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記録:エールフランスで観た映画

この夏、東京=パリ往復のエールフランスで観た映画について簡単に記しておく。

・『ジョンウィック・コンセクエンス』

監督がどれほどサクレクール寺院の階段が嫌いなのかがよく分かる映画だった。
それにしてもジョンウィックも4部作目。
さすがに疲れましたね。

・『私がやりました』

フランス映画界の優等生フランソワ・オゾン監督のフェミニズム讃歌。
イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエという主役級の名優たちを、惜しげもなく脇役に使う。
1930年代のパリを再現すべく、衣装・大道具・小道具など、すべてにお金をかけたであろうことがよく分かる作品。
犯していない殺人事件を、自分がやりましたと自供して、「悲劇のヒロイン」として有名になる女優の話。
ほどよいブラックユーモアとハッピーエンド。
ブルジョワのおじいさん、おばあさんのための映画。

・『アリバイ・ドット・コム2』

フィリップ・ラショーの最新作。下ネタだって笑えればいいんだみたいな、ドタバタ喜劇。
あいかわらずの、ラショーらしい、スピード感あふれる展開が楽しい。
こういう、ある意味「お下品」な映画に、ナタリー・バイやディディエ・ブールドンがさりげなく出ているところがまた良い。
学校の道徳の先生以外のすべてのひとに、オススメできる。
たまには、バカな映画を観て、バカになって、日頃のストレスを解消しよう。

・La Vie pour de Vrai

「あいかわらず」が良いということもある。
チャップリン、フランク・キャプラ、ウディ・アレンも、みんな、ある種のスタイルを確立して、それを繰り返している。永遠のワンパターンだ。それが何故いけないの?
まさにこのLa Vie pour de Vraiも、あいかわらずのダニー・ブーンらしい映画である。
ナイーブな主人公が都会の人々に騙されながらも、最後は、人々のすさんだ心を癒す。
共演のシャルロット・ゲーンズブール(52歳)が綺麗。

・Les petites victoires

どこにでもありそうな、フランスの小さな村の女村長さん(実際、フランスの村長はしばしば女性である)。彼女はこれまたこの村の、小さな小学校の、たったひとりの先生でもある。
過疎化と少子高齢化のなか、パン屋の再建、学校の維持と、課題は小さいかもしれないけど、いっぱいだ。
そんな彼女の奮闘ぶりを、ユーモアと優しさにつつんで描いた佳作。
こういう静かなコメディも良いものだなあと、僕は思うのです。
主人公の村長さんは女だけれども、女をウリにしない。ふつうに恋をして、ふつうに傷つく。
だから共感できる。「がんばって」と、つい声をかけたくなってしまう。

・『ウィ・シェフ!』

これも女性が主人公。
原題はLa brigade(旅団)だが、今回ばかりは邦題のほうが良いと思う。
主人公の女性料理長(シェフ)は人づきあいが苦手。一流料理店を辞めて、移民収容施設で、移民の子供たちに、給食の作り方を教えはじめる。
大衆が興味を抱きそうなグルメの世界と、移民という社会問題を掛け合わせて、上質な作品に仕上がった。
主人公の「わかりましたか?」の質問に、子供たちが大きな声で「ウィ・シェフ!」と言うのが、実に良い。

・Pour l’honneur

主人公は、小さな村のラグビー・チームの監督だ。今年こそ、隣村に勝つのだと息巻いている。
そこになんと移民が7人やってきた。
監督は移民をラグビーの選手として起用し、チームを強化しようとする。
小さなスポーツ・チームの感動物語は『がんばれベアーズ』以来、「ありがち」ではあるが、本作はそこに移民問題を組み込んで今日性を持たせた。
主題は友愛であり連帯だ。それを演出するために「チーム」が大事になる。
なによりも移民ひとりひとりにちゃんと見せ場を与えて、「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」という「チーム・プレー」を表象した点が良かった。
例えばシリアからの移民は女医なのだが、チーム専属の保健士になる。彼女が選手らのコレステロール値の高さを嘆いて、健康食を提供したシーンは笑えた。
あるいはアフリカから来た男は、村の小学校の女先生に恋をする。そして彼は、彼女が女性ラグビー・チームの選手として活躍する姿を見て、ラグビーに興味を持つ。
笑って泣いて笑える佳作であった。

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