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自分らしさを取り戻す時間

2020年春に婚姻を機に病院を退職し、初めての転職で清華苑養力センターに就職させて頂きました。

未だ施設での仕事に不慣れな頃に、通所リハビリで担当を引き継がせて頂いたA様のお話です。

日常生活の全てと家事を自立され、ご主人と二人暮らしをされていたA様は明るくとても気さくな方で他ご利用者様との関係も良好な方でしたが、認知症を患われていたご主人の介護の疲労でリハビリ介入時にはどこか落ち着かれる様子はなく、浮かない表情をされることが多くみられました。

介護に明け暮れ眠れない日が続き、「死にたい」と口にすることもありました。週に2回の来苑で、そのうち私がリハビリでA様と関われる時間はほんの20分でした。

以前カルテでみた自宅の写真の中から、折り紙細工を飾られていた存在を思い出し、来苑時に何か継続して行える作業活動(作品制作)をしてみないかと提案したところ、いままで一番わくわくした表情を見せて下さいました。

A様はきめこみの制作を選択され、会う度に「今日もあれ(きめこみ)する?」と、前向きな言葉が聞かれる様になりました。作業に取りかかっている間はA様からは悲観的な言葉は聞かれず、他ご利用者さまからお褒めの言葉を頂く機会も増え、ほんの僅かな時間ですが「これをしていると嫌なこと忘れられます。自分に戻れる。」と、穏やかな時間を過ごすことが出来ました。

何か手作業で作品を作ることに長いブランクがあったA様でしたが、それを思わせない様な大作が完成し、「娘へのプレゼントにするわ。」と日々の生活やご主人の介護をサポートして下さっている娘様へ作品とともに、日頃の感謝を伝えることが出来たようです。

私自身、病院勤務時代はあまり提供することがなかったリハビリでの作品制作の時間について教えて頂く事が多くありました。作品完成の記念撮影では大きなクリスマスツリーの前で満面の笑みを浮かべるA様と作品を写真におさめることができました。

清華苑養力センター
三浦杏菜


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