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ニュース翻訳での注釈表記―私の場合

今日はニュース翻訳に出てくる(注)についてお話をしたいと思います。

ニュース翻訳は原文の「ニュース記事」をそのまま翻訳する関係上、訳出する文章も「ニュース記事」の体裁を取るケースがやはり多いと言えます。しかしやはり翻訳の際に、そのまま日本語への訳すことが困難な語句に遭遇した場合、皆さんはどのように処理していますか。

この場合の処理方法はクライアントによってそれぞれローカルルールがあるでしょうから、最優先でそのローカルルールに従うべきでしょう。

それを踏まえて、私はどのように処理しているのかはご紹介したいところなのですが、注釈についてはこれまで当noteの過去記事で何回か説明しています。

これらの記事では、数字を伴う造語については、「原文訳」+(注釈)といった、併記する形で読者に原文のニュアンスと意味を同時に知ってもらうやり方をご紹介しました。

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あとは中国国内の少数民族地域の地名、国内の政府機関の組織名や高官の肩書についてもどう処理したらいいか、悩ましい所ですよね。ただこれらも原文+(日本語訳)の形で併記するのが一番いい方法です。

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・・とここまでは併記する方法をご紹介してきましたが、いっそのことニュース記事の末尾に「(注)」として別途項目を設ける手もあります。この場合は一層視認が容易になりますね。

例を挙げてみましょうか。ニュース記事の体裁例としては次のようなものが考えられます。

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 (新華社7月29日)習近平国家主席は28日夜、求めに応じて米国のバイデン大統領と電話協議を行った。両国元首は中米関係および双方が関心を寄せる問題について率直な意思疎通と交流を行った。

 習近平主席は次のように指摘した。

・・・・・・・・・・・

 バイデン大統領は次のように述べた。

・・・・・・・・・・・・

 両国元首は、今回の電話協議は率直かつ深く行われたとの考えを示し、連絡を維持し、双方の作業チームに対してこのために引き続き意思疎通や協力を行うよう指示することで同意した。(←ここまでが原文訳)

(注)この報道は日本時間29日未明に発表された。同日の定時ニュース「新聞聯播」ではニュース項目2番目に報道された。

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どうでしょうか。(注)についてはもう少しブラッシュアップする余地がありますし、厳密に言えば翻訳文ではないのでニュース翻訳者がタッチすべきではない、とかクライアントや別の編集者が作るべきという意見もあるでしょう。

しかしこの場合、文全体について注釈をつけたほうがより読者に深い情報を与えることが可能になります。翻訳者の権限外になるという考えもあるので、ローカルルールに従い、クライアントさんや担当者さんと厳密に意思疎通を取り、相談して決める必要があります。

また、今回はニュース記事全体に対する注釈でしたが、背景まで説明する必要で注が冗長になる可能性がある専門語句が出てきた場合でも、語句の説明を(注)付きで文末に持ってくるというのは全然「あり」だと私は考えています。

文中の当該語句の後のカッコつきの注が長すぎたために見にくくなるならば本末転倒です。ならば文末に持ってくるというアイデアは、ニュース翻訳においては一考に値するでしょう。

繰り返しになりますが、ニュース翻訳における注を付ける上で大原則になるのは「見やすく」です。ニュース記事を作る上ではその原則を常に頭の中に入れておきましょう。




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