第114話 SEGE誕生秘話とMCW【夢夢日本二周歌ヒッチ旅 回顧小説】
その夜ぼくはまた新しい浜野さんの知り合いを紹介された。
当時の三重県の若者の間でかなり話題となっていたファッションブランド「MCW」。
そのブランドのプレスデザイナーの通称MCさんが浜野さん宅に来た。
MCWの服は東京や他県のお店にも置かれているそうだ。
MCさんがMCWが出ている雑誌などをいろいろ見せてくれたところ、キンキキッズやキャイーンなども着ていた。
MCWの服はペイントのデザインが特徴的だ。
インクのついた筆をピン!ピン!とすることでそのインクを飛ばす。
そのランダムについた色がそのままデザインになる。
浜辺で飲みながら、MCさんは実際にやって見せた。
「ほら、こうやるだけや。SEGEくんもやってみる?」
適当にやっているように見えるが、実際自分がやってみようと思うと勇気がいる。
枠がない、正解がないということは、全て自分の感性次第となるわけで、それは精神状態やセンスがもろにでる。
MCさんにはそれなりにイメージがあるようで、少し思案した後、勢いよくインクを飛ばす。
または何も考えていないのか、躊躇なく飛ばす。
どういう力加減ならどういうようにインクが飛ぶかという技術の問題もある。
もちろんMCさんは飛ばす練習を重ねたのだろう。
いや、MCさんはそんな練習はしていないのかもしれない。
そんなMCさんは第一線で活躍している人なのだが、ぼくに興味を持ってくれたようだった。
浜野さんと三人で浜辺で火を囲みながらぼくらは飲み、そしてぼくは歌を聴いてもらった。
MCさんはかなりぼくの歌を気に入ってくれたようだった。
ぼくはさっきまでGALLIVERで歌い、そこから戻ってきて飲み始めたものだから、だいぶ夜は遅くなっていた。
それなりに疲れてもいたが、それも忘れていた。
浜野さんもインクを飛ばすのを楽しんでいて、気づくと3人で服に色を付け合ったりしていた。
あっという間に朝だった。
そして明け方MCさんがこう言った。
「SEGEくんこれ見て。SEGEくんこの表記でいったらええやん。」
そこには「SEGE」と書かれていた。
「え?これなんて読むんですか?」
「〇〇やろ。」
「え?セゲって読めますけど・・・」
「〇〇って読むやろこれで。なあ。どっかの国っでは読むやろ。」
(いや、、、ぜったい読めないと思うなあ。ここ日本だし。)
そしてMCさんはぼくの譜面ファイルの拍子に「SEGE」をかきまくりはじめた。
(うーん。SEGEはさすがに今は使えないかなあ。読めな過ぎて親しみをもってもらえないと思うんだよなあ。まあ、話のネタにはなるな。)
ぼくは「SEGE」の表記を、もっと知名度があがったり、何か特別な使い道があったりすれば考えることにした。
そのようにして生まれた「SEGE」。
約20年の年月を経て、人生の折り返し地点である40歳を機に、ぼくはSEGEの表記を使いはじめた。
つづきはまた来週
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