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木登りに泥遊び、自然の中で成長する初等学校の子どもたち

成城学園初等学校は緑に囲まれ、自然の勾配を活かした遊び場がある恵まれた環境です。
大正6(1917)年に、画一的な教育を打破するために実験校として成城小学校を創立して以来、自然を教育者とした情操教育を大切に受け継いでいます。
成城学園の原点ともいえる成城学園初等学校の自然と教育のお話を、今年1年生の担任を務める3人の先生方に伺いました。

左:(楠組) 篠田 達也先生、中央:(桐組)鈴木 秀典先生、右:(藤組)角田 雄史先生

親しみのあるクラス名

成城学園初等学校のクラスには、全て樹木の名前が付けられています。先生方は初めて担任を持つときに自分のクラス名となる樹木を決めます。自分の好きな樹木を選ぶ先生もいれば、昔からある名前を引き継ぐ先生もいます。卒業生でもある鈴木先生は、ご自分が児童だったときのクラス名「桐」を復活させたそうです。クラス名は先生の在任中は変わることがありません。例えば「藤」の角田先生が受け持つクラスは常に「藤組」となります。3〜6年生はクラス替えをせず、同じ先生や仲間と過ごすので、子どもたちも組名に愛着を持って過ごします。
「何代目の〇組」という言い方が定着していて、卒業生の間でも組名が世代を超えて共通言語となっているそうです。

各教室に掲げられている組札にも、クラスの個性が光ります。先生自ら手作りしているクラスもあり、植物の形や先生の好きなものなど、6学年18クラスにオリジナリティに富んだ札が掲げられています。

長年ソフトボールをやっていた角田先生が率いる藤組の組札

「旅先でクラスの花を見たとか、家紋や紋章にクラスの木が使われているとか、学校外でも知識のアンテナを立ててくれていると感じます」
自分のクラスに植物の名前が付くことで、関心の幅が広がっているようです。

鈴木先生が担当する桐組は桐紋を掲げている
かわいいキャラクターの楠組は篠田先生が担任

組名になっている樹木は、必ず校内のどこかに植えられています。
鈴木先生の桐は第2校舎3階の音楽室からが一番よく見えるそうです。

桐組の鈴木先生と窓の外に見える桐の木

先生をあだ名で呼ぶのも成城学園初等学校の文化。篠田先生は「しのちゃん」、鈴木先生は「ひでっち」、角田先生は「つんつん」と呼ばれています。
ルールではないけれど、自然とあだ名呼びが定着し、先生と児童の垣根を超えてアットホームな関係性を築いています。

遊びと散歩の時間で成城の自然に触れる

成城学園初等学校では「遊び」と「散歩」の授業で、主体性や自然の中からの発見、創造性を育むことを大切にしています。
「遊び」の授業では、室内外問わず敷地内で自由に遊びます。取材時にも校庭で木登りをしたり、砂場に水を撒き泥遊びをしたりと、環境を存分に使って遊びを楽しむ姿が見られました。

休み時間や放課後もにぎやかな声が響く

敷地内に高低差があるのも、子どもたちの遊びの幅を広げています。
「かんさつの森」では四季折々の植物を観察することができます。校舎の裏側にある「地獄谷」は、固い泥団子をつくって遊ぶ姿も見られる秘密基地のような場所。

緑が豊かなかんさつの森
上下左右に変形する水道の蛇口は水遊びや泥遊びしやすい

学園から出て、成城の街を散歩することもあります。国分寺崖線の湧水を見に行ったり、富士山の見える橋に行ったり、坂道の多い成城の地形を意識した街歩きもしています。

 鈴木先生はご自身の初等学校時代を振り返り、「散歩の時間に公園に行ったことや、先生の膝の上に座っていたことを、今も鮮明に憶えています。成城の思い出は、本当に楽しいことばかりです」と、目を細めて話してくれました。

共に成長を喜べる仲間

学園内の通称“ドーナツ池”では、ザリガニ釣りをするのが恒例。
まずは池を観察することからはじまります。竿や糸の長さがどのくらいあったらいいかなど、竿づくりの前に池をよく見て考えます。
工夫を重ねてたくさん釣れるようになる子もいれば、なかなか釣れない子もいます。できるようになった子が、他の子どもにコツを教える姿も見られ、クラスが一体となって盛り上がるそう。

大学の敷地にある成城池(通称“ドーナツ池”)

「今年は50匹も釣れました。ザリガニが苦手で触れなかった子が、授業の最後には触れるようになって、クラスメイトが拍手で讃える場面も見られましたよ」
「成城はやさしい子が多いので、クラスみんなで喜び合う習慣があります」苦手を乗り越えた子も周りの子も、いい成長の機会になるといいます。

 校外の自然環境でも、さまざまな体験を通じて子どもたちの感性は育まれます。4年生からは「夏の学校」というイベントがあり、4年生は群馬県みなかみ町、5年生は静岡県西伊豆、6年生は長野県乗鞍高原へ行きます。
親元を離れて、3泊4日の集団生活を送る中で、その土地でしか味わえない貴重な時間を過ごします。

 「冬に実施する『スキー学校』でも、初日には滑れなかった子が最終日にはびっくりするほど滑れるようになるんですよ。その様子を見て、クラスみんなで『わーすごいね!』って。だから、初心者の子にはわざわざ練習してから参加しないでくださいと伝えます。みんなで成功体験を味わえる機会はとても貴重です」

自由に自然に

自然豊かな環境が魅力的な成城学園。
初等学校の先生方は何より子どもたちの自主性を大切にしているといいます。
「遊びや休み時間も、その時やりたいことをやるのが一番いい。自然を使ってダイナミックに遊ぶのも、木の実や葉っぱを使っておままごとをするのも、季節を感じ、新しい発見やアイデアにつながる学びです。たくさん遊んで、たくさん体験してほしいです」

「夏の学校」の記事はこちら

「スキー学校」の様子

初等学校の教科・活動についてのご紹介「特色ある教科・活動」