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#12.2 「DXの本質」 企業はカメレオンのように変われるか? DXの企業変革:ダイナミック・ケイパビリティ

カメレオンのように変化する能力を求められています。
企業におけるこの能力が、「ダイナミック・ケイパビリティ」です。前回の記事でも少し取り上げていますが、ダイナミック・ケイパビリティとは以下のように表現できます。

「急速に変化するビジネス環境の中で、変化に対応するために内外の様々なリソースを組み合わせ変化し続ける、企業固有の能力・ルーティン」


これが、ダイナミック・ケイパビリティの概略です。もっと簡単に言うと、「変化対応的な自己変革能力」です。では、このダイナミック・ケイパビリティは、どのように企業に育まれるのでしょうか?

ダイナミック・ケイパビリティについては、バークレー大学のデビッド・ティース教授が第一人者だと思います。まだまだ、経営学の理論としては学術的には発展途上であると考えられます。しかし、この混沌としたビジネス環境において「ダイナミック・ケイパビリティ」の考え方は有用だと考えられます。以下に、ダイナミック・ケイパビリティの概念を図で示したものをあげます。

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環境の変化を素早く「感知」して、企業としての「Why?」を深く考え「知の深化」、環境の変化に応じて「知の探索」を行います。
知の深化、知の探索をどのゾーンにどのくらいの資産を配分しつつ、経営を管理していきます。

ダイナミック・ケイパビリティにおける経営において保有すべき3つの能力カテゴリー。

①感知(センシング)
企業の経営陣が競争的状況を把握し、事業が直面する変化、機会や脅威を感知する能力。

②捕捉(シージング)
企業の経営陣が、企画を捕捉し、脅威をかわすように、必要に応じて既存の事業や資源や知識を大胆に再構成し、再配置し、再利用する能力。

③変容(トランスフォーミング)
持続的可能な競争優位を維持するために、企業の経営陣がオーケストラの指揮者のように企業内外の資産や知識をオーケストレーションし、ビジネス・エコシステムを形成する能力。


ダイナミック・ケイパビリティの提唱者であるデビット・ティース氏によると、企業のケイパビリティ(能力)は、2つの能力があるとしています。

1つは、「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」
もう一つが、「ダイナミック・ケイパビリティ(変化対応的な自己変革能力)」です。

ビジネス環境が安定しているとき、企業は利益最大化を目指して、より効率的に活動しようとします。この時、企業の資産や資源をより効率的に扱う企業の通常能力が「オーディナリー・ケイパビリティ」です。

しかし、長期的には、企業をめぐるビジネス環境は大きく変化します
特に、現代のように不確実性が高く、世界中のどこかで常に変化が起こっているような不安定な状況では、企業が変化に対して鈍感でいると、本来得られるはずの利益を失いかねません。こうした変化の激しい状況で求められる能力が、ティースが提唱する能力「ダイナミック・ケイパビリティ」です。

もう一つティースが、このダイナミックケイパビリティで唱えている原理が、ビジネスエコシステムを生み出す「共特化の原理」です。既存の資産や資源や技術を再構成・再利用・再構築するために、デビット・ティースは、「共特化の原理」を主張しているのです。
この「共特化の原理」とは、個別に利用しても大きな価値を生み出さない特殊な資源や資産や知識や技術を結合させて生まれる相互補完的な効果のことであり、それゆえその原理は「補完性の原理」と言ってもいいでしょう。
いわゆる、オープンイノベーション的な考え方であります。

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「ダイナミック・ケイパビリティ」や、「両利きの経営」単体で考えると、様々なジレンマが生じます。ここで、前述したように、「ゾーンマネジメント」をマネジメントの核に据えて経営を管理するととてもしっくりきます。

経営学としての理論だけではなく、実務として活用していくには、理論と実現のフレームワークの融合が必要であると考えます。

ここで、コロナ禍におけるダイナミック・ケイパビリティを考えてみます。

新型コロナウイルスのパンデミックは、企業の様々な影響を与えています。社会や市場、顧客を大きく変えました。この危機感を素早く感知し、捕捉し、変革することであるのです。

このダイナミック・ケイパビリティが優れている企業は即座にアクションを起こしていることでしょう。
単なるレジリエンスとして、V字、U字、L字の回復ではなく、この危機を機会(チャンス)として、アフターコロナ市場を狙って変革し、Jカーブを描くようなレジリエンスの構想が必要です。
そこには、企業として「Why」がしっかり根付き、アジャイルな組織にが実現されているのではないでしょうか。

「感知」:Sense Of Urgency
単に、危機感を煽るのではなく、企業の存在意義を再考し、Jカーブを描くような未来を示す。

「捕捉」:3つの視(視野、視点、視座)
危機を機会として捉え、その機会を実現するイノベーションを創造する。そのためには、現状や過去の延長で物事を捉えるのではなく、未来を見据え、視点、視野、視座をコントロールしながら改革のイネーブラーを発見する。

「変革」:組織、事業、人、技術等とスケールの場の発見
改革を実現するための、資源・資産を分配する、自社内だけでは実現できないものについては、外部の資産も活用し再構築する(共特化に原理、オープンイノベーション等)

では、そのDXにおけるダイナミックケイパビリティを実現する組織とはどのようなものか、、、。
次回、「DXを実現する組織」について考えてみたいと思います。




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