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anarchism - 小さな紙 - 《小説》

「anarchism」 - 小さな紙 -

僕は1枚の
小さな紙を見ていた 


其処には

丸っこい数字で

電話番号が書かれていた

僕はあの日の事を思い出していた


誠君 

もうひとつプレゼントがあるんだよ

レコードレンタルの

精算を済ませた僕に

玲子さんから小さな紙を渡された


何?この紙 

其処には数字が書かれていた


誠君の未来のチケット 

そう言って玲子さんは
上目遣いで僕の方を見つめていた

玲子さんの瞳の中に僕が

はっきりと映っているのが見えた


えっ 何故? 

僕は唐突にそう答えてしまった

玲子さんは 鈍感 そう言って

このチケット

使うか使わないかは誠君次第だよ

そう付け足して 

左手の人差し指を

肩にかかった髪に巻き付ける仕草を
繰り返していた


その指先の動きと

鎖骨から胸元にかけての

微妙な香りに似た
ベールの様なものに

女を感じていた 

僕は少し恥ずかしくなって


有難う御座います 

そう丁寧な言葉で
答えている自分に気がついた


彼女は美しかった 

誰よりも美しかった

僕はその小さな紙を見つめている

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