追加して、1つの小説の形に仕上げる

3.要件定義項目についての説明

①初期段階(興奮のアイデアづくり)
最初は「プロット」づくりという工程です。これは単純に「こんな小説書いてみたいな。読んでみたいな」というアイデアの段階で、箇条書きでアイデアを書き出していく段階です。
このアイデア段階だけで興奮できるのが、自分から見て良いプロットです。極端に言えば、良いプロットはこのアイデア部分だけで実用に耐えうるものになります。無限にイメージが広がるプロットを選んで、次の工程に進みましょう。

②中段階(興奮のシーン化)
アイデアの箇条書き、ちょっとしたセリフぐらいのプロットを、今度はシーンの形にしていきます。これがいわゆる「イキどころ」であり、男性であれば抜きどころになる部分です。このシーンが本来作者からすると一番見せたいシーンであり、同時に一番書きたいシーンです。
作品によって違いますが、私の場合は10,000〜15,000前後の短編で約3〜4つの抜きシーンを作っており、ここをシーン化することで全体の3割程度のボリュームになります(3000〜4000字程度)。

③最終段階(物語化)
興奮のシーン化が終わったら、あとは物語として機能するように地の文やストーリー展開で辻褄を合わせる工程に入ります。内容が官能かどうかは関係なく、人を引き込む物語というのは「日常性」と「非日常性」の振り子が両極に大きく振れています。抜きシーンでは思い切り「非日常」をつくり、読み手に普段味わうことのできない夢を見せて、逆にそこに至る「日常」は共感性の高いものであるほど人は没頭します。
言ってしまえば、その非日常に至る流れは本当に「辻褄を合わせる」だけでよく、「そんな事件起こらないよ」「そんなやついないよ」という現実的な指摘はこの際受け付けません。逆に、この辻褄合わせを怠ると、読み手は「なんでそのシーンになったの??」という説明をされない混乱から話にのめり込めず、身体と心が興奮状態になる前に萎えてしまいます。
得てして人間の性癖というものは我儘なものなのです。

この記事では、各工程を書くと相当長くなってしまうため、一旦全体の書き方の流れを総括して書きました。以降の記事では、より踏み込んで各工程について説明したいと思います。