見出し画像

天国の門 5. Heaven’s gate 《小説》

5 . Heaven’s gate

ジョー達12人は6台のハマーに乗り街の西へ西へと向い
目的の場所に辿り着いた

高いコンクリートの壁
分厚い鋼鉄の頑丈な大きな扉
正に隔離された要塞がそこにあった

高い壁に梯子を掛けジョーとポールが中に入った
やはり誰も居ない 完全に廃墟と化した刑務所だ

正面門の扉は内側から鍵と鎖で施錠されていた
ハンマーで鍵をぶち壊しタガネで鎖を切って
鋼鉄の扉を開けた

扉を開けると目の前に広い敷地、広場があり
その奥にまた鉄の金網の柵がある
看守の見張り部屋の様な建屋の奥に
囚人を収容する為の建物があった

ジョー達12人は刑務所の中に入り
また正面門の扉を閉めた
さあ 寝ぐらを作ろう!
ポールが真っ先に建物の中に入って行った

クソ野郎、あっちもこっちも鍵がかけられていてドアが開かない
イライラしたポールは
大きなハンマーを肩に担いで建物に近づく

ポール!ポール!
欲しいのはコレでしょ
美紀が沢山の鍵の付いた鉄の輪っかを見せびらかす

美紀 でかした!何処にあった?
ポールは聞く
看守の部屋の壁にかけてあったよ
普通にあるなら看守部屋だと思うよ
頭使ったらポール
そう美紀はポールをからかってみせた          

うるせえ 早くよこせ鍵!
そんな美紀とポールのやり取りを見てた

それは秩序の失われた
地獄の様な街に
穏やかな気持ちと微かな希望 そして安心を感じさせるものだった

皆んなそれぞれ好きな場所に
分かれて自分の部屋を作った
小さな子どもが始めて親から
子ども部屋を与えられた様に
ベッドに毛布や布団を敷いて
小さなガラスの瓶に野に咲く花を飾ったり
想い想いの部屋を作った

ジョーとポールはベースから持ち出した
簡易的な自家発電装置を設置して繋ぎ込んだ
よし コレで暫くは電気も使えるよ
やったね!

僕等は広場に集まって
小さな焚き木を始めた
フライパンでベーコンを焼いてパンと珈琲と
皆んなで一緒に食べながら未来を語り合った

美紀は明日は朝から林檎の木を植えるからね
この広場に いい 皆んな手伝ってよ          
そう言って地面に寝転がる 
空を見上げて瞳を閉じた

もう眠たくなったんだね美紀
ジョーは美紀を抱きかかえて
美紀の部屋のベッドへ運んだ
美紀は静かに寝息をたてていた

ジョーは美紀の右手の甲にある
小さなハート形のアザにキスをした

ジョーの心の中に
淡い恋心が芽生え始めていた
純粋で綺麗な忘れかけていた
気持ちを思い出していた

部屋を出ると太陽が沈み始めていて
焚き木の炎のオレンジ色と空のオレンジ色が
惹かれ合い一つになって
オレンジ一色の世界で包まれていた

ジョーは刑務所の鋼鉄製の
大きくて頑丈な灰色の扉に赤いスプレーで
Heaven’s gate と書き込んだ

それは人口僅か12人の世界で一番小さな
新しい国の誕生した瞬間だった

Photo : Ferr Pic

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?