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魔除けの御守のつくりかた

 私たちは日常の暮らしの中で、太陽は頻繁に見ています。

 陽の傾きでおよその時刻の見当をつけたり、陽の長短や高さで季節を知ります。それは昔も今も変わらないと思います。それでは月はどうでしょう。

 現代人は昔の人に比べて一年中月を見ることはなくなりました。気にする必要がなくなったからです。太陰暦を使っているころは、月を見ることは毎日の生活に欠かせないものでした。月はカレンダーそのものだったからです。

 月は、三日月から夜毎右側が明るく丸みを帯びてきて七日で半月となり、さらに同じ日数が経つと満月になります。その後、今度は反対側が欠け始めて、右側の欠けた半月となります。更に月は痩せ続けて、ついには姿を消し真っ暗になります。

 真っ暗から満月まで、満月から真っ暗までおよそ15日です。目に見えない新月から、右半分の半月を経て満月へ。さらに左半分の半月へと7日ごとに変わり行く神秘な姿に昔の人は神聖な感動を受けたことでしょう。月は15日で満ちる。14では足りず、16では欠け始める。ここから15に吉数信仰が生まれました。月の満ち欠け、これは現代の今でも変わりません。

 数への思い入れは、古くからの習慣としてありました。合計が15になる吉数の七・五・三の数を私たちは今でもよく使います。陰陽の奇数が陽、偶数が陰からきてるのでしょうが、奇数を尊ぶ習慣は今でもあります。 

 以前「お守りを造る」で、私は真榊に付いている装飾をお守りに使う話をしました。榊の上枝に使われている玉を工夫したものです。真榊の玉は、曲玉と管玉と丸玉です。この玉の組み合わせに私はこの吉数を使います。

 造るのは「魔よけのお守り」と「福徳のお守り」ですが、魔よけは15玉にします。ただし「満つれば欠くる」完全まで行ってしまうと次は衰退が始まります。そこで、わざとその中の石に不完全なものを混ぜておきます。実際に数を数えてみると15ありますが、どこかに一歩手前の不完全さを残すこの方法は、なんにでも応用の効く「魔よけ」の方法なのです。

 頂点を極めたり、ピークを迎えた者にはおごりが忍び寄ります。「魔」とは人を惑わすもの。「魔がさす」とはふと悪い心を起こすことです。頂点とかピークとかが一番危ういときという考え方は日本的な伝統です。ですから、ちょっとした所にわざとその戒めを造っておくのです。形あるものは壊れる。完成の一歩手前とか、未完成にしておくことで魔を避ける、魔よけとしたわけです。

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