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大人は教育責任を放棄してはいけない -埼玉県立高校の共学化をめぐって

NHKによると、男子校、女子校がある埼玉県の県立高校について、去年、共学化を求める勧告が(埼玉県男女共同参画苦情処理委員から)出たことを受け、埼玉県教育委員会は4月17日から生徒や保護者を対象にした大規模なアンケート調査を始めたそうだ。

肝(キモ)は、このアンケート調査が、共学化の実施をめぐる政策決定において、どのように用いられるかである。
それをあらかじめ定めていない点が、「大人のずるさ」である。

アンケート調査で共学賛成派が過半数をとれば、必ず教育委員会は男女別学を全面廃止するのか。
それとも、あくまでも「参考意見」として考慮に入れるだけのことなのか。
別言すれば、たとえ共学賛成派が過半数をとったとしても、教育委員会が熟考した上で、男女別学を維持するという「出口」はアリなのか。
それについてあらかじめ言及することなく、アンケート調査をすることの意味はどこにあるのか。

さらに原理的に言えば、そもそも教育においてはマーケティングの方法を用いるべきではない。
生徒も保護者も「お客様」ではない。
学校では、世の大人が教えなければならないと信じることを教えるだけだ。
なぜならばそれが大人の責任だからだ。
たとえ過半数を超える「お客様」が嫌だと言っても、大人が教えなければと信じれば、教えるべきなのだ。

しかしながら埼玉県教育委員会はその責任からの逃避の「模範」を、いま子供たちのまえで見せている。
最終的に男女別学維持、別学廃止のどちらに決定したとしても、必ず反対派はいる。
埼玉県教育委員会はその反対派からの不平不満に対して、「いえいえ、あれはアンケート調査を考慮に入れたからです」と言うための、「逃げ道」を用意しているのにすぎない。
それは埼玉県教育委員会が臆病だからだ。
その真実を隠蔽して、自分は「ステークホルダーの発言に耳を傾ける、ものわかりのよい大人なんですよ」と言う。
欺瞞だ。偽善だ。
子供たちよ、騙されてはいけない。

また付言すれば、最近問題視されている「国民の分断」をつくるのは、まさにこのようなアンケート調査ではないのか。埼玉県教育委員会は自信を持って、自らの責任で、男女別学維持か廃止か、どちらかに決めればよい。そして決めた後は、反対派への説明を十二分に尽くせば良い。それだけだ。

共学か男女別学か、決めるのは生徒ではない。
生徒であってはならない。
大人は、生徒に責任をおしつけてはならない。
例えば、20年後、生徒が、仕事場であるいはプライベートで、異性とのコミュニケーションがうまくいかなくて落ち込んだとき、「自業自得さ。自分がアンケート調査でアチラに票を入れたのだから」と、自分を責めるような状況を発生させてはいけないのだ。

※「共学か、別学か」について、僕自身の意見はここでは書かない。
ただひとつだけ、別学維持派に質問がある。
「黒人学校」と「白人学校」との別学に、あなたは賛成ですか。

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