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あまりにも、夏

君がおすすめしていた漫画が
あまりにもつまらなくて読むのをやめた
ネットで拾ったあらすじと感想を読んで
君に読み終わったよと伝えた
君の薄っぺらい感想はわたしのこの程度の知識に補完されてしまうほどで
わたしは君と上手くやっていけないと思った
これから先も本当のおすすめを君に教えることなんてできないのだと思った

君みたいに目に入るもの全てを
面白くする才能がない
君の網膜を再現することができない
批評が溢れている世の中で
何も考えずにさらりと飲み込む合意に
意味なんて持たない方がいいのかもしれない
ただ、そんな面白さに欠ける自分と
向き合うことすらできなくて
自分を保証するみたいに感性を晒すことが
創造者より偉い訳がない
失望したし卑屈になりすぎた

夏だなあ
気温の上昇でくらくらして
思考が溶けていく
君との境界線が曖昧で退屈でややこしい
夏休みと錯覚した大人たちが
今でも何かに時間を溶かしているね
漫画とかアニメとか小説とか
デフォルメ化された夏を演じている
君も夏のままでいるから
おすすめの漫画を貸してくれたの?

感受性なんてない方がいい
どうせなら傷つきにくい方がいい
楽観性に沈むくらいなら一生不幸でいいと
思っていたが本当は
そうでもないということをここに告白する
人と関わることすら何かの救いを待つ行為に置き換えてしまったみたい
夢の世界でしか描けなかった言葉を
そっと仕舞うみたいにする
救いを単一化するほど愚かな思想が
あまりにも幸せに似ていて苦しい

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