ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはダース・ベイダーの夢を見るか
たとえ『ゼロの使い魔』のことをよく知らなくても、『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』の名前を知らない人はいないだろう。桃色の長髪が美しい、今も尚色あせない魅力を持った元祖ツンデレヒロインだ。
『ダースベイダー』はどうだろうか。こちらは、かの有名なテーマと共に、銀河中を恐怖に陥れた偉大なる悪のカリスマだ。
では、もしルイズの召喚によって呼び出されたのが、あの悪のカリスマだったとしたら・・・?
というクロスオーバー。ちょっと昔の2chではルイズに様々な作品のキャラクターを召喚させる二次創作が流行っていたのだ。
久しぶりに読んだが、これがもう暴力的なほどに面白く、しばらくぶりに「えっ!!もう朝の四時!!??」を味わうことになった。
とにかくダースベイダーのキャラの仕上がりがめちゃくちゃ最高。
かつての彼は、正義に燃える心と並外れた戦いの才能を持っていたが未熟故に暗黒面に堕ちてしまい、エピソード3以降は最強最悪の悪役ダース・ベイダーとして宇宙を支配した。
この物語は、彼がアナキンからダースベイダーへ生まれ変わるシーン、手術台から立ち上がるあの瞬間から始まる。つまり、まだ悪役としてはデビューしていない状態の彼が呼び出されるのだ。
この設定がマジで神采配で(だってアナキンが主人公じゃ面白みがないし、完全体のダースベイダーは初見でルイズの首を折っちゃうでしょ)、暗黒卿として冷酷非情でありつつもまだ心のどこかでは青臭さを捨てきれていないダースベイダーということになる。
平民を蔑む貴族の横暴が、貧しい環境で育った彼の心に静かに怒りを灯したり、亡き祖父が見たであろう街の風景を少女に見せるために、めちゃくちゃ無理をする暗黒卿(フォースで彼女を乗せた飛行機を飛ばせた)みたいな名シーンが生まれる。
気に入らない人はすぐにフォースで首を絞めるし、基本会話する気ないし、国のピンチとか彼には知ったこっちゃないし、とにかくやりたい放題。しかし、本当にヤバい時には必ず駆け付け、小さなマスターのために真紅のライトセーバーを振るう姿があまりにもかっこよく、脳内麻薬がドバドバ出る。
何が凄いって私はスターウォーズは1~3を見たくらいしか知らんし、何ならゼロの使い魔に関してはマジで何も知らん。ルイズも正直よく知らんかった(ごめんなさい!石を投げないでください!)そんな私でも痺れるくらい面白いんだからすごい。
文章もキレキレで、ここぞというときの描写がめちゃくちゃにかっこよく
>ルイズはおそるおそる目を開けた。
>ゴーレムの足は、ルイズの頭上四、五メイルの所で止まっていた。
>そしてルイズは見た。
>その真下で、彼女の使い魔が両手を上に掲げ、のしかかってくる巨大な重量に不可視の力で抗しているのを。
こんなのを魅せられるたびに「べ、ベイダー卿~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」と脳が気持ち良くなる。こんなかっこいい文章書けたらきっと楽しいだろうな。
初めて出会ってから、尚私の心にずっと居座り続けた小説。
馬の座り心地が悪くて腰を痛める姿や少女の村を救うためハリアーで一人飛び立つ姿が何故か10年間も脳に焼き付いており、折に触れて思い出しては「死ぬまでにもう一回読まないとな~」をズルズルやっていたが、よく考えたら死ぬのは明日かもしれんしということで急いで読み返した次第。
こんなのが落ちてるんだからインターネットって面白いよね。
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