私の願望_01

「あなたの余命は1ヶ月です。」
無機質な空間で私は。突然死の宣告を受けた。ガンの末期らしい。もう手術では、完治できない。先生による今後の治療の説明を私は、どこか他人事のように聞いた。説明が終わり、混乱した状態で診察室を出ると、私は腰が砕けるように座り込んだ。しばらくすると実感が湧いたのか、思考ができるようになる。初めは、会社になんて言おうやら、家族になんて言おう考えていたが、これからの1ヶ月をどうしようと考えた時、私はどうしても母親の顔が見たいと思った。
確かに、障害がある。


一つ目は、母親の顔を知らないことだ。両親は私が産まれてすぐに離婚した。その後、私は母親の顔すら知らぬまま、父親に男で一つで育てられた。その母親が今どこにいるのかすらわからない。
二つ目は、私の体力面の問題だ。
三つ目は、私が生きていられる時間が1ヶ月しかないことだ。


しかし、私は決して、決して諦めない。
やるだけの事はやってみよう。
私は、妻と父親に相談した。二人は終始真剣な表情で私の願いを聞いていた。数日後、二人は私に一つの手紙を渡してきた。調査結果書と書かれた手紙には、私の母親の行方を調べた結果が記されたいた。
結果はこうだ。
父親と離婚後、私の母親は、再婚し上京、子供も二人おり、現在は認知症を患いながら東京の介護施設にいるらしい。私は、二人に感謝の言葉を伝え、東京へ向かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?