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ソ連を知る本3 ソ連デザイン

 今回はちょっと趣向を変え、ソ連デザインに関する本。

 ソ連のプロダクト・デザインを語るのは少々困難で、幾つかの前提を了解しておく必要がある。

 1つには、外国の製品のコピーが少なくないこと。コピーは兵器から日用品まで多岐にわたるが、もちろん、それらが外国製品のコピーであることを知る人は殆どいなかった。しかしコピーとはいえ、それらの製品とデザインがソ連市民の生活の一部であった事実は変わらない。

 もう1つは、コピーであれオリジナルであれ、その製品が「生産されていること」と、「充分に流通していること」には大きな違いがある。生産効率の悪さと貧弱な流通網はソ連経済の慢性的な病理であり、工業製品の生産量は常に低い水準にあった。例えば電子レンジは1970年代末に生産が始まったが、極めて高価であった上、流通量もごく僅かだった。もし創作でソ連の一般市民の台所を描写するとしたら、そこに電子レンジがあっては不自然なのである。

Pen Books ロシア・東欧デザイン

 2013年発行。ソ連を中心に、東欧のデザインを建築から自動車、日用品やポスターに至るまで、重要なところをピックアップして紹介。小さめだが良質な図版を多く収録し、不当に軽視されがちであったソ連・東欧のデザインに光を当てる良書。要所を抑えた解説も魅力的だ。

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032959477&Action_id=121&Sza_id=C0


ロシア建築案内 リシャット・ムラギルディン TOTO出版

 2002年発行。モスクワやサンクト・ペテルブルグをはじめ、主要28都市の建築を紹介。オールド・ロシアからポスト・ペレストロイカまでの時代と様式をカバーする労作で、外装・内装問わず写真も非常に多く掲載されている。写真の質はあまり良くないが、それを差し引いても、入門書として極めて優秀だ。建物の名称にロシア語併記があるのも嬉しい。

 残念ながら、現在のロシアにおいて歴史的・文化的に価値ある建築の保存状況は良好とは言い難く、特に地方都市からは悲惨な報告も多い。文化遺産と景観の保護が急務となっている。

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031056642&Action_id=121&Sza_id=C0

ソビエトデザイン 1950-1989 グラフィック社

 2019年発行。本書は、モスクワ・デザイン・ミュージアムとの共同プロジェクトとして、ロンドンに本社を置くグラフィック・アート系出版社のPhaidonが2018年に出版した「Designed in the USSR: 1950-1989」の訳書である。モスクワ・デザイン・ミュージアムの所蔵品から350点を選んで美しい図版で紹介している。

…いや、話はずれるけどサ、すげえいい本なんだけどサ、こういう本がロシアじゃなくて英国で出版されて、今のところ露語版も出ていないことに、俺は寂しさを感じるなあ。展覧会の時も図録は出ないしなあ。

 話戻って。本書は、ソ連時代の製品やそのパッケージ、ポスターや試作品を掲載した、ボリュームある傑作である。ジャンルも自動車から家電、楽器、玩具、日用品まで多岐にわたり、その殆ど(試作品を除く)は、かつてソ連市民の身近にあった品々である。ソ連に興味関心のある方にも、工業デザインに関心のある方にもお楽しみいただけるだろう。

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033954068&Action_id=121&Sza_id=C0


メイド・イン・ソビエト 20世紀ロシアの生活図鑑 
マリーナ・コレヴァ タチヤナ・イヴァシコヴァ他(著)
神長英輔 大野斉子(訳)

 2018年発行。こちらは、2012年のロシアで刊行された「メイド・イン・ソビエト ソ連時代のシンボルたち」の邦訳版である。製品やデザインにとどまらず、もっと広い範囲をカバーしている。ピオネールキャンプや団地など、生活に密着したシーンが回顧され、それぞれの製品に関連するエピソードも掘り下げられている。もともとロシアで刊行された本なので、ロシア人の読者層を意識した文章となっている。そのため、日本の読者層には今一つ伝わりにくい部分もあるだろう。しかし、市民目線でのソ連を回顧するには、良い文献だ。

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033736571&Action_id=121&Sza_id=GG


以下、過去記事から、ソ連のデザインに関係するものをピックアップ。読んで、シェアして頂けると嬉しいです。なぜなら!自己顕示欲が!強いから!


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