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「ようこそ皆さま。本日は皆様にサプライズプレゼントをご用意させていただきました。はい、ドン!爆弾でーす。このままでは十分後には、この爆弾が爆発してしまうでしょーう。」 ピエロの仮面をつけ、白いタキシードを着た男が、軽快に告げる。 皆状況を理解できていないのか、騒然とする会場。 五分が経過した。 会場が騒ぎ始める。男たちは声を張り上げながら犯人に詰め寄り、女たちは悲鳴を上げながら出口の扉を叩いた。 さらに二分経過した。 男たちは互いに怒鳴り合い、殴り合う。女たちは
亡くなった母の遺品を整理していたときの事である。金庫の一番下に不思議な写真が一枚があった。 いったいこの写真は何だろうか? 一つわかっている事がある。 写真はモノクロであり、縁は一部敗れている。とても古い時代の写真だろう。 二つ目に気づいた事がある。 大人の男女二人と子供が三人写っている。母の子供の頃の家族写真なのだろう。 母に似た顔の少女が満面の笑みを浮かべている。 三つ目にわかった事がある。 写真の右端に「〇〇小学校 入学式」と書かれた看板がある。母の小学
ちょっと変な人たちがいた。 真冬の夜、彼らは近所の公園で手を擦り合わせながら一列に並んでいる。 それを見て私は疑問に思った。 イベントでもやっているのだろうか? 彼らは、雑談しながら笑い合っている。 妻は、ドラマの撮影だろうと言った。 私たちは確かめることにした。 列に並ぶ男性に声をかける。 「すいません。列に並ばれてますけど、何かあるんですか?」 男性は私たちに気づくと、怒るように答えた。 「もう少し待ってりゃ分かるさ。あっ、来た!来たぞー。」 私たち
「最近、近所に強盗が入ったんですって。まだ捕まってないみたいだから、あなたも気をつけなさい。」 私は今走りながら、朝に母が私に言った言葉を思い出していた。 駅を通り過ぎたあたりから、私の後ろを追いかけてくる気配がする。 怖くてたまらない。周りには誰もいないからだ。 残業で夜遅くまで仕事が長引いてしまった。車一台も通っていない。 一体どうしたことだろう。 恐怖はさらに大きくなっていく。 理由は、携帯の電源が切れたからだ。こんな日に限って、朝から電話の音が鳴りっぱな
「何度言えば分かるんだ!他のやつならもっと仕事ができるぞ」 今日も上司に叱られる。こっちだって一生懸命やってるんだと心の中で悪態を吐きつつ、会社を出る。 肌寒い冬、真っ暗な駅ホームで自分の白い息をボーと眺める。 ブシューと大きな音をたてて、電車がやって来た。ライトがとても眩しく感じる。 「・・・俺、何やってんだろ?」 取り止めもない疑問を抱き、コートのポッケに手を突っ込みながら私は、電車に乗った。 帰宅ラッシュの時間だからか乗客は多い。つり革を手に持ち、電車に揺られ
「あなたの余命は1ヶ月です。」 無機質な空間で私は。突然死の宣告を受けた。ガンの末期らしい。もう手術では、完治できない。先生による今後の治療の説明を私は、どこか他人事のように聞いた。説明が終わり、混乱した状態で診察室を出ると、私は腰が砕けるように座り込んだ。しばらくすると実感が湧いたのか、思考ができるようになる。初めは、会社になんて言おうやら、家族になんて言おう考えていたが、これからの1ヶ月をどうしようと考えた時、私はどうしても母親の顔が見たいと思った。 確かに、障害がある。
目の前の電子掲示板に216の番号が表示されたら天国。 表示されなかったら地獄。 実はこういうことだ。 私は、人生で二度目の自動車免許筆記試験を受けている。一度目は全く勉強せず受け、落ちた。正直落ちることを全く想定していなかった私は、当時頭を真っ白にして帰りの電車に乗った。帰宅した後しばらくしてから、周りの友達に結果をどう伝えたものか、頭の中で必死に言い訳を考えた。試験に落ちた後は、友達に笑い話のようにいじられた。私は恥ずかしさを感じながら、顔を赤めた。その後私は、大学の勉強そ
私は泥付きのレタスを買うか、綺麗カットされたレタスを買うか迷っていた。 実はこういう事だ。 カットレタスの方が調理が楽だろうが、なぜか汚いレタスに惹かれた。 今日も学校で先生に「お前は本当に馬鹿だな」と怒られた。毎日朝から晩まで大学の図書館に篭り、頑張って勉強しても全く成績が上がらない。最近では、後輩からも馬鹿にされる始末だ。 「僕は何のために勉強しているのだろうか」帰り道を自転車を漕ぎながら、暗然とする。僕は体力的にも精神的にも疲れ切っていた。 家近くのスーパーに立ち寄っ
本当なら殺しの方法など教えたくはない。しかしそれはできない。 なぜなら、目の前の少女を私が助けたからだ。彼女の家族は、警察に殺された。彼女の父親が、ドラックの売人だったらしい。警察の強制捜査が自宅に及び、抵抗した両親と兄弟を殺した。彼女が帰宅した頃には、あたり一帯が血で染まった。床には、白いチョークで書かれた人型が四つ。彼女に捜査の手か及ぶ時、隣に住んでいた私が、彼女を保護した。殺し屋の私が人の命を救うとは、人生何があるか分からない物だ。数日後、私が食事をしていると少女は私の
本当なら綺麗な資料を作りたい。しかしそれはできない。 なぜなら、綺麗な資料を作るためのスキルも時間もないからだ。 時間は刻々と過ぎていく。私はどうすればいいんだ。 このままだと間に合わない。締め切りまであと1時間。私のデスクの上には、山のように積まれた資料と備え付けのパソコンがチカチカと光っている。だめだ、思考がまとまらない。私は一度部屋を出て、喫煙室に向かう。缶コーヒーを買い、タバコに火をつけた。最近、タバコの量が増えた気がする。 周囲が騒ぎ始めた。 「〇〇君、資料で
本当ならチョキを出したい。しかしそれはできない。 なぜなら、今の私にはお金がない。勝ったら、子供におもちゃを買ってあげると言ってしまった手前、逃げるわけにはいかない。相手は子供だ。1回目2回目とパーを出し続けている。目の前の子供はうーうー唸りながら、りんごのような頬を目一杯膨らませている。次もパーを出すであろう、頭では分かってる。しかし相手は子供だ。ここは大人の余裕を見せて、おもちゃを買ってあげるべきなのであろうか。今まで気にしていなかった周囲にいる親戚が聞き耳を立てている様