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「長くつ下のピッピ」が、30年ぶりに読んでも、すごかった件【読書の記録】

息子が借りてきたのか、なぜだか家に「長くつ下のピッピ」があるのを見つけた。

子どもの頃、私もたしかピッピのシリーズを何冊か読んだっけ。

でも話の内容は全く覚えていなかった。

ただ、だぶついた長いくつ下と、ブカブカの靴と、三編みの記憶がかすかにあるだけで、スカッとしたような気持ちの残像だけが残っている。

でも表紙を見たら不思議ととても懐かしい気持ちになり、思わず手にとってみた。



ピッピは9歳の女の子。船乗りの父と一緒に世界中を旅してきたが、父親が海に流され亡くなってしまい孤児になる。そして、父がピッピに残した”ごたごた荘”に1匹のお猿と馬と一緒に1人で住むことになる。

普通に考えたらかなり不幸な境遇なわけだけど、子どもらしい想像力の力で、人生を彩り豊かに生きている。

その物語のおもしろさに、一気に読んでしまった。


話を読むとわかるのだけどピッピの生命力がすごい。実際、大人顔負けの力もある。おまけに、父親から譲りうけた財力もある。

(この財力があるという設定がとても重要で、このおかげで、ピッピへの憐れみの気持ちに囚われることなく、フラットな気持ちで物語を楽しむ事ができるように思う。)

そして、ピッピにはいわゆる世間一般の常識もないし、大人の世界で良しとされている価値観も全く身についていない。字も満足に書けない。

学校にも行ってみたけど、全く馴染めず一日でやめてしまう。


それでも、充分に人生を楽しく面白く、過ごしている。

隣の家に住んでいる、気立てがよくしつけのいいトミーとアンニカという男女の兄妹と仲良くなるのだけど、その対比が面白い。

トミーとアンニカは、ピッピと生き生きとした刺激的な時間を過ごすうちに、すっかりピッピの虜になっていく。



大人になってから読んでみると、ピッピは9歳の女の子という設定にはなっているけど、一般社会に気づかれないように紛れ込んだ、親しみ深い、全能のヒーローか妖精のような感じがする。

ピッピは学校や孤児院に行くことを薦められるのだけど、その必要はない!とはねのける破天荒ぶりを見ていると、私が信じてきたことの足元がぐらつく。

社会の当たり前の価値観を、本当にそれって正しいの?と問われているような気さえして、すごく面白い。


子どもの視点で読めば、本当はやりたくても勇気がでない冒険や遊びをピッピが代わりにやってくれるような、そんな楽しい読み物だと思う。

それに、ピッピは優しくてユーモラス。

泥棒や、いじめっこや威張った大人や、あらゆる鼻持ちならないものたちを、やり込めてしまうのだから読んでいて純粋に楽しい。

私の中にスカッとした感情が残っていたのは、そのせいかもしれない。


私が読んだのは、9歳か10歳か、きっとそれくらいの頃だったと思う。

30年ほど経って再び読んでみたけれど、全く色褪せない魅力に心底すごいなと思った。

長い年月を経て、全く色褪せず読み続けられる本と人々の記憶から消え去ってしまう本の違いってなんだろう。

また、30年後に読み返したら、私はどんな感想を持つのだろう。


そんなことを考えさせてくれる本でした。







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