15年目のブラームスのヴァイオリン協奏曲 - WoO6
ベルリン・コンツェルトハウスでブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾く前夜、クロンベルクからの電車移動中。
ふと長めの文章を書きたい気分になったので、2年ぶりにnoteの記事を書いてみています。
走り書きなのでぜひ流し読みしてくださいませ。
乱筆をお許しください。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲。ニ長調、作品77。1878年に作曲された40分の大曲。
この作品を初めて聴いたのが厳密にいつだったか、CDだったかテレビ放送だったかコンサートだったか、記憶があやふやではありますが、2008年、14歳の時、この作品をどうしても弾きたかったことはよく覚えています。
当時、2006年に出版されたばかりだったBärenreiter版の抹茶色の楽譜。
早速たくさんの先生のレッスンを受け、様々な書き込みで溢れているこの楽譜は、リフレッシュ/リセットするためにiPadでフルスコアを見ながら練習している今でも良い思い出に、そして多くの教えが血となり肉となっていることは疑いようがありません。
弾けば弾くほど味わいが深くなる、しかし弾いても弾いても辿り着けない崇高さのあるこの曲の魅力に、どんどんとはまっていったわけです。
兎にも角にも、当時の先生方には無謀だと言われながらもこのブラームスの協奏曲をコンクールのファイナルの課題曲から選択し、セントラル愛知交響楽団の皆様と共演させていただいたのが、私のプロ・オーケストラとの人生初共演でもあり、ブラームスのヴァイオリン協奏曲との歩みの第一歩でもあったわけです。
2009年4月、名古屋の宗次ホールでの第2回宗次エンジェルヴァイオリンコンクールでのことでした。
14歳の少年にブラームスの協奏曲を弾くことが無謀であるのは、作品の内容の深さを考えれば明白なのですが、しかし止めないでくださった当時の師匠たちには感謝が絶えません。
コンクールの結果はファイナルの中の最下位、第5位。
もちろん悔しく、落ち込みましたが、この曲をオーケストラと弾けたことの喜びの方が強かったことを覚えています。
それから5年が経ち、地元・千葉県の千葉県文化振興財団が主催する毎年恒例の演奏会、”若い芽のαコンサート”にお声かけいただき、ニューフィル千葉(現:千葉交響楽団)の皆様とヴァイオリン協奏曲を演奏できる機会がまわってきました。
2014年6月、翌月にライプツィヒのバッハ国際コンクールへ挑戦する直前のことでした。
確か希望曲をいくつか提出したのだと思うのですが、もちろん第一希望はブラームスを。
20歳になりたての時。高校の試験曲でもブラームスの協奏曲は弾きましたし、ヴァイオリンソナタの第3番や弦楽四重奏曲第1番は当時組んでいたカルテットでも弾いていたはず。
楽譜収集/比較オタクだった高校生の頃にブラームスの協奏曲の自筆譜にも出会い、ボツになったソロのパッセージやオーケストラパートの変更、ヨアヒムによる助言で変更された部分などをわくわくしながら楽譜に齧り付いていたわけです。
しかし、ブラームスの作品のもつ雄大さと雄弁さにはまだ飲み込まれるばかり。
この千葉響さんとのブラームスの共演が更なるきっかけとなり、それからブラームスの作品にもっと触れて、彼の音楽言語を少しでも理解できるように、彼の表現の方法に少しでも近づけるように、と考えるようになりました。
ブラームスは室内楽作品を多く残しており、ヴァイオリンが参加できる作品も数多くあり、これはヴァイオリン弾きでよかったと思える事の一つでもあります。
ヴァイオリンとピアノのためのソナタが3曲、クラリネットのちにヴィオラのちにヴァイオリンとピアノのためのソナタが2曲。
ピアノ三重奏曲が3曲に、弦楽四重奏曲が3曲、ピアノ四重奏曲も3曲、ピアノ五重奏曲が1曲。
弦楽五重奏曲と弦楽六重奏曲がそれぞれ2曲ずつ。
そして管楽器を交えたホルン三重奏曲とクラリネット五重奏曲も。
これらの中で、現時点では弦楽五重奏曲第1番とピアノ五重奏曲、そしてホルン三重奏曲を除いた作品全てを、この10年の間に少なくとも一度は演奏会でも弾きました。
いや、何度でも弾きたい。
ああ、もうBerlin SüdKreuzに着いてしまいそう。急がねば。
話を戻して、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。
2016年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールのファイナルでもブラームスを選んだこともあり、その後更に6回ほど、ポーランド国内で各地のオーケストラと、そしてロシア・サンクトペテルブルクでも、この曲を共演することが叶ったことも、非常に貴重な経験となりました。
ポーランド、そういえばしばらく行けていないな。
温かくクラシック音楽への愛に溢れた方々がたくさんいらっしゃる素敵な国です。
…この曲への想いのまだ1割も綴れていない気がしますが、しかし遍歴は少しだけお伝えできたでしょうか。
クロンベルク・アカデミーのマスタークラスでのMo.クリストフ・エッシェンバッハとの2019年の出会いがきっかけとなり、幸運も重なり、この度2023年5月19, 20, 21日の3日間、ベルリン・コンツェルトハウスの大ホールにて、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の定期演奏会にて、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏いたします。
この曲を日本でも演奏できる日を心待ちに、明日からの3日間を精一杯楽しみ、全力で駆け抜けたいと思います!
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