私の葛藤_03

本当なら殺しの方法など教えたくはない。しかしそれはできない。
なぜなら、目の前の少女を私が助けたからだ。彼女の家族は、警察に殺された。彼女の父親が、ドラックの売人だったらしい。警察の強制捜査が自宅に及び、抵抗した両親と兄弟を殺した。彼女が帰宅した頃には、あたり一帯が血で染まった。床には、白いチョークで書かれた人型が四つ。彼女に捜査の手か及ぶ時、隣に住んでいた私が、彼女を保護した。殺し屋の私が人の命を救うとは、人生何があるか分からない物だ。数日後、私が食事をしていると少女は私の目の前に立ち、覚悟を決めた目で私に言う。
「私に人の殺し方を教えて」
いつかはその様なことを言われる気がしていた。なので、私は前から用意していた言葉を返す。
「馬鹿なことを考えるのはやめろ。人を殺すと全てが変わる。取り返しがつかない。」
少女を紙を取り出し、何かを書いて私に渡す。私はその紙を手に取った。
時間は刻々と過ぎていく。私はどうすればいいんだ。
「読めないの?」
少女は問いかける。
「勉強はしているのだが、忙しくて・・・なんて書いた?」
私は惚けるように応えた。
「私も殺し屋になりたい」
私が殺し屋をしていることは、彼女に言ったことがないので驚いたが、私は惚ける様に再度応えた。
「殺し屋に?これを持っていけ。選別だ。」
私は、一丁の拳銃と弾丸を渡す。それを見つめる少女。
「俺は、独りで仕事をする。」
唇を噛み締める少女は、負けじと会話を続ける。
「シャーロックホームズは、ワトソンと仕事をしたわ。」
暫しの沈黙、正直どう返答したものか。
「私を困らせないでくれ。親切にしたし、命も助けただろう。」
私は声を振り絞る。
「助けたからには責任があるわ。好意で助けたんでしょ。今私を追い出したら、助けなかったと同じことになるわ。」
少女は私の目を見つめながら言う。私は、たまらず目線を泳がせた。少女は、畳みかけるように問いかける。
「追い出されたら、殺される。死にたくないわ。」
暫しの沈黙、私は少女の目を見つめ応えた。
「お前じゃ、殺し屋にはなれない。」
少女は瞬きをせず、唇を噛み締める。少女はいきなり銃を持ち、窓の外へ発砲し始めた。
周囲が騒ぎ始めた。
「何をする?」
私は慌てて止める。少女は振り返り、決意のこもった目で私を見つめ直した。
私は決めた。
彼女に人の殺し方を教えようと。

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