8四歩

将棋が大好きな男がいた。
彼には一緒に将棋をする友達が居なかった。
なぜなら、彼は将棋が強すぎて、誰も彼の相手をしたがらなかったからである。
彼は、もう既に10年近くは負けていない。
もっと強い相手と勝負がしたかった彼は、将棋ができる人造人間を作ることにした。

彼は、今まで時間を費やしてきた将棋の勉強をやめ、ひたすら医学書と工学書を読みふけった。
そしてついに彼は、人造人間をつくることに成功した。
男は、自分の造った人造人間に、得意げに話しかけた。

「おい人造人間、私と将棋をしようじゃないか」
「将棋トハナンデスカ」
「将棋を知らないのか」
「ワカリマセン」

仕方がないので、男は将棋のルールを人造人間に説明した。
しかし一向に、人造人間はルールを理解しなかった。
痺れを切らした男は、人造人間のスイッチを落とした。
そして、人造人間の脳ミソの容積を増やした。

「これで、ルールを理解できるくらいの知能にはなっただろう」

男は、期待と不安を胸に、人造人間に話しかけた。

「おい人造人間、私と将棋をしようじゃないか」
「将棋?イヤデス」
男は、人造人間の反抗的な態度に憤りを感じた。
「なんだと?なぜ嫌なんだ」
「ダッテ、将棋ッテ、センテヒッショウ ジャナイデスカ」

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