見出し画像

子どもたちも先生も、「理科のへや」で好きをとことん探究しよう!

『sful-成城だより』vol.16(2021年発行)の「ワザあり!in Seijo Gakuen」という企画では、成城学園初等学校の「理科のへや」を取り上げています。記事では理科のへやの設備や豊富な器具など、こだわりを中心に紹介しました。一方で、紹介しきれなかった魅力も。取材に協力してくれた「理科研究部」の先生たちの存在も、その一つです。sful取材チームが取材で感じた驚きをお伝えします。

子どもたちが自由に探究できる理科室

成城学園初等学校の西棟1階にある「理科のへや」は、「疑問がある子が誰でも集まってくる理科室」というコンセプトで作られただけあって、子どもたちの好奇心や探究心を刺激するような仕掛けがたくさんあり、大人でもワクワクしてしまう空間でした。
特に目を引いたのは、部屋の一角に設けられた「自由理科材料コーナー」。割りばしや竹ひご、針金などの工作材料があり、放課後や休み時間にやってきた子どもたちが自由に実験や観察に使うことができます。

理科のへやは2室あり、3、4年生と5、6年生で分かれています
子どもたちが自由に使える実験器具や備品が揃っています

このコーナーを設置した理由について、理科研究部(成城学園初等学校では各教科担当を「研究部」と言います)の岡崎真幸先生は、「授業を進めるうちに話題が広がり、それに伴って新しい疑問も出てきます。日々の生活の中で不思議に感じることもあります。そういう疑問をしっかり考えられるような、子どもたちが自由に探究できる理科室にしたかったのです」と説明します。

上級生の「空飛ぶ車」に、下級生が大盛り上がり

この狙いは大当たり。放課後や休み時間になると、たくさんの子どもたちが探究に没頭しています。ある6年生は「くるまを作ろう」という工作実験の授業をきっかけに「空飛ぶ車を作りたい」と思い立ち、浮力を計算したりボディを軽量化したり、失敗を繰り返しながら何週間も理科のへやに通い詰めて自作し続けました。その間は下級生たちもその様子を見守り、応援し続けていたようで、ほんの一瞬でしたが、ふわりと車が浮き上がった瞬間は先生も下級生も含めて大盛り上がりだったそうです。

子どもたちが放課後に作った工作の数々

ほかにもたくさんある自由理科の成果の中に、「りか」と書かれた小さなビニール袋が目に入りました。これはなにかと尋ねたところ、「1、2年生の子たちがかんさつの森で採取した植物で色水作りをしたときのものですよ」と教えてくれました。小学校で理科という教科を学ぶのは3年生からなので(2年生までは「総合」という教科)、理科への憧れから自発的に実験したのだという、なんともかわいらしい理由です。そんな憧れを抱いたのも、理科のへやで上級生の様子を見ていたからでしょう。

1、2年生たちも理科を楽しんでいます

理科のへやの前の廊下の「校内科学博物館」は、取材時は太陽系を表現した展示でしたが、太陽系の惑星だけでなく惑星間塵まで浮かんでいるこだわりよう。「ここまで再現していることは大きな博物館でもなかなかないですよ」と、先生たちも自信たっぷり、推しポイントの一つでした。

校内科学博物館では工夫をこらした展示が楽しめます

こうして見ていると放課後や休み時間だけにぎわっているように思えますが、もちろん日々の理科の授業で使われています。そもそも各教室で理科の授業をすることはほとんどないというので「座学の授業でもここでするのですか?」と聞くと、古野博先生からは、「ここならば授業中に思い立って調べたいことがあっても、本や実験器具が揃っていますし、かんさつの森もありますからね」との答え。さらにこう付け足してくれました。
「成城学園初等学校の理科は“体験を通して探究心を養うこと”を重視しているので、座学だけの授業はほとんどないんですよ。どんな授業でも必ず実験や観察があるので、教室ではやりませんね。実験を行う数はかなり多いと思います」

かんさつの森はすぐ目の前。理科のへやからそのまま行けます

理科教育への情熱あふれる仲良しチーム

成城学園初等学校は、担任が全教科を受け持つのではなく各教科の専門の先生が授業を担当するスタイルで、理科研究部には4人の先生と理科助手の笹井伸子さんがいます。しかし一方で、教科の枠組みに閉じていない、オープンなところも大きな特徴。廊下の校内科学博物館に展示されている惑星模型を美術の先生に作ってもらったのもそうですし、驚いたことに、希望すればほかの教科を担当していた先生が理科研究部に入ることもできるのだとか。1年単位で異動できるので、実際に他教科から理科研究部へやってくる先生もいるのだそうです。

理科研究部の先生方の話を聞いていると、心から楽しそうなので、仲間に入りたくなる気持ちもわかります。子どもたちに対して「自分の中の疑問を探究してほしい」「自然への広く深い興味を持ってほしい」という熱意から理科という教科に向き合っている先生たち自身、科学と自然が大好きなことがあふれ出しているのですから。

取材中、何度も「僕たちは仲良しなんで!」と楽しそうに言っていた先生たちが、話し合いを重ねて作り上げたのがこの理科のへやです。細部に至るまで理科教育への情熱が詰まった部屋で学べる子どもたちがなんだかうらやましくなりました。

成城学園初等学校 理科研究部の先生たち

文=sful取材チーム 写真=佐藤克秋
本記事の無断転載・複写を禁じます。

『sful』最新号はこちら


この記事が参加している募集

理科がすき

探究学習がすき